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運命に花束を②
運命と晩餐会③
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「ところでよぉ、お前の弟みたいなのがもう一人、さっきからずっとこっちを仏頂面で睨んでんだけど、アレはなんだ?」
「あぁ、あはは、あれなぁ……たぶんブラックが俺に構うのが気に入らねぇんじゃないかな」
そう言ってグノーは、酒を片手にこちらを睨むようにして見ているエドワードを苦笑いで見やった。
「エディ君はいくら憎まれ口を叩いていても、お父さん大好きですからね」
ナダールも苦笑してそんな事を話していると、エドワードが酒瓶を掴んだまま、ふらりとこちらへやって来た。
「な~んか、お前等、今、俺の悪口言ってなかったか?」
「ん? 悪口なんて言ってねぇよ。それにしてもお前酔ってんな、もう止めとけ」
「酔って……? 酔ってない!」
「いや、完全に酔っ払ってんだろ。なんだよ、お前にしちゃ珍しいな」
「ほら、ここ座れ」とスタールは自分の横を開けて、足元の覚束ないエドワードを座らせる。
「だいたいなぁ、俺はぁ、前からあんたが気にいらねぇんだよっ!」
エドワードは机に突っ伏すようにして、グノーをびしっと指差した。
「はは、いやぁ……それはなんとなく気付いてたけどな」
「いっつも、いっっっつも、アジェを連れて行っちまうお前が、俺は本当に、嫌いなんだっ」
「ちゃんといつも返してるだろ? もう、酒没収」
「なのに、なんだよっ、親父まで俺から取ってくなっ! くそっ、酒返せ!」
完全に酔っ払ったエドワードは相当な絡み酒か……とその場の誰もが苦笑する。
「酒は駄目。それに俺が実の息子のお前に勝てるわけないだろう、ブラックはお前の親父だよ」
「実の息子じゃ……ねぇし!」
「あれ? あぁ……そうか」
「少しは気にしてたんですね、エディ君」
「ったく、突然俺だけ家族じゃないって放り出されたって、知るかよっ! 何年家族やってたと思ってんだよ、今更、本当の親だなんて言われたって、分っかんねぇよっ!」
エドワードが拳で机を叩き、その様子を見ていたスタールは「こいつ相当ストレス溜めてんなぁ……」と溜息を零した。
「あん? なんだよ、お前っ、スタール、やるかっ!?」
「やらねぇよ、俺、怪我人だっつうの」
「お前、寝床用意してやるから、もう寝ろ。これ絶対起きたら後悔するパターンだぞ」
「っんだよ、俺はっ、お前が嫌いだ」
「それはさっき聞いたよ。大丈夫だって、血なんか繋がってなくても、お前はブラックの息子だよ」
「当ったり前だっ、そうじゃねぇ、俺はなぁ、あんたのそうやって何もないって顔で、全部持ってっちまう所が大嫌いなんだよっ」
「え?」
「結婚して、子供もできて、皆に認められて、祝ってもらって、何が不服だよ! 記憶障害? 知るかっての、何アジェに泣きついてんだよ、お前贅沢過ぎんだろっ、俺だってできるならアジェと二人で暮らしてぇよっ!」
「あぁ……うん……そうだよな、ごめんな」
「謝んな、謝るくらいならアジェとベタベタすんなっ、俺から何もかも持ってくなっ」
「うん、分かった。取らないよ、大丈夫だから、そんなに怒るな……アレ?」
言いたい事だけ言って寝落ちたのか、エドワードは机に突っ伏すように寝息を立て始める。そのナダールの色にも似た金色の髪を撫でてグノーはもう一度「ごめんな……」と呟いた。
「俺、気付いてなかったけど、こいつの事、傷付けてたのかな……」
そんなつもりはなかったのに……とグノーは己の未熟さに溜息を零す。
「それでも何でも口にしてしまうエディ君が今まで何も言わなかったのは、それが理不尽な要求だという事も分かっているからですよ。アジェ君やブラックさんがあなたを構うのは二人が望んでしている事で、あなたがさせている訳ではない。彼はその辺もちゃんと分かっているから気に入らなくても何も言わないのでしょうね」
「うん、いい男だよな、こいつも」
「あれ? エディ、寝ちゃったの?」
「あぁ、アジェ。うん、今、寝所に運ぼうかって話してた所」
一階にある小部屋はもはや簡易宿泊施設のようになっていて、雑魚寝で数人は寝られるように整えられている。
「そっか、でもいいや、僕連れて帰るよ。そんなに遠くもないしね」
「ほら、エディ起きて帰ろ?」と、アジェがエドワードを揺さぶると「アジェ?」と子供のように目を擦ったエドワードはアジェに抱きついた。
「こんなに飲むなんて珍しいね。よっぽど楽しかったのか、久しぶりにお父さんに会えて嬉しかったのかな?」
「……親父なんか、嫌いだっ! アジェ……」
「はいはい、帰るよ。歩ける?」
「うぅ……」と目を擦って、エドワードはアジェに手を引かれるようにして帰って行った。
「あの二人もよく分からねぇな。兄弟で婚約者だろ? もうどっちかに関係絞っちまえばいいのに、どうにも中途半端だよな。あの弟がランティスの王子だってのも関係してるのか?」
「どうですかね、ただエディ君はあれでいてとても真面目な人なので、身分の差は感じている気がしますね」
「エディはアジェの為に人生すべて捧げてる男だからな」
「また、面倒臭い関係だな」
スタールは眉間に皺を寄せ、エドワードから没収した酒をちゃっかり失敬して、酒を片手に息を吐く。
「メリアを攻略したの、まるで私がやったように陛下は言っていましたが、そのほとんどはグノーとエディ君の功績ですからね。エディ君が人質に取られたアジェ君を死に物狂いで取り返しに行ったというのが実際の所で、私がやった事なんて本当に微々たるものですよ」
「前に言ってた人質ってあいつかよ、なんだかあっちも色々と複雑そうだな」
「そうですね、あの頃は人間関係も滅茶苦茶で、それに振り回されてエディ君はずいぶん苦労していましたよ。私も最初は彼にはきつく当たっていましたしね」
「お前がか? 珍しい事もあったもんだな」
スタールの言葉にナダールは当時を思い出し自嘲の笑みを零す。
「あの頃、私にとってグノーと子供が誰より大事で、それを脅かされたのが本当に耐えられなかった。グノーは錯乱してしまうし、子供は早産でちゃんと育つのか不安もあって、あの時は私もキツかったのですよ。でもそんな事が過去にあったので、今回は大丈夫だと思えたというのもあります。今回は前回ほど状況が深刻ではありませんでしたから」
この状況をさらりと深刻なものではないと言い切るナダールに、スタールはやはりまた呆れたように息を吐き、その部分は聞き流した。
「あいつが一時、イリヤで騎士団に在籍してたのはそのせいだったのか……」
「きっとそうでしょうね、メリアに乗り込むのに、ブラックさんに色々と条件を出されていたみたいでしたよ」
「はぁ……そういう事情があったんなら先に言えってんだよな、無駄に喧嘩売ったこっちが馬鹿みたいじゃねぇか……」
喧嘩を売った挙句、返り討ちにあい、散々な目に合わされたスタールは当時を思い出して苦虫を噛み潰したような渋い表情を見せる。
「エディは人に頼るの苦手だからな。そういう所はこいつと真逆だよ」
「私、人を見る目には自信がありますからね。今回、少し自信が揺らぎましたが、やはり自分は間違っていなかったと確信しましたよ」
「そんな事言っていいのか? 俺だって、いつ奴等みたいにお前に仇なすかなんて分かんねぇぞ」
「ふふ、あなたはそんな事はしませんよ」
「なんでそう言い切れる?」
「私の勘です」
スタールは本当に分かりやすい。
自分が大怪我を負ってでも他人を助ける、しかもそれが無自覚に衝動的にできてしまう人間を疑う方がどうかしている。
「ただ……」とナダールは言葉を続け、背後をちらりと見やる。
「あの人だけは読めないんですよねぇ……」
そこにはいつの間にかブラックと話し込んでいるコリーがいて、その脇ではクロードが話を聞いているのかいないのか、グラスを片手にぼんやりしている。
なんともあまり見かけない組み合わせだ。
「ん? コリーさんのこと? 確かにあの人は何考えてるのかさっぱり分からないな。でも、お前は信用してるんじゃなかったのか?」
グノーは彼に何の疑問も持っていないようで不思議そうに首を傾げる。
「仕事に関しては完璧に百%信頼していますよ、彼の言う通りにやれば間違いなく上手くいきます。ただ、人としてはどこか得体が知れなくて……」
ナダールは珍しく難しい表情を見せる。とても分かり易いスタールとは対照的に、コリーは本当に人となりが分からないのだ。
匂いで機嫌を判別もできないし、常は無表情な彼の表情を読むのは難しい。
ただはっきり分かったのはクレール及びロイヤー一族が心底本気で嫌いな事と、メリッサさんが大事すぎて嫁に出したくないという感情だけは理解できた。
一人考え込むナダールの横で食事をかき込みながら、スタールは「そう深く考え込む事でもねぇよ」とぼそりと告げる。
「そう言えば、今回のこれ、首謀者コリーさんだって聞いたけど、本当?」
「あぁ、そうだ。元々俺と副団長は別々に動いてたから、最初はあいつ等の中に副団長がいると分かって厄介な黒幕だなと思ったんだけどよ、話してみたらなんて事はない、同じ目的で動いてやがった。しかもあっちの方がスケールのでかい思惑があるようだったんで、俺もこの計画に乗ったんだ」
「スケールの大きい思惑?」
「あぁ、お前も見た通り、あの馬鹿貴族、副団長の遠縁だろう? 俺があの人に気付いた時にはすでに向こうはジミーの背後のクレールにまであたりを付けてやがったのさ。あいつは本家を潰すいい機会だ、ついでに町の悪そうな輩も一掃しましょうって言ってな、ジミーを焚きつけて、町のチンピラに声をかけさせたのさ。それでその結果がこれだ。事件の解決、お前を狙う奴を捕まえて、ついでに自分の敵も倒す。更に町中の塵攫いまでしちまったぜ、敵には回したくねぇよなぁ。まぁ、敵に回さなけりゃこれ程心強い参謀もいないがな」
「確かに」
「ちなみに、お前はあの人が読めないと言ったが、中身は意外と単純だぞ。自分にとって都合がいいか、悪いかそれだけだ。あの人を敵に回したくないなら、あの人の都合に合わせて動けばいい、恐らく間違った事はしない人だから、よっぽど変な事をしない限りお前との相性は悪くないと思うぞ」
「単純馬鹿にはあのくらいの腹黒さでちょうど釣り合う」と、スタールはげらげらと笑った。
「なるほどね、でもさ、コリーさんはともかく、何でお前はあいつ等の計画に気付いたんだ?」
「あ? 俺か? 俺はこの肩と手の怪我でしばらく力仕事はできなかったんでな、町の医者に傷の具合見せに来たら、たまたまジミーの奴を見付けちまったんだよ。町に変な噂が流れてるのも聞いてたから、こりゃなんかあると思って、ジミー懐柔して潜り込んだんだ」
「噂はどこから? 町の噂なんて寄宿舎まで届かなかっただろ?」
「それは、あいつ等だよ」
そう言ってスタールが見やったのは、騎士団員達とは別に飲み食いをしている数人の黒髪の集団だった。
「ルークの奴が妙な噂が気になるって話しに来てな、何かあるといけないから領主の息子共とちょっと様子を見ててくれって言いに来たんだ。そんで、潜り込んでからの連絡役もあいつ等、本当にどこにでも潜り込むから便利だわ、陛下が重宝する理由が分かる。あとはもう芋づる式に仲間が増えて、まぁ、こんな感じだ」
店内には今まで見た事のない人数の男達が所狭しとひしめいている、スタール班の人間をはじめ、黒の騎士団、そして少年兵達。
「少年兵の皆さんもあなたが?」
「いや、最初はキースとハリーだけだったんだがな、あいつ等どっかで俺等の話聞いてたみたいで、仲間に入れてくれって談判に来たんだよ。下手げにお前等と仲の良いうちの班の奴等使うより、こっち側に侵入させるには嫁と喧嘩してた所を目撃されてるあいつ等の方が都合がよくてな、ジミーに接触させて少しずつこっちの人数増やしてったんだよ」
「だからいつの間にかこんな大所帯だ」と、スタールは笑う。
「ありがたいな」
グノーはしんみりそう言った。
「皆が皆、俺達の為にって動いてくれた訳じゃないかもしれないけど、それでもお前に付いて来てくれる奴がこんなにいる」
「私、仲間はずれでしたけどね……」
「拗ねんなよ」と、グノーは笑ってナダールの頬をつつく。
「お前が出てくると色々と面倒だったんだよ。お前、ジミー目の前にしたら本気で殺しちまいそうだったし」
「そうですね。グノーが止めなかったら恐らく殺していましたよ。本当は止められてもやりたいくらいでしたが、状況がよく分かりませんでしたのでね。最優先はグノーの身の安全、殺すのはその後で……と思ったのは事実ですよ」
「殺る気満々じゃねぇか」
「それでもここまで大事になっていると分かったら、さすがに私も自重しますよ。これだけの人数を路頭に迷わせる訳にはいきませんからね」
「しかも陛下まで出てくるし」と、ナダールは溜息を零す。
「本当、それは俺も想定外だったわ。黒の騎士団から連絡が行ったのかね。それにしても、たかが一騎士団長のごたごたに国王自ら出向いて来るとは誰も思わねぇよ」
「ブラックはそういう奴だからな」とグノーは言いつつ「まぁ、言ってもそればっかりでもないだろうけどな」と不穏な言葉を続ける。
「と言うと?」
「実際こいつはあいつにとって使える駒なんだよ。こいつの親父ランティスの騎士団長だし、ランティス国王はアジェの親父だ。ランティスだけじゃない、俺にしたってメリアの、役には立たないけど元王子だし、今一番メリアで力を持ってるレオンとだってこいつは顔見知りだよ。勿論その後ろにいるルイスさんともな。国の関係なんてどう動くかなんて分からないんだ、あっちこっちで顔が利く奴は重宝だよな。自分が自由に動けなくなった分、あいつはそういうのできる奴探してたんだと思うよ。こいつ、黒の騎士団とも仲良いから、自分の直属で動かすにも楽だし使いやすい、そんな人間、あいつが易々手放す訳ねぇじゃん」
グノーのその言葉にナダールは複雑な表情を浮かべる。
「なんでしょう、なんだか素直に喜べません。私が必要とされているというより、私の人脈が必要なのでしょうか?」
「それもあるだろうな。お前、なんだかんだであっちこっちで知り合い作るから」
「友人が多いのはいい事じゃないですか。でも、私の知人が増えたのは色々な事件に巻き込まれた結果であって、私が望んで増やした訳ではないのですけどねぇ……」
「そういうのに巻き込まれたのも、今こうなってるのも全部、結果的に『運命』なんじゃねぇの? ちなみに俺は止めたぞ、ブラックの腹黒さがコリーさんと大差ないの知ってるからな。エディだって散々止めとけって言ってただろ? それでも大丈夫だって言ったのお前だからな」
「俺にはお前がいいように使われてる未来しか見えねぇよ……」とグノーは言う。
「そういうのはもっと早くに言ってくださいよ」
「だから言ったってば!『気にしすぎだ、大丈夫』って言い切ったのはお前だよ」
ナダールは何とはなしに言葉に詰まった。確かにどこかでそんな会話を交わしたような記憶がある。どちらにしても、自分が決心する前に父ギマールに話を通してしまったブラックに、断る選択肢はほぼ塞がれていた。
騎士団に入れば生活も安定すると考えたのも事実で、その時はそれが最善だと思ったのだからその全ては誰のせいでもなく、自分で選び取った『今』である。
「人の意見は聞いておくものですね」
「まぁ、いざとなったらブラックと喧嘩してでもお前は守るから、安心しとけ」
「頼もしいですねぇ」とナダールが笑う傍ら「どっちが旦那だか分かりゃしねぇ、情けねぇ男だなぁ……」とスタールは呆れたように酒を煽った。
そんな話をしていた時「おぉい」とブラックから声がかかり、呼ばれたのはグノーで、彼は面倒くさそうにブラックの元へと歩いて行く。
ブラックとコリーは何やら仕事の話をしていたようで、グノーがそこに加わると三人は机の上を片付けてどこからか地図を取り出し、頭を付き合わせて話し始めた。
「なんでこんな宴の席で仕事の話、し始めるかねぇ……」
「やはりアレ仕事の話だと思います?」
溜息を吐きだしつつ言ったナダールの言葉に、スタールは「そうじゃねぇの?」と三人を横目に見やる。
「あの三人が頭突き合わせて他に何の話をするってんだ、軍事戦略でも立てるか? まぁ、だとしてもそれも仕事の話だろうがな」
「ですよね……」
「どうかしたか?」
スタールは怪訝な表情で、そのナダールの複雑そうな困惑したような表情を見やる。
「いえね、ここの現場のトップ、一応それでも私なんですよ。その私が呼ばれずに、グノーが呼ばれるってどうなんですかね……」
「お前等二人で一人だと思われてんだろ。行きたきゃ行ってくればいいじゃねぇか、あんな中でも元騎士団長様は飄々と一人で酒飲んでるぜ」
見ればそこには三人が議論する傍ら、それを聞いているのかいないのかよく分からないクロードが、グラスを片手につまみを摘んでいた。
エドワードではないが、そろそろ潰れる輩も出てきているというのに、本当に飄々としたものだ。
「私があの三人の話を聞いていた所で理解できる訳ないじゃないですか。クロードさんは凄いですよ」
そんな事を言って、ふともう一度そちらを見やるとクロードと目が合った。
クロードはブラックに「少し席を外す」とそんな素振りをして、ふらりとこちらへ歩いてくる。そのクロードの行動に、何故だか慌てたスタールが腰を浮かした。
「ちょっとスタール、どこ行くんですか」
「厠だ、厠」
「そんな事言って、逃げようとしてるのバレバレですよ」
「俺、あの人苦手なんだよ。後は任せた」
そう言って、スタールはいそいそと本当に厠の方へと歩いて行ってしまう。
そうこうする内にやって来たクロードは、そのスタールの後姿を見やって「また逃げられてしまいましたね……」と零すように呟いた。
「あぁ、あはは、あれなぁ……たぶんブラックが俺に構うのが気に入らねぇんじゃないかな」
そう言ってグノーは、酒を片手にこちらを睨むようにして見ているエドワードを苦笑いで見やった。
「エディ君はいくら憎まれ口を叩いていても、お父さん大好きですからね」
ナダールも苦笑してそんな事を話していると、エドワードが酒瓶を掴んだまま、ふらりとこちらへやって来た。
「な~んか、お前等、今、俺の悪口言ってなかったか?」
「ん? 悪口なんて言ってねぇよ。それにしてもお前酔ってんな、もう止めとけ」
「酔って……? 酔ってない!」
「いや、完全に酔っ払ってんだろ。なんだよ、お前にしちゃ珍しいな」
「ほら、ここ座れ」とスタールは自分の横を開けて、足元の覚束ないエドワードを座らせる。
「だいたいなぁ、俺はぁ、前からあんたが気にいらねぇんだよっ!」
エドワードは机に突っ伏すようにして、グノーをびしっと指差した。
「はは、いやぁ……それはなんとなく気付いてたけどな」
「いっつも、いっっっつも、アジェを連れて行っちまうお前が、俺は本当に、嫌いなんだっ」
「ちゃんといつも返してるだろ? もう、酒没収」
「なのに、なんだよっ、親父まで俺から取ってくなっ! くそっ、酒返せ!」
完全に酔っ払ったエドワードは相当な絡み酒か……とその場の誰もが苦笑する。
「酒は駄目。それに俺が実の息子のお前に勝てるわけないだろう、ブラックはお前の親父だよ」
「実の息子じゃ……ねぇし!」
「あれ? あぁ……そうか」
「少しは気にしてたんですね、エディ君」
「ったく、突然俺だけ家族じゃないって放り出されたって、知るかよっ! 何年家族やってたと思ってんだよ、今更、本当の親だなんて言われたって、分っかんねぇよっ!」
エドワードが拳で机を叩き、その様子を見ていたスタールは「こいつ相当ストレス溜めてんなぁ……」と溜息を零した。
「あん? なんだよ、お前っ、スタール、やるかっ!?」
「やらねぇよ、俺、怪我人だっつうの」
「お前、寝床用意してやるから、もう寝ろ。これ絶対起きたら後悔するパターンだぞ」
「っんだよ、俺はっ、お前が嫌いだ」
「それはさっき聞いたよ。大丈夫だって、血なんか繋がってなくても、お前はブラックの息子だよ」
「当ったり前だっ、そうじゃねぇ、俺はなぁ、あんたのそうやって何もないって顔で、全部持ってっちまう所が大嫌いなんだよっ」
「え?」
「結婚して、子供もできて、皆に認められて、祝ってもらって、何が不服だよ! 記憶障害? 知るかっての、何アジェに泣きついてんだよ、お前贅沢過ぎんだろっ、俺だってできるならアジェと二人で暮らしてぇよっ!」
「あぁ……うん……そうだよな、ごめんな」
「謝んな、謝るくらいならアジェとベタベタすんなっ、俺から何もかも持ってくなっ」
「うん、分かった。取らないよ、大丈夫だから、そんなに怒るな……アレ?」
言いたい事だけ言って寝落ちたのか、エドワードは机に突っ伏すように寝息を立て始める。そのナダールの色にも似た金色の髪を撫でてグノーはもう一度「ごめんな……」と呟いた。
「俺、気付いてなかったけど、こいつの事、傷付けてたのかな……」
そんなつもりはなかったのに……とグノーは己の未熟さに溜息を零す。
「それでも何でも口にしてしまうエディ君が今まで何も言わなかったのは、それが理不尽な要求だという事も分かっているからですよ。アジェ君やブラックさんがあなたを構うのは二人が望んでしている事で、あなたがさせている訳ではない。彼はその辺もちゃんと分かっているから気に入らなくても何も言わないのでしょうね」
「うん、いい男だよな、こいつも」
「あれ? エディ、寝ちゃったの?」
「あぁ、アジェ。うん、今、寝所に運ぼうかって話してた所」
一階にある小部屋はもはや簡易宿泊施設のようになっていて、雑魚寝で数人は寝られるように整えられている。
「そっか、でもいいや、僕連れて帰るよ。そんなに遠くもないしね」
「ほら、エディ起きて帰ろ?」と、アジェがエドワードを揺さぶると「アジェ?」と子供のように目を擦ったエドワードはアジェに抱きついた。
「こんなに飲むなんて珍しいね。よっぽど楽しかったのか、久しぶりにお父さんに会えて嬉しかったのかな?」
「……親父なんか、嫌いだっ! アジェ……」
「はいはい、帰るよ。歩ける?」
「うぅ……」と目を擦って、エドワードはアジェに手を引かれるようにして帰って行った。
「あの二人もよく分からねぇな。兄弟で婚約者だろ? もうどっちかに関係絞っちまえばいいのに、どうにも中途半端だよな。あの弟がランティスの王子だってのも関係してるのか?」
「どうですかね、ただエディ君はあれでいてとても真面目な人なので、身分の差は感じている気がしますね」
「エディはアジェの為に人生すべて捧げてる男だからな」
「また、面倒臭い関係だな」
スタールは眉間に皺を寄せ、エドワードから没収した酒をちゃっかり失敬して、酒を片手に息を吐く。
「メリアを攻略したの、まるで私がやったように陛下は言っていましたが、そのほとんどはグノーとエディ君の功績ですからね。エディ君が人質に取られたアジェ君を死に物狂いで取り返しに行ったというのが実際の所で、私がやった事なんて本当に微々たるものですよ」
「前に言ってた人質ってあいつかよ、なんだかあっちも色々と複雑そうだな」
「そうですね、あの頃は人間関係も滅茶苦茶で、それに振り回されてエディ君はずいぶん苦労していましたよ。私も最初は彼にはきつく当たっていましたしね」
「お前がか? 珍しい事もあったもんだな」
スタールの言葉にナダールは当時を思い出し自嘲の笑みを零す。
「あの頃、私にとってグノーと子供が誰より大事で、それを脅かされたのが本当に耐えられなかった。グノーは錯乱してしまうし、子供は早産でちゃんと育つのか不安もあって、あの時は私もキツかったのですよ。でもそんな事が過去にあったので、今回は大丈夫だと思えたというのもあります。今回は前回ほど状況が深刻ではありませんでしたから」
この状況をさらりと深刻なものではないと言い切るナダールに、スタールはやはりまた呆れたように息を吐き、その部分は聞き流した。
「あいつが一時、イリヤで騎士団に在籍してたのはそのせいだったのか……」
「きっとそうでしょうね、メリアに乗り込むのに、ブラックさんに色々と条件を出されていたみたいでしたよ」
「はぁ……そういう事情があったんなら先に言えってんだよな、無駄に喧嘩売ったこっちが馬鹿みたいじゃねぇか……」
喧嘩を売った挙句、返り討ちにあい、散々な目に合わされたスタールは当時を思い出して苦虫を噛み潰したような渋い表情を見せる。
「エディは人に頼るの苦手だからな。そういう所はこいつと真逆だよ」
「私、人を見る目には自信がありますからね。今回、少し自信が揺らぎましたが、やはり自分は間違っていなかったと確信しましたよ」
「そんな事言っていいのか? 俺だって、いつ奴等みたいにお前に仇なすかなんて分かんねぇぞ」
「ふふ、あなたはそんな事はしませんよ」
「なんでそう言い切れる?」
「私の勘です」
スタールは本当に分かりやすい。
自分が大怪我を負ってでも他人を助ける、しかもそれが無自覚に衝動的にできてしまう人間を疑う方がどうかしている。
「ただ……」とナダールは言葉を続け、背後をちらりと見やる。
「あの人だけは読めないんですよねぇ……」
そこにはいつの間にかブラックと話し込んでいるコリーがいて、その脇ではクロードが話を聞いているのかいないのか、グラスを片手にぼんやりしている。
なんともあまり見かけない組み合わせだ。
「ん? コリーさんのこと? 確かにあの人は何考えてるのかさっぱり分からないな。でも、お前は信用してるんじゃなかったのか?」
グノーは彼に何の疑問も持っていないようで不思議そうに首を傾げる。
「仕事に関しては完璧に百%信頼していますよ、彼の言う通りにやれば間違いなく上手くいきます。ただ、人としてはどこか得体が知れなくて……」
ナダールは珍しく難しい表情を見せる。とても分かり易いスタールとは対照的に、コリーは本当に人となりが分からないのだ。
匂いで機嫌を判別もできないし、常は無表情な彼の表情を読むのは難しい。
ただはっきり分かったのはクレール及びロイヤー一族が心底本気で嫌いな事と、メリッサさんが大事すぎて嫁に出したくないという感情だけは理解できた。
一人考え込むナダールの横で食事をかき込みながら、スタールは「そう深く考え込む事でもねぇよ」とぼそりと告げる。
「そう言えば、今回のこれ、首謀者コリーさんだって聞いたけど、本当?」
「あぁ、そうだ。元々俺と副団長は別々に動いてたから、最初はあいつ等の中に副団長がいると分かって厄介な黒幕だなと思ったんだけどよ、話してみたらなんて事はない、同じ目的で動いてやがった。しかもあっちの方がスケールのでかい思惑があるようだったんで、俺もこの計画に乗ったんだ」
「スケールの大きい思惑?」
「あぁ、お前も見た通り、あの馬鹿貴族、副団長の遠縁だろう? 俺があの人に気付いた時にはすでに向こうはジミーの背後のクレールにまであたりを付けてやがったのさ。あいつは本家を潰すいい機会だ、ついでに町の悪そうな輩も一掃しましょうって言ってな、ジミーを焚きつけて、町のチンピラに声をかけさせたのさ。それでその結果がこれだ。事件の解決、お前を狙う奴を捕まえて、ついでに自分の敵も倒す。更に町中の塵攫いまでしちまったぜ、敵には回したくねぇよなぁ。まぁ、敵に回さなけりゃこれ程心強い参謀もいないがな」
「確かに」
「ちなみに、お前はあの人が読めないと言ったが、中身は意外と単純だぞ。自分にとって都合がいいか、悪いかそれだけだ。あの人を敵に回したくないなら、あの人の都合に合わせて動けばいい、恐らく間違った事はしない人だから、よっぽど変な事をしない限りお前との相性は悪くないと思うぞ」
「単純馬鹿にはあのくらいの腹黒さでちょうど釣り合う」と、スタールはげらげらと笑った。
「なるほどね、でもさ、コリーさんはともかく、何でお前はあいつ等の計画に気付いたんだ?」
「あ? 俺か? 俺はこの肩と手の怪我でしばらく力仕事はできなかったんでな、町の医者に傷の具合見せに来たら、たまたまジミーの奴を見付けちまったんだよ。町に変な噂が流れてるのも聞いてたから、こりゃなんかあると思って、ジミー懐柔して潜り込んだんだ」
「噂はどこから? 町の噂なんて寄宿舎まで届かなかっただろ?」
「それは、あいつ等だよ」
そう言ってスタールが見やったのは、騎士団員達とは別に飲み食いをしている数人の黒髪の集団だった。
「ルークの奴が妙な噂が気になるって話しに来てな、何かあるといけないから領主の息子共とちょっと様子を見ててくれって言いに来たんだ。そんで、潜り込んでからの連絡役もあいつ等、本当にどこにでも潜り込むから便利だわ、陛下が重宝する理由が分かる。あとはもう芋づる式に仲間が増えて、まぁ、こんな感じだ」
店内には今まで見た事のない人数の男達が所狭しとひしめいている、スタール班の人間をはじめ、黒の騎士団、そして少年兵達。
「少年兵の皆さんもあなたが?」
「いや、最初はキースとハリーだけだったんだがな、あいつ等どっかで俺等の話聞いてたみたいで、仲間に入れてくれって談判に来たんだよ。下手げにお前等と仲の良いうちの班の奴等使うより、こっち側に侵入させるには嫁と喧嘩してた所を目撃されてるあいつ等の方が都合がよくてな、ジミーに接触させて少しずつこっちの人数増やしてったんだよ」
「だからいつの間にかこんな大所帯だ」と、スタールは笑う。
「ありがたいな」
グノーはしんみりそう言った。
「皆が皆、俺達の為にって動いてくれた訳じゃないかもしれないけど、それでもお前に付いて来てくれる奴がこんなにいる」
「私、仲間はずれでしたけどね……」
「拗ねんなよ」と、グノーは笑ってナダールの頬をつつく。
「お前が出てくると色々と面倒だったんだよ。お前、ジミー目の前にしたら本気で殺しちまいそうだったし」
「そうですね。グノーが止めなかったら恐らく殺していましたよ。本当は止められてもやりたいくらいでしたが、状況がよく分かりませんでしたのでね。最優先はグノーの身の安全、殺すのはその後で……と思ったのは事実ですよ」
「殺る気満々じゃねぇか」
「それでもここまで大事になっていると分かったら、さすがに私も自重しますよ。これだけの人数を路頭に迷わせる訳にはいきませんからね」
「しかも陛下まで出てくるし」と、ナダールは溜息を零す。
「本当、それは俺も想定外だったわ。黒の騎士団から連絡が行ったのかね。それにしても、たかが一騎士団長のごたごたに国王自ら出向いて来るとは誰も思わねぇよ」
「ブラックはそういう奴だからな」とグノーは言いつつ「まぁ、言ってもそればっかりでもないだろうけどな」と不穏な言葉を続ける。
「と言うと?」
「実際こいつはあいつにとって使える駒なんだよ。こいつの親父ランティスの騎士団長だし、ランティス国王はアジェの親父だ。ランティスだけじゃない、俺にしたってメリアの、役には立たないけど元王子だし、今一番メリアで力を持ってるレオンとだってこいつは顔見知りだよ。勿論その後ろにいるルイスさんともな。国の関係なんてどう動くかなんて分からないんだ、あっちこっちで顔が利く奴は重宝だよな。自分が自由に動けなくなった分、あいつはそういうのできる奴探してたんだと思うよ。こいつ、黒の騎士団とも仲良いから、自分の直属で動かすにも楽だし使いやすい、そんな人間、あいつが易々手放す訳ねぇじゃん」
グノーのその言葉にナダールは複雑な表情を浮かべる。
「なんでしょう、なんだか素直に喜べません。私が必要とされているというより、私の人脈が必要なのでしょうか?」
「それもあるだろうな。お前、なんだかんだであっちこっちで知り合い作るから」
「友人が多いのはいい事じゃないですか。でも、私の知人が増えたのは色々な事件に巻き込まれた結果であって、私が望んで増やした訳ではないのですけどねぇ……」
「そういうのに巻き込まれたのも、今こうなってるのも全部、結果的に『運命』なんじゃねぇの? ちなみに俺は止めたぞ、ブラックの腹黒さがコリーさんと大差ないの知ってるからな。エディだって散々止めとけって言ってただろ? それでも大丈夫だって言ったのお前だからな」
「俺にはお前がいいように使われてる未来しか見えねぇよ……」とグノーは言う。
「そういうのはもっと早くに言ってくださいよ」
「だから言ったってば!『気にしすぎだ、大丈夫』って言い切ったのはお前だよ」
ナダールは何とはなしに言葉に詰まった。確かにどこかでそんな会話を交わしたような記憶がある。どちらにしても、自分が決心する前に父ギマールに話を通してしまったブラックに、断る選択肢はほぼ塞がれていた。
騎士団に入れば生活も安定すると考えたのも事実で、その時はそれが最善だと思ったのだからその全ては誰のせいでもなく、自分で選び取った『今』である。
「人の意見は聞いておくものですね」
「まぁ、いざとなったらブラックと喧嘩してでもお前は守るから、安心しとけ」
「頼もしいですねぇ」とナダールが笑う傍ら「どっちが旦那だか分かりゃしねぇ、情けねぇ男だなぁ……」とスタールは呆れたように酒を煽った。
そんな話をしていた時「おぉい」とブラックから声がかかり、呼ばれたのはグノーで、彼は面倒くさそうにブラックの元へと歩いて行く。
ブラックとコリーは何やら仕事の話をしていたようで、グノーがそこに加わると三人は机の上を片付けてどこからか地図を取り出し、頭を付き合わせて話し始めた。
「なんでこんな宴の席で仕事の話、し始めるかねぇ……」
「やはりアレ仕事の話だと思います?」
溜息を吐きだしつつ言ったナダールの言葉に、スタールは「そうじゃねぇの?」と三人を横目に見やる。
「あの三人が頭突き合わせて他に何の話をするってんだ、軍事戦略でも立てるか? まぁ、だとしてもそれも仕事の話だろうがな」
「ですよね……」
「どうかしたか?」
スタールは怪訝な表情で、そのナダールの複雑そうな困惑したような表情を見やる。
「いえね、ここの現場のトップ、一応それでも私なんですよ。その私が呼ばれずに、グノーが呼ばれるってどうなんですかね……」
「お前等二人で一人だと思われてんだろ。行きたきゃ行ってくればいいじゃねぇか、あんな中でも元騎士団長様は飄々と一人で酒飲んでるぜ」
見ればそこには三人が議論する傍ら、それを聞いているのかいないのかよく分からないクロードが、グラスを片手につまみを摘んでいた。
エドワードではないが、そろそろ潰れる輩も出てきているというのに、本当に飄々としたものだ。
「私があの三人の話を聞いていた所で理解できる訳ないじゃないですか。クロードさんは凄いですよ」
そんな事を言って、ふともう一度そちらを見やるとクロードと目が合った。
クロードはブラックに「少し席を外す」とそんな素振りをして、ふらりとこちらへ歩いてくる。そのクロードの行動に、何故だか慌てたスタールが腰を浮かした。
「ちょっとスタール、どこ行くんですか」
「厠だ、厠」
「そんな事言って、逃げようとしてるのバレバレですよ」
「俺、あの人苦手なんだよ。後は任せた」
そう言って、スタールはいそいそと本当に厠の方へと歩いて行ってしまう。
そうこうする内にやって来たクロードは、そのスタールの後姿を見やって「また逃げられてしまいましたね……」と零すように呟いた。
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