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運命に花束を①
運命の前哨戦③
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「グノーシスはどこにいる! その子供は一体誰の子供だ!」
「セカンド様の本物の『運命』との間にできた子供ですよ。場所はお教えできません」
「そんな馬鹿なことがあるか!」
王は再び肘掛に拳を叩きつけるようにして立ち上がる。
「私は彼の言葉を代弁したにすぎません。彼は世界を望んでなどいない、今ならまだ間に合います。そんな事よりもあなたにはもっとすべき事があるはずです」
「私には何もない! グノーシスがいなければ、私には何も……!」
「帰ろう、この人には何を言っても無駄だ」
クロードの隣で顔もあげられず、ただ跪いていたグノーは顔をあげる。数年ぶりに直視した兄の顔は面やつれてあの頃の面影もない。グノーを支配しようとする傍ら、それでも優しく笑っていた兄の姿はもうそこにはない。
何もかも変わってしまったのだ、自分が人を信じられなくなったように、彼もまた人の言葉に耳を傾けようとはしない。
自分にはナダールがいた、ただひたすらに無償の愛を注いでくれる相手ができた、けれど彼はそれすら拒絶して己の世界に閉じ籠もってしまっている。
「ただで帰れると思うな、三下が!」
ふいに甘い匂いが辺りに漂う。レオン、クロードをはじめ、家臣の何人かがグノーを見やる。だが王はその薫りに気付いていない様子でグノーを睨んだ。
「やる事があるんだ、帰らせてもらう。行くぞ、二人とも」
グノーは二人を促すように踵を返した。彼が動けば甘い匂いは付いてくる、それに気が付いている者は何人もいるのに誰も言葉を発しない。
王が気付かないのにそんな事がある訳がない、何故なら王はセカンドを自分の『運命』だと公言しているのだ、『運命』が番相手の匂いに気が付かないなんてそんな事はありえない。
「何をぐずぐずしておる! その者達を捕縛せよ! お前達のいう、大事な大事な民衆の前で三人とも縛り首にしてくれるわ!」
「出来るもんならやってみな、俺達はお前を見限った」
戸惑うように動けない家臣たち。
αである者はグノーがセカンドである事に気がついている、そしてβの者達は匂いを感じないまでも何か得体の知れない恐れのような物を彼に感じていた。
「さよならだ、レリック」
グノーはもう一度王の顔を見据える。その言葉に彼は一瞬の戸惑いを見せる、それは、その名はグノーシスだけが呼ぶ事を許されたグノーシスの為の名だ。
「待て! お前は……」
彼の叫びを最後まで聞くことはせず三人は駆け出した。こんな時の為に逃げる順路は頭に叩き込んである。
「やあっぱり、こうなるんですねぇ」
どこからか黒髪の男が現れて自分達と並走していた。
「うるさい、ルーク」
彼はへらへらと笑いながら余裕の笑みで走っている。そしてその手には謎の物体。
「試作品ができたから、持って来たよぉ」
「いいタイミングだな」
我に返ったのであろう家臣、警備兵達が自分達の後をわらわらと追いかけてくる。急を知らせる鐘も鳴り響き、城内は騒然とし始めた。
「では、いっきま~す!」
ルークが一つその謎の物体を背後に投げ捨てると、着地と共にそれは自走を始めて警備兵の足元を駆け抜けていく、何が来たのか分からない兵達は足元に気を取られ、団子になって慌てている所にその物体から白い気体がもくもくと湧き出した。
「なんだコレは!」
「っつ! 目が、身体も……」
兵士達は次々と顔を押さえて倒れていく。
「ひゃっは~、効果抜群!」
「おい、あれ死んでないだろうな?」
「大丈夫って言ってたよ、ちょっと麻痺したりするだけだって。それよりおいら達もあれ吸い込んだらやばいから、さっさと行こう」
ルークの誘導で三人が再び駆け出すと、先程ルークが投げたのと同じような物が別の場所でも稼動しているようで、あちこちで慌てたような声が響く。
「おい、試作品幾つ持ち込んだんだよ?」
「ん~? 一人一個ずつ」
という事は今この城にはムソンの人間が何人も忍び込んでるというわけか、相変わらず仕事のできる者達だ。戦力にならないと豪語する割には彼らは充分な戦力になる。
「あまり手の内を晒すのは感心しませんね」
「大丈夫、証拠は残らないよ。アレ最後に自爆するから」
クロードの言葉にルークが返すと共に、どこかでボンっと破裂音が響く。
「ちょ……俺そんな設計してない」
「あはは。ファルスの職人さん、ノリのいい人多くてさぁ、ただ設計図通り作るだけじゃつまらないって勝手に改造してんの。メリアからこっちに作り方ばれちゃったみたいに持ってかれたら技術盗まれちゃうだろ? だから自爆装置付き」
唖然とするグノーにルークはけらけらと笑う。あちこちから破裂音と悲鳴が聞こえる。
「おいアレ、本当に死人出てないんだろうな?」
「大丈夫だと思うけど、おいらが作ったわけじゃないからねぇ」
図面を引いたのは自分だが、こんな事は予想しておらず頭を抱える。発想は悪くないが人死にを出すのは想定していない……
「まずは逃げるのが先決ですよ、反省は後回しです」
クロードに腕を引かれグノーは再び走り出す。メリア王との対決は、思っていたよりも派手に開始されてしまった。
「セカンド様の本物の『運命』との間にできた子供ですよ。場所はお教えできません」
「そんな馬鹿なことがあるか!」
王は再び肘掛に拳を叩きつけるようにして立ち上がる。
「私は彼の言葉を代弁したにすぎません。彼は世界を望んでなどいない、今ならまだ間に合います。そんな事よりもあなたにはもっとすべき事があるはずです」
「私には何もない! グノーシスがいなければ、私には何も……!」
「帰ろう、この人には何を言っても無駄だ」
クロードの隣で顔もあげられず、ただ跪いていたグノーは顔をあげる。数年ぶりに直視した兄の顔は面やつれてあの頃の面影もない。グノーを支配しようとする傍ら、それでも優しく笑っていた兄の姿はもうそこにはない。
何もかも変わってしまったのだ、自分が人を信じられなくなったように、彼もまた人の言葉に耳を傾けようとはしない。
自分にはナダールがいた、ただひたすらに無償の愛を注いでくれる相手ができた、けれど彼はそれすら拒絶して己の世界に閉じ籠もってしまっている。
「ただで帰れると思うな、三下が!」
ふいに甘い匂いが辺りに漂う。レオン、クロードをはじめ、家臣の何人かがグノーを見やる。だが王はその薫りに気付いていない様子でグノーを睨んだ。
「やる事があるんだ、帰らせてもらう。行くぞ、二人とも」
グノーは二人を促すように踵を返した。彼が動けば甘い匂いは付いてくる、それに気が付いている者は何人もいるのに誰も言葉を発しない。
王が気付かないのにそんな事がある訳がない、何故なら王はセカンドを自分の『運命』だと公言しているのだ、『運命』が番相手の匂いに気が付かないなんてそんな事はありえない。
「何をぐずぐずしておる! その者達を捕縛せよ! お前達のいう、大事な大事な民衆の前で三人とも縛り首にしてくれるわ!」
「出来るもんならやってみな、俺達はお前を見限った」
戸惑うように動けない家臣たち。
αである者はグノーがセカンドである事に気がついている、そしてβの者達は匂いを感じないまでも何か得体の知れない恐れのような物を彼に感じていた。
「さよならだ、レリック」
グノーはもう一度王の顔を見据える。その言葉に彼は一瞬の戸惑いを見せる、それは、その名はグノーシスだけが呼ぶ事を許されたグノーシスの為の名だ。
「待て! お前は……」
彼の叫びを最後まで聞くことはせず三人は駆け出した。こんな時の為に逃げる順路は頭に叩き込んである。
「やあっぱり、こうなるんですねぇ」
どこからか黒髪の男が現れて自分達と並走していた。
「うるさい、ルーク」
彼はへらへらと笑いながら余裕の笑みで走っている。そしてその手には謎の物体。
「試作品ができたから、持って来たよぉ」
「いいタイミングだな」
我に返ったのであろう家臣、警備兵達が自分達の後をわらわらと追いかけてくる。急を知らせる鐘も鳴り響き、城内は騒然とし始めた。
「では、いっきま~す!」
ルークが一つその謎の物体を背後に投げ捨てると、着地と共にそれは自走を始めて警備兵の足元を駆け抜けていく、何が来たのか分からない兵達は足元に気を取られ、団子になって慌てている所にその物体から白い気体がもくもくと湧き出した。
「なんだコレは!」
「っつ! 目が、身体も……」
兵士達は次々と顔を押さえて倒れていく。
「ひゃっは~、効果抜群!」
「おい、あれ死んでないだろうな?」
「大丈夫って言ってたよ、ちょっと麻痺したりするだけだって。それよりおいら達もあれ吸い込んだらやばいから、さっさと行こう」
ルークの誘導で三人が再び駆け出すと、先程ルークが投げたのと同じような物が別の場所でも稼動しているようで、あちこちで慌てたような声が響く。
「おい、試作品幾つ持ち込んだんだよ?」
「ん~? 一人一個ずつ」
という事は今この城にはムソンの人間が何人も忍び込んでるというわけか、相変わらず仕事のできる者達だ。戦力にならないと豪語する割には彼らは充分な戦力になる。
「あまり手の内を晒すのは感心しませんね」
「大丈夫、証拠は残らないよ。アレ最後に自爆するから」
クロードの言葉にルークが返すと共に、どこかでボンっと破裂音が響く。
「ちょ……俺そんな設計してない」
「あはは。ファルスの職人さん、ノリのいい人多くてさぁ、ただ設計図通り作るだけじゃつまらないって勝手に改造してんの。メリアからこっちに作り方ばれちゃったみたいに持ってかれたら技術盗まれちゃうだろ? だから自爆装置付き」
唖然とするグノーにルークはけらけらと笑う。あちこちから破裂音と悲鳴が聞こえる。
「おいアレ、本当に死人出てないんだろうな?」
「大丈夫だと思うけど、おいらが作ったわけじゃないからねぇ」
図面を引いたのは自分だが、こんな事は予想しておらず頭を抱える。発想は悪くないが人死にを出すのは想定していない……
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