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第一章
ルーファウスの奇行
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冒険者ギルド登録試験に合格して帰ったシェアハウスは、僕達が帰りついた時には何故か既に「合格おめでとう!」の垂れ幕と共に宴会の準備が始まっていた。
いや、ちょっと待って? なにこれ?
「ここは冒険者の集うシェアハウス、新たなる冒険者が誕生したなら祝うのが筋ってもんだろう?」
そう言って酒を準備しているのは昨夜も確かここで酔い潰れていたはずの人だ。宴会の準備をしている他のメンバーの顔にも見覚えがあるし、あれよあれよという間にお誕生日席に座らされ、「おめでとう!」の大合唱、その後は皆各々飲み始めてしまって、気付けば昨晩と同じ様相……これって僕の試験合格を肴に飲みたかっただけなのでは!?
「ホント、皆さん好きですねぇ……」
ルーファウスが呆れたように僕の傍らでグラスを傾けている。アランは他の冒険者仲間と完全に宴会モードなのだが、僕とルーファウスは完全にアウェーな空気。
「ルーファウスさんはあまりこういう場は好きではない感じですか?」
「まぁ、付き合い程度かな。あまりお酒に強くなくてね」
そう言ってルーファウスは酒の肴を摘まみながら「安酒は悪酔いするんだよ」と溜息を零した。
「タケルはああいう駄目な大人になったらダメだからね」
「ははは、気を付けます」
まぁ、元々酒は強くない上にこういうテンションにはいまいち付いて行けない僕は頷く。
盛り上がる面々を眺めつつ僕は食事に専念する、そしてその隣でルーファウスは綺麗な色の果実酒を「今日のこの果実酒は口当たりが良くて意外といける」と言いながら何杯か飲み進めた所で段々と無口になっていった。
昨晩は僕を構い倒してくれたラナさん達も何故か今日はこちらへと寄って来てくれないし、もう僕達はお開きにして部屋に戻った方がいいのかな。
「ルーファウスさん、あの……大丈夫ですか? 部屋戻ります?」
「ん~……」
無口になったと思ったら今度はグラグラと横揺れしだしたルーファウスに僕は慌てる。
「あ~もしかして、ルーファウス結構飲んだのか?」
僕が慌てているとそれに気付いたのかアランが苦笑しながら僕の方にやって来た。
「あの、ルーファウスさん大丈夫ですか? 部屋で寝かせた方が……」
「いつもの事だから大丈夫、たぶんそのうち覚醒する」
そう言ってアランは「面白いからそのままほっとけ」と笑いながら行ってしまった。
それにしても面白いってどういう事? そのまま倒れ込んでしまいそうなルーファウスを支えるように横に座ったら、ルーファウスはこてんと横になり僕の膝を膝枕にして寝てしまった。どうしよう、身動きが取れない……
そういえば昨夜は帰りも遅かったし、あまり寝ていないのかもしれないな、と何とはなしに頭を撫でていたらルーファウスの瞳がぱかりと開いた。
「あ、目が覚めまし……」
「もっと」
僕の言葉に被せるようにルーファウスが食い気味に何かを要求してきた。
「? 何ですか?」
「もっと、撫でて」
「……はい?」
「もっと、もっと、僕を愛して!」
ふぁ!? ルーファウスが壊れた!?
唐突にぎゅっと腰に抱きつかれ、僕は完全にルーファウスの腕の中に囚われてしまう。けれどそんな僕を遠巻きに、酔っ払いたちがこっちを見て「始まったな、ルーファウスの愛の劇場」「ウケる!」と、ゲラゲラと笑いだした。
何それ!? ちょっと、これどういう事?? 笑ってないで助けてよ!
「ねぇ、君も僕を愛してくれないのかい? どうして僕を置いて行くの?」
「え? は? いや、置いて行くも何も……」
「ひどい、やっぱり君も僕を置いて行くんだね!」
そう言ってルーファウスはぎゅうぎゅうと抱きつく腕の力を強めておいおいと涙を零して泣き出した。
ちょっと、これ泣き上戸? そんな話聞いてない! しかも意味分からない難癖付けながら無駄に綺麗な泣き顔で見詰めてくるなんて、こっちが悪い事してる気持ちになるじゃないか!
周りの酔っ払い共はゲラゲラ笑っていて助けてくれる気は全くなさそうに見える。もしかしてルーファウスの言ってた悪酔いってこういう事か? こうなるのが分かっていたから皆最初から僕達に近寄ってこなかったのか!
「落ち着いてくださいルーファウスさん、僕は何処にも行きませんし、絶対置いて行ったりもしないので泣かないで」
「ううう、本当に? 君はずっと僕の傍に居てくれる?」
「えっと、まぁ……善処します」
酔っ払い相手なのでそこは断言してやれば良いのかもしれないのだが、出来ない約束は酒の席でもするものではないという理性が働き言葉を濁したらまた大泣きされた。これどうすればいいんだよ……
人称も「私」から「僕」に変わってるし、子供返り? 子供の時に誰かに置き去りにされた事でもあるのかな?
僕に抱きつき泣き続けるルーファウスの頭を撫でて、僕は仕方がないなと息を吐く。こういうシチュエーション、わりと今までも何度か経験したことあるんだよね、僕。
「ルーファウスさん、泣かないで。僕はあなたを置いて行ったりはしませんよ。一緒に部屋に戻りましょうね、僕はあなたの傍に居ます。今日はもう寝て、明日またゆっくりお話ししましょうね」
「うう……ね、寝てる間に僕を置いてったりしない?」
「しませんよ、何なら手を繋いで一緒に寝ましょうか?」
しばらくぼんやり僕を見ていたルーファウスがこくりと頷き、瞬間ざわりと空気が揺れた。
「あのルーファウスが大人しくなった……?」
「え? あの子何者?」
酔っ払いたちが何故かぽかんとしたような顔でこちらを見ている。
なに、その反応? 僕、そんなに驚くような事したかな? ってか、少しは助けてくれてもいいんですよ、皆さん。
ルーファウスを促すと千鳥足ながらも自力で立てるようなのでホッとした。抱きかかえて連れて行くには今の僕では少しばかり荷が重すぎる。
手を繋いで歩き出したらルーファウスは大人しくついて来たので、僕は「お先に失礼します」と、ぺこりと頭だけ下げて宴会場を後にした。
「君の名前は、なんだっけ?」
「ふふ、忘れちゃったんですか? 僕の名前はタケルですよ、ルーファウスさん」
「そっか、タケル……」
そのまま部屋に戻って、その晩は約束通りにルーファウスのベッドで手を繋いで一緒に寝た。ルーファウスの寝顔はまるで子供みたいだったよ。
ルーファウスの寝顔を眺めながら僕は考える。新しい世界で送る新しい人生、くたびれた40歳のおじさんだった僕が10歳の子供に戻ってしまった。僕はずいぶん小さくなってしまった自分の掌を見やる。
僕はこの世界で自分の好きなように生きていいのだろうか……?
今までだってやりたい事はたくさんあった、旅行だってしたかった、恋愛だってしたかった、時間を気にせず飲み歩いて友達と遊び倒してみたかった。
今の僕ならそれができる。
現在年齢はまだ10歳なので大人の遊び方はできないけれど、僕は失ってしまった僕の青春を取り戻す事ができるのだ。
何をする? 何をしたい……? 冒険者登録は無事に済んでいる、だったら冒険の旅に出る事だって出来るはず。現在まだ路銀のない無一文状態なので、まずはコツコツ依頼をこなす所から始めないといけないが、自分で決めて自分の為にする仕事を僕は苦だと思わない。
何故だか顔がにやけるのを感じる。
本当はもう、自分の人生を諦めかけていた。人間100歳まで生きる時代、40代なんて人生もまだ半ばじゃないか、これからこれから、なんて言われた所でそんなモノは気休めにしかならない。
失った20代30代は戻ってこないし、その時にしか出来なかった事はいくらでもあった。だけど僕はその失った時間を取り戻す事ができるのだ。
「ふふふふふ、明日から頑張るぞー」
僕はベッドに頭を沈め、明日から何をしようか想いを馳せる。僕は自由だ何でもできる、僕はとてもワクワクしていた。こんな気持ちは小学生の頃の遠足前日以来かもしれない。ああ、でもそういえば僕の今の年齢はそれこそ小学生そのものじゃないか!
こんな子供の姿で異世界に放り出されてどうしようかと思っていたけれど、僕はもうワクワクが止まらなくなっていた。
いや、ちょっと待って? なにこれ?
「ここは冒険者の集うシェアハウス、新たなる冒険者が誕生したなら祝うのが筋ってもんだろう?」
そう言って酒を準備しているのは昨夜も確かここで酔い潰れていたはずの人だ。宴会の準備をしている他のメンバーの顔にも見覚えがあるし、あれよあれよという間にお誕生日席に座らされ、「おめでとう!」の大合唱、その後は皆各々飲み始めてしまって、気付けば昨晩と同じ様相……これって僕の試験合格を肴に飲みたかっただけなのでは!?
「ホント、皆さん好きですねぇ……」
ルーファウスが呆れたように僕の傍らでグラスを傾けている。アランは他の冒険者仲間と完全に宴会モードなのだが、僕とルーファウスは完全にアウェーな空気。
「ルーファウスさんはあまりこういう場は好きではない感じですか?」
「まぁ、付き合い程度かな。あまりお酒に強くなくてね」
そう言ってルーファウスは酒の肴を摘まみながら「安酒は悪酔いするんだよ」と溜息を零した。
「タケルはああいう駄目な大人になったらダメだからね」
「ははは、気を付けます」
まぁ、元々酒は強くない上にこういうテンションにはいまいち付いて行けない僕は頷く。
盛り上がる面々を眺めつつ僕は食事に専念する、そしてその隣でルーファウスは綺麗な色の果実酒を「今日のこの果実酒は口当たりが良くて意外といける」と言いながら何杯か飲み進めた所で段々と無口になっていった。
昨晩は僕を構い倒してくれたラナさん達も何故か今日はこちらへと寄って来てくれないし、もう僕達はお開きにして部屋に戻った方がいいのかな。
「ルーファウスさん、あの……大丈夫ですか? 部屋戻ります?」
「ん~……」
無口になったと思ったら今度はグラグラと横揺れしだしたルーファウスに僕は慌てる。
「あ~もしかして、ルーファウス結構飲んだのか?」
僕が慌てているとそれに気付いたのかアランが苦笑しながら僕の方にやって来た。
「あの、ルーファウスさん大丈夫ですか? 部屋で寝かせた方が……」
「いつもの事だから大丈夫、たぶんそのうち覚醒する」
そう言ってアランは「面白いからそのままほっとけ」と笑いながら行ってしまった。
それにしても面白いってどういう事? そのまま倒れ込んでしまいそうなルーファウスを支えるように横に座ったら、ルーファウスはこてんと横になり僕の膝を膝枕にして寝てしまった。どうしよう、身動きが取れない……
そういえば昨夜は帰りも遅かったし、あまり寝ていないのかもしれないな、と何とはなしに頭を撫でていたらルーファウスの瞳がぱかりと開いた。
「あ、目が覚めまし……」
「もっと」
僕の言葉に被せるようにルーファウスが食い気味に何かを要求してきた。
「? 何ですか?」
「もっと、撫でて」
「……はい?」
「もっと、もっと、僕を愛して!」
ふぁ!? ルーファウスが壊れた!?
唐突にぎゅっと腰に抱きつかれ、僕は完全にルーファウスの腕の中に囚われてしまう。けれどそんな僕を遠巻きに、酔っ払いたちがこっちを見て「始まったな、ルーファウスの愛の劇場」「ウケる!」と、ゲラゲラと笑いだした。
何それ!? ちょっと、これどういう事?? 笑ってないで助けてよ!
「ねぇ、君も僕を愛してくれないのかい? どうして僕を置いて行くの?」
「え? は? いや、置いて行くも何も……」
「ひどい、やっぱり君も僕を置いて行くんだね!」
そう言ってルーファウスはぎゅうぎゅうと抱きつく腕の力を強めておいおいと涙を零して泣き出した。
ちょっと、これ泣き上戸? そんな話聞いてない! しかも意味分からない難癖付けながら無駄に綺麗な泣き顔で見詰めてくるなんて、こっちが悪い事してる気持ちになるじゃないか!
周りの酔っ払い共はゲラゲラ笑っていて助けてくれる気は全くなさそうに見える。もしかしてルーファウスの言ってた悪酔いってこういう事か? こうなるのが分かっていたから皆最初から僕達に近寄ってこなかったのか!
「落ち着いてくださいルーファウスさん、僕は何処にも行きませんし、絶対置いて行ったりもしないので泣かないで」
「ううう、本当に? 君はずっと僕の傍に居てくれる?」
「えっと、まぁ……善処します」
酔っ払い相手なのでそこは断言してやれば良いのかもしれないのだが、出来ない約束は酒の席でもするものではないという理性が働き言葉を濁したらまた大泣きされた。これどうすればいいんだよ……
人称も「私」から「僕」に変わってるし、子供返り? 子供の時に誰かに置き去りにされた事でもあるのかな?
僕に抱きつき泣き続けるルーファウスの頭を撫でて、僕は仕方がないなと息を吐く。こういうシチュエーション、わりと今までも何度か経験したことあるんだよね、僕。
「ルーファウスさん、泣かないで。僕はあなたを置いて行ったりはしませんよ。一緒に部屋に戻りましょうね、僕はあなたの傍に居ます。今日はもう寝て、明日またゆっくりお話ししましょうね」
「うう……ね、寝てる間に僕を置いてったりしない?」
「しませんよ、何なら手を繋いで一緒に寝ましょうか?」
しばらくぼんやり僕を見ていたルーファウスがこくりと頷き、瞬間ざわりと空気が揺れた。
「あのルーファウスが大人しくなった……?」
「え? あの子何者?」
酔っ払いたちが何故かぽかんとしたような顔でこちらを見ている。
なに、その反応? 僕、そんなに驚くような事したかな? ってか、少しは助けてくれてもいいんですよ、皆さん。
ルーファウスを促すと千鳥足ながらも自力で立てるようなのでホッとした。抱きかかえて連れて行くには今の僕では少しばかり荷が重すぎる。
手を繋いで歩き出したらルーファウスは大人しくついて来たので、僕は「お先に失礼します」と、ぺこりと頭だけ下げて宴会場を後にした。
「君の名前は、なんだっけ?」
「ふふ、忘れちゃったんですか? 僕の名前はタケルですよ、ルーファウスさん」
「そっか、タケル……」
そのまま部屋に戻って、その晩は約束通りにルーファウスのベッドで手を繋いで一緒に寝た。ルーファウスの寝顔はまるで子供みたいだったよ。
ルーファウスの寝顔を眺めながら僕は考える。新しい世界で送る新しい人生、くたびれた40歳のおじさんだった僕が10歳の子供に戻ってしまった。僕はずいぶん小さくなってしまった自分の掌を見やる。
僕はこの世界で自分の好きなように生きていいのだろうか……?
今までだってやりたい事はたくさんあった、旅行だってしたかった、恋愛だってしたかった、時間を気にせず飲み歩いて友達と遊び倒してみたかった。
今の僕ならそれができる。
現在年齢はまだ10歳なので大人の遊び方はできないけれど、僕は失ってしまった僕の青春を取り戻す事ができるのだ。
何をする? 何をしたい……? 冒険者登録は無事に済んでいる、だったら冒険の旅に出る事だって出来るはず。現在まだ路銀のない無一文状態なので、まずはコツコツ依頼をこなす所から始めないといけないが、自分で決めて自分の為にする仕事を僕は苦だと思わない。
何故だか顔がにやけるのを感じる。
本当はもう、自分の人生を諦めかけていた。人間100歳まで生きる時代、40代なんて人生もまだ半ばじゃないか、これからこれから、なんて言われた所でそんなモノは気休めにしかならない。
失った20代30代は戻ってこないし、その時にしか出来なかった事はいくらでもあった。だけど僕はその失った時間を取り戻す事ができるのだ。
「ふふふふふ、明日から頑張るぞー」
僕はベッドに頭を沈め、明日から何をしようか想いを馳せる。僕は自由だ何でもできる、僕はとてもワクワクしていた。こんな気持ちは小学生の頃の遠足前日以来かもしれない。ああ、でもそういえば僕の今の年齢はそれこそ小学生そのものじゃないか!
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めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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