童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

矢の字

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第一章

異世界生活一日目終了

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「皆気の良い奴ばっかだろ」
「はい、とても良くしてもらいました」

 まぁ、お酒の飲み方には一言モノ申したくはあるけれど……
 アランは終始ニコニコしている。たぶん彼等の事が大好きなのだろうな。

「それにしてもルーファウスの奴、結局帰ってこなかったな。調べものとか言っていたが、何処で何をしているのやら」

 そういえばそうだ、ルーファウスもここに暮らしているというのなら、時間もだいぶ遅い時間になっているし帰宅していても不思議じゃない。なのに、ルーファウスの姿は見えない。

「うん、やっぱ戻ってない」

 連れられて向かった部屋の中を覗き込んでアランはもう一度首を傾げる。

「お二人は同じ部屋で暮らしているんですか?」
「まぁ、その方が割安だからな。ここには最大で6人部屋まである。とは言え6人部屋なんてプライベート皆無だからお薦めはしないけどな」

 先程ラナさん達が教えてくれた宿泊費はどの部屋の宿泊費だったのだろう? 一番安い6人部屋の値段だとしたら、プライベートはなしか……まぁ、それでも屋根のある場所でベッドの上で寝られるだけマシという感じなのだろうな。
 連れて来られた部屋は2人部屋、当然もう一つの寝床はルーファウスのものだろう。
 部屋の中はシンプルで、例えるのならば簡易ビジネスホテルのような感じだった。トイレ等の水回りは共用で、部屋は本当に寝るだけの場所、申し訳程度にクローゼットもあるけれど設備としてはそれだけだ。

「あの、ここってお風呂とかあるんですか……?」

 廊下を歩きながらトイレ、洗面所、洗濯場の場所は教えてもらえたが、そういえば浴場の場所は聞いてない。綺麗好きな日本人としては風呂はなくてもせめてシャワー室くらいは完備していて欲しい所なのだが……お姉さんたちからは凄く良い匂いがしていたのできっとあると信じてアランに尋ねてみたものの答えはNO。

「大きな宿屋には浴場付きってとこもあるけど、ここにはないな。冒険者はそもそも『洗浄クリーン』でどうにかしちまうからな」
「クリーン……?」
「これも生活魔法のひとつなんだが、服や身体の汚れを落とす魔法。できない奴は洗濯場で水浴びだ」

 まさかの! そんなとこまで魔法頼みか! 確かに魔法で汚れは落とせても体力回復効果まではないだろう? 疲れた身体を温かい湯に浸して癒す、それがお風呂! お風呂はとても大事だよ!!
 あからさまにがっかりしたような表情をしていたらしい僕にアランは「タケルは本当に良い家の生まれなんだな」と苦笑した。

「普通、庶民の家に風呂なんてないもんだ。それが当たり前にあると思っている時点でタケルの元々の生活水準が高いのが分かる。本当に何も思い出せないのか?」

 僕は慌てて首を縦に振る。まさかの風呂で良家の子扱いされるとは思わなかった。

「街の中には大衆浴場もある。どうしても行きたかったら、そういうのを利用すればいい」

 そんな事を言いながらアランは僕に洗浄魔法をかけてくれた。確かに目に見えて匂いは薄くなったしさっぱりしたけど、やはり少し物足りない。
 アランは「さあ、もう子供は寝る時間だ」と、僕をベッドへと促す。でも、ちょっと待って、これはもしや僕はアランと同じベッドで寝る流れ? いや確かに他に寝る場所なんてないけれども!
 現在ルーファウスのベッドは開いている、けれど本人不在のままそこを占拠する訳にはいかない。ベッドのサイズは大きいしアランと子供姿の僕が二人で寝られるくらいの余裕はある、だからこれは当然の成り行きかもしれないけれど、それでも戸惑いがない訳ではない。だって見た目は子供でも僕の中身は40のおっさんなんだから! これで相手がラナさん達だったら「はい、喜んで!」だったけれども、相手はアラン……アランも僕の真実を知ったらきっと嫌な顔するだろうな。

「なんだよ、遠慮してるのか? 子供が遠慮なんてするもんじゃないぞ」

 アランが僕の腕を引く。分かってる、これは好意、無下にはできない。
 僕はアランの横にちょこんと収まり薄い掛布団をかける。横向きに寝転がったアランは何故かニコニコと笑みを浮かべて、ポンポンと僕の腹辺りに手を乗せ寝かしつけの態勢だ。一体これはどういう状況!?

「こういうの懐かしいなぁ」

 懐かしいってなに!? もしかしてアランは寝かしつけに慣れてるのか?? 兄弟多かったのかな?
 部屋の明かりが消されて、穏やかなアランの手はずっと一定間隔のリズムで僕の腹を撫でている。気持ち的にはむず痒いのだけれど、そのリズムはどうにも眠気を誘う。
 今日は色々あったなぁ……そういえば今日は僕の誕生日だ。異世界生活一日目、新しい人生も一日目、最初はどうなる事かと思ったけれど意外と人生どうとでもなるもんなんだな。
 そんな事をうつらうつらと考えていたら次第に瞼が重くなり、僕は深い眠りに落ちていった。

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