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第一章
初めて魔術を使ってみました
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「じゃあとりあえず、あそこの的に向かって撃ってみようか」
そう言ってルーファウスは基本の四つのエレメンタルの攻撃魔術をやって見せてくれた。ちなみに先程僕が壊してしまった的はいつの間には元に戻ってた。どうやらこの修練場自体に修復の魔術が施されているらしくて壊れても自動修復されるらしい。凄いな魔法、便利だな魔法。
ルーファウスが教えてくれたのは、土魔法は『砂弾』で落ちている小さな石や砂利を敵に打ち込む魔術。水魔法は『水球』で水の塊を相手にぶつける魔術。風魔法は『風刃』でかまいたちのように風の刃を相手にぶつけて攻撃する魔術。火魔法は『火球』で水球の火バージョンという感じ。
四つとも基礎中の基礎の魔術なので攻撃力は低いのだが、この四つに新たな術式を加える事でより強力な魔術を発動する事ができるようになるらしい。だからこの四つは絶対に覚えた方がいいと言われた。
「術式っていうのはさっきも言ったように式なんだ。1+1が2になるのが計算式では当たり前なように、魔術も術式で出来ている。例えば砂弾なら砂+弾、水球なら水水+弾って具合だね」
なるほど、術式っていうのはそういう事か。確かに種火を熾したいのなら「火」だけがあればいい。これは魔法。それに加えて形状変化という名の「球」という術式が加わり「火球」って、感じなんだな。
それにしてもルーファウスは仕組みと理論だけを説明してやってみろと言う。もしかして教える事に向いてない人? そんな説明じゃ何をどうしていいのか分からないよ……
「出来る奴はそれだけで出来ちまうから説明が雑なんだよなぁ」
僕が戸惑っていると、またしてもアランが口を挟んできた。そういえばさっきもアランの言った通りにやったら出来たんだった。どちらかと言うとルーファウスよりもアランの方が人に物を教える事は得意なのかもな。
それに出来る人は説明が雑って言うのも何だかとてもよく分かる。本人は何も考えずに出来てしまうから、出来ない事が逆に分らなくて、何故出来ない? と言われてしまうのだ。僕の前世の上司がそんな感じだった。
上司は悪い人ではなかったが、業務の幾つかで何故出来ないのかが分からないという顔をされる事が多々あって本気で困った事が何度もある。
「俺が扱えるの火魔法だけだから火球で説明するけど、まずはさっきみたいに身体の中で魔力を感じる、そんでもって今度はそれにその辺を漂っている火の魔力を取り込んで練る、そして、投げる! 俺は術式はよく分からん、ずっとこのやり方でやってきたから、これ以外の方法を知らない」
アランが目の前でやってくれた動きはルーファウスよりゆっくりで、分かりやすい。掌で魔力をためる感じも、それに火を纏わせる過程も見せてもらえて僕は思わず拍手した。
さっきルーファウスも一通りやって見せてくれたけど、詠唱? 技名? を呟くと同時に魔術が放たれていたので仕組みがさっぱり分からなかったのだ。
火球を放つ際に「ファイアーボール」と言い放つのはそれが詠唱にあたるのだろうか? アランはそれを行わなかったけれど、ちゃんと火球は放たれていた。ただルーファウスの放った火球に比べて勢いはほぼないし、消えるのも早かった。これは使い手の差? なのか?
「アラン、普段使わないからと言って無詠唱では威力が半減しますよ」
「ちゃんとした戦闘の時はちゃんとするからいいだろ」
やはり技名は詠唱にあたるのか……でもそれがあるからと言って何が変わるというのだろうか?
「詠唱ってそんなに大事な事なんですか?」
「この程度の簡単な技なら別に無詠唱でも構わないけど、複雑になればなるほど威力が違ってくるよ、だからひとつひとつの詠唱を覚えるのは基本だし、魔術師にとっては大事な事だよ」
へぇ……そんなモノなのか。
僕はアランが教えてくれたように掌に魔力をためる。今度は目を瞑らずに的をちゃんと見て火の魔力を練り込むイメージ、そして詠唱。
「ファイアーボール!」
言われた通りに掌の魔力を投げたらちゃんと魔力は火を纏って的目がけて飛び出した……けれど、的に届かず霧散する。
「……あれ?」
さっきとやってる事は一緒なのに、なんで今度はさっきみたいな威力が出ないんだ? 僕は自分の掌を見つめる。
不思議に思ったのは僕だけではなかったようで、アランも「なんで?」と小首を傾げ、ルーファウスは難しい顔で腕を組み無言のままだ。
「さっきのはまぐれだったのかもなぁ。他のもやってみたらどうだ?」
アランに促され、それぞれ他の属性も試してみたのだが、結果はどれも同じ、ヘロヘロっと掌から飛んで行って、ギリギリ的に届くか届かないかという辺りで霧散する。とてもしょぼい。
唯一水魔法の「ウォーターボール」だけは的を破壊するほどの威力はないけれど、ちゃんと的に届いてガッツポーズだ。
「まぁ、ギリギリ及第点なんじゃねぇの? 使えてる事は使えてるしな。こっから先は訓練次第だ」
アランがぽんっと僕の頭を撫でた。これで一応及第点? 冒険者登録試験受けられる? ルーファウスも「そうですね」と頷きつつもやはり浮かない表情。僕、何かルーファウスの気に障るような事したのかな?
「あの、ルーファウスさん……?」
僕が彼を見上げると、その顔が余程不安げに見えたものか、彼ははっとしたような表情で屈み、僕の目線に視線を下げて「これで試験はばっちりですよ」と笑みを浮かべた。
そのまま僕は冒険者試験の受験をカウンターで受け付けてもらう。カウンターに居た受付のお姉さんはとても美人で親切だった。
「試験は明日、午前に筆記試験、午後に実技試験になります。実技の選択は魔術で大丈夫?」
にこりと笑顔で問われて僕は「はい!」と良い子のお返事だ。「坊や小さいのにしっかりしてるわね」とおやつまで貰ってしまった。
ははは、本当に何処に行っても子供扱いだな。まぁ、見た目も身分証も10歳なのだから当然なのだが、中身は40のおっさんなんだけどな!
「さて、今日はもう日も暮れるな。タケルはどのみち金も泊まる場所もないんだろ?」
「はい、そうですね。でも冒険者ギルドは一日中開いてるみたいなんで、その辺で適当に夜明かしします!」
そんな風に元気に答えたら「お前は馬鹿か!」とアランに首根っこを引っ掴まれた。
「確かにここは夜通しやってるけど深夜になればガラの悪い冒険者だってやってくる、子供が夜明かしなんてするもんじゃない」
「え……でも、僕、宿に泊まるお金持ってないですし……」
「それも分かってる、だけどほっとけるか、なぁ、ルーファウス……ん? おい! ルーファウス!」
何事か考え込んでいる様子で僕達の話をまるで聞いていなかったのだろうルーファウスがはっとしたようにこちらを見た。
「えっと? なんですか?」
「タケルがここで夜明かしするって言うから、ほっとけるかって言ってたとこ。俺らの部屋連れてくけど別に良いよな?」
「ああ、それは構いませんよ。ですが私はちょっと調べものをする用事ができました」
「あ? 調べもの?」
「はい、ですから先に戻っていてください」
それだけ告げるとルーファウスは踵を返す。アランは「なんだあいつ?」と首を傾げつつも「まぁいいか」と、またしても僕を抱き上げた。
「わ! アランさんっ、僕、自分で歩けますって!」
「幾らこの街が治安が良いといっても夜は危ないしな、迷子のお坊ちゃまの迷子防止だ」
そんな事を言ってアランはすたすたと歩き始める。確かに僕の職業はまだ『迷子』のままだし、迷子の坊ちゃんなのはあながち間違いではないけれど……
機嫌の良さそうなアランは僕をおろしてくれる気はまるでないようで、僕は成す術もなく大人しくアランの腕の中で流れる街の景色を眺めていた。
街の景色は僕が今まで見ていた景色とはまるで違う。どこか西洋的な佇まいと多種多様な人種の人々を眺めて、ここは僕の知る世界とは違う場所なのだなと僕は改めて思った。
そう言ってルーファウスは基本の四つのエレメンタルの攻撃魔術をやって見せてくれた。ちなみに先程僕が壊してしまった的はいつの間には元に戻ってた。どうやらこの修練場自体に修復の魔術が施されているらしくて壊れても自動修復されるらしい。凄いな魔法、便利だな魔法。
ルーファウスが教えてくれたのは、土魔法は『砂弾』で落ちている小さな石や砂利を敵に打ち込む魔術。水魔法は『水球』で水の塊を相手にぶつける魔術。風魔法は『風刃』でかまいたちのように風の刃を相手にぶつけて攻撃する魔術。火魔法は『火球』で水球の火バージョンという感じ。
四つとも基礎中の基礎の魔術なので攻撃力は低いのだが、この四つに新たな術式を加える事でより強力な魔術を発動する事ができるようになるらしい。だからこの四つは絶対に覚えた方がいいと言われた。
「術式っていうのはさっきも言ったように式なんだ。1+1が2になるのが計算式では当たり前なように、魔術も術式で出来ている。例えば砂弾なら砂+弾、水球なら水水+弾って具合だね」
なるほど、術式っていうのはそういう事か。確かに種火を熾したいのなら「火」だけがあればいい。これは魔法。それに加えて形状変化という名の「球」という術式が加わり「火球」って、感じなんだな。
それにしてもルーファウスは仕組みと理論だけを説明してやってみろと言う。もしかして教える事に向いてない人? そんな説明じゃ何をどうしていいのか分からないよ……
「出来る奴はそれだけで出来ちまうから説明が雑なんだよなぁ」
僕が戸惑っていると、またしてもアランが口を挟んできた。そういえばさっきもアランの言った通りにやったら出来たんだった。どちらかと言うとルーファウスよりもアランの方が人に物を教える事は得意なのかもな。
それに出来る人は説明が雑って言うのも何だかとてもよく分かる。本人は何も考えずに出来てしまうから、出来ない事が逆に分らなくて、何故出来ない? と言われてしまうのだ。僕の前世の上司がそんな感じだった。
上司は悪い人ではなかったが、業務の幾つかで何故出来ないのかが分からないという顔をされる事が多々あって本気で困った事が何度もある。
「俺が扱えるの火魔法だけだから火球で説明するけど、まずはさっきみたいに身体の中で魔力を感じる、そんでもって今度はそれにその辺を漂っている火の魔力を取り込んで練る、そして、投げる! 俺は術式はよく分からん、ずっとこのやり方でやってきたから、これ以外の方法を知らない」
アランが目の前でやってくれた動きはルーファウスよりゆっくりで、分かりやすい。掌で魔力をためる感じも、それに火を纏わせる過程も見せてもらえて僕は思わず拍手した。
さっきルーファウスも一通りやって見せてくれたけど、詠唱? 技名? を呟くと同時に魔術が放たれていたので仕組みがさっぱり分からなかったのだ。
火球を放つ際に「ファイアーボール」と言い放つのはそれが詠唱にあたるのだろうか? アランはそれを行わなかったけれど、ちゃんと火球は放たれていた。ただルーファウスの放った火球に比べて勢いはほぼないし、消えるのも早かった。これは使い手の差? なのか?
「アラン、普段使わないからと言って無詠唱では威力が半減しますよ」
「ちゃんとした戦闘の時はちゃんとするからいいだろ」
やはり技名は詠唱にあたるのか……でもそれがあるからと言って何が変わるというのだろうか?
「詠唱ってそんなに大事な事なんですか?」
「この程度の簡単な技なら別に無詠唱でも構わないけど、複雑になればなるほど威力が違ってくるよ、だからひとつひとつの詠唱を覚えるのは基本だし、魔術師にとっては大事な事だよ」
へぇ……そんなモノなのか。
僕はアランが教えてくれたように掌に魔力をためる。今度は目を瞑らずに的をちゃんと見て火の魔力を練り込むイメージ、そして詠唱。
「ファイアーボール!」
言われた通りに掌の魔力を投げたらちゃんと魔力は火を纏って的目がけて飛び出した……けれど、的に届かず霧散する。
「……あれ?」
さっきとやってる事は一緒なのに、なんで今度はさっきみたいな威力が出ないんだ? 僕は自分の掌を見つめる。
不思議に思ったのは僕だけではなかったようで、アランも「なんで?」と小首を傾げ、ルーファウスは難しい顔で腕を組み無言のままだ。
「さっきのはまぐれだったのかもなぁ。他のもやってみたらどうだ?」
アランに促され、それぞれ他の属性も試してみたのだが、結果はどれも同じ、ヘロヘロっと掌から飛んで行って、ギリギリ的に届くか届かないかという辺りで霧散する。とてもしょぼい。
唯一水魔法の「ウォーターボール」だけは的を破壊するほどの威力はないけれど、ちゃんと的に届いてガッツポーズだ。
「まぁ、ギリギリ及第点なんじゃねぇの? 使えてる事は使えてるしな。こっから先は訓練次第だ」
アランがぽんっと僕の頭を撫でた。これで一応及第点? 冒険者登録試験受けられる? ルーファウスも「そうですね」と頷きつつもやはり浮かない表情。僕、何かルーファウスの気に障るような事したのかな?
「あの、ルーファウスさん……?」
僕が彼を見上げると、その顔が余程不安げに見えたものか、彼ははっとしたような表情で屈み、僕の目線に視線を下げて「これで試験はばっちりですよ」と笑みを浮かべた。
そのまま僕は冒険者試験の受験をカウンターで受け付けてもらう。カウンターに居た受付のお姉さんはとても美人で親切だった。
「試験は明日、午前に筆記試験、午後に実技試験になります。実技の選択は魔術で大丈夫?」
にこりと笑顔で問われて僕は「はい!」と良い子のお返事だ。「坊や小さいのにしっかりしてるわね」とおやつまで貰ってしまった。
ははは、本当に何処に行っても子供扱いだな。まぁ、見た目も身分証も10歳なのだから当然なのだが、中身は40のおっさんなんだけどな!
「さて、今日はもう日も暮れるな。タケルはどのみち金も泊まる場所もないんだろ?」
「はい、そうですね。でも冒険者ギルドは一日中開いてるみたいなんで、その辺で適当に夜明かしします!」
そんな風に元気に答えたら「お前は馬鹿か!」とアランに首根っこを引っ掴まれた。
「確かにここは夜通しやってるけど深夜になればガラの悪い冒険者だってやってくる、子供が夜明かしなんてするもんじゃない」
「え……でも、僕、宿に泊まるお金持ってないですし……」
「それも分かってる、だけどほっとけるか、なぁ、ルーファウス……ん? おい! ルーファウス!」
何事か考え込んでいる様子で僕達の話をまるで聞いていなかったのだろうルーファウスがはっとしたようにこちらを見た。
「えっと? なんですか?」
「タケルがここで夜明かしするって言うから、ほっとけるかって言ってたとこ。俺らの部屋連れてくけど別に良いよな?」
「ああ、それは構いませんよ。ですが私はちょっと調べものをする用事ができました」
「あ? 調べもの?」
「はい、ですから先に戻っていてください」
それだけ告げるとルーファウスは踵を返す。アランは「なんだあいつ?」と首を傾げつつも「まぁいいか」と、またしても僕を抱き上げた。
「わ! アランさんっ、僕、自分で歩けますって!」
「幾らこの街が治安が良いといっても夜は危ないしな、迷子のお坊ちゃまの迷子防止だ」
そんな事を言ってアランはすたすたと歩き始める。確かに僕の職業はまだ『迷子』のままだし、迷子の坊ちゃんなのはあながち間違いではないけれど……
機嫌の良さそうなアランは僕をおろしてくれる気はまるでないようで、僕は成す術もなく大人しくアランの腕の中で流れる街の景色を眺めていた。
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皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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