ある幸せな家庭ができるまで

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閑話:熊さんの昔話

お目付け役

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「バートラム、最近のお前の行動は目に余る」

 そう言って盛大に溜息を吐いたのは俺のお目付け役のライオネスだ。親父からライオネスを付き人にと押し付けられたのは数か月前のこと、ここ最近は俺に引っ付いて回っていてうざったくて仕方がない。

「目に余る、とは?」
「来るもの拒まず誰彼構わず相手にするのはやめろと言っているんだ。本気になった相手の苦情を受け付けるこっちの身にもなれ」
「苦情なんかきてるのか? 俺には婚約者がいる事を皆分かっているはずだろう? そこの所は割り切った関係を望んでいると……」
「お前は馬鹿か? ベアード家は成り上がりではあるが今となっては世間に名が知れ渡っている、そんなベアードの家名にお前は泥をぬる気か?」
「名が知れるって……それは親父だけの話で俺なんて別に……」

 成り上がり者のベアード家、俺の父親は商人からこの国の大臣にまで上り詰めた異色の成り上がり者だ。結婚の遅かった父親にとって晩年に生まれた一粒種である俺は目の中に入れても痛くないほどの存在らしいが、だからと言って俺が偉い訳ではない。
 名声はすべて父親のもので俺はただの何処にでもいるガキでしかないのに、ライオネスは一体何を言っているのかと思っていると「やはりお前は何も分かっていない!」とライオネスにびしっ! と指を胸元に突き付けられ俺は戸惑う。

「お前の所業はお前の父親がここまで築いてきた世間への信頼を根底から崩すものに他ならない、お前はベアードの恥さらし者だ!」
「何を熱くなっているライオネス? 別に大臣職なんて世襲ではないのだし、俺は俺で好きに生きて何が悪い?」

 ライオネスはまたしても大きな溜息を吐く。

「お前は確かにモテる、だがその全てがお前目当てで寄ってきてると思うなよ? お前の存在『ベアード』という名に引き寄せられてやって来た奴等の中にはお前の父親の足を引っ張る為に送られてきた刺客も混じっている、その判別もつかない奴がむやみやたらと誰彼構わず相手にするなと俺は言っている!」
「刺客……?」
「お前は知らないのかもしれないが、お前に抱かれて子ができたと金をたかりにくる連中もいるのだぞ?」
「!? そんな馬鹿な、毎回避妊はちゃんとしている!」
「そんなもの100%ではない事くらい分かっているだろう?」

 いやでも待て、そんな事が実際あったとして相手は何故俺に直接言ってこない? 腹の子の父親が俺だと言うのならいの一番に報告すべきは俺だろう!?

「お前の親父さんはその都度それをもみ消して、どれだけ苦労をかけていると思っている? その為に俺がお前に付けられたというのに、お前は何も聞いていないのか?」

 聞いてない、全然全く聞いてない!

「俺はお前に遠慮なんてする気はないから言わせてもらうが、親父さんはお前に甘すぎなんだ、親父さんにとってできの悪い子ほど可愛いのかもしれないが、お前はできが悪すぎる!」

 なんてこった、そんな事誰も今まで言わなかったじゃないか……俺はただ自分の人生を謳歌していただけなのに。だがよく考えれば今までもライオネスには「ほどほどにしとけ」と散々注意を受けていた。ここまではっきりと言葉にされたのは初めてだが、知っていたならもっと早くに言って欲しかったな……
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