童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

矢の字

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第一章

一夜明け

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 昨晩のルーファウスの奇行からの目覚め、人の動く気配に続き朝日を顔に浴びて目覚めたらルーファウスがベッド脇で土下座してたよ。
 え? なにこれ、怖い!

「あ、あの……ルーファウスさん、何してるんですか?」
「なんか、全然覚えてないんだけど、朝起きたら君が隣に寝ていて、ぼ……私は昔から酒癖が悪いと皆に言われているし、昨晩の記憶が途中で途切れていて……もしかしたら、私は何か君に無体を働いたのではないかと、いや、たぶんしてない……してないと思うけど、自信がない……」

 と、真っ青な顔で頭を下げられてしまった。

「最近は潰れるまで飲まないように気を付けていたんだ、だけど昨日の果実酒があんまりにも飲みやすくて、つい、飲み過ぎた……」

 ルーファウスは過去にも同じようなシチュエーションで目覚めた事が何度かあり、相手に怒られたり泣かれたり迫られたりと散々な経験をしてきたらしい。だからいつもは自制しつつ飲んでいるのだが、最近はアランがフォローを入れてくれる事もあって油断したと青い顔で僕に告げた。
 いやまぁねぇ、この綺麗な顔で昨晩みたいに泣いて縋られたら老若男女絆されてお持ち帰りしちゃうのも、されちゃうのもなんとなく分かるよ。
 昨晩「駄目な大人になってはダメだ」と注意してくれたルーファウスも、わりと駄目な大人の一人だったんだなと思って僕は笑ってしまう。

「ルーファウスさんは別に何もしてないですよ、僕が一緒に寝させて貰っただけです」
「ほ……本当に?」
「はい、だから顔を上げてください」

 おずおずと顔を上げたルーファウスの顔面は真っ青だ。

「ルーファウスさん、顔色悪いですよ」
「二日酔いで頭が割れるみたいだ……口当たりの良さに騙された、あの果実酒は最悪だ……」

 そう言ってルーファウスは床に座り込んだままベッドにぽすんと頭を預ける。まだそう長い付き合いではないけど、こんな情けない姿のルーファウスは初めてだな。

「痛いの痛いの飛んでいけ~」

 目の前に置かれているルーファウスの頭を撫でて僕が言うと、呻いていたルーファウスがしばらくして「あれ?」と驚いたような表情で顔を上げた。

「今の術式? 回復魔術? タケルは聖魔法も使えるんだっけ?」
「聖魔法にも適性はありますよ。だけど今のは魔術じゃなくてただのおまじないです。僕、前に全属性魔法に適性があるって言いませんでしたっけ?」
「全属性って言うのは四属性魔法の事を言うんだよ、それ以外の魔法は特殊魔法で、それを扱えるのは特別な力を持った者だけ……って、あれ? それを知らないで今まで全属性って言ってたの? まさかと思うけど聖魔法以外にも……?」
「闇魔法も空間魔法も適性はあるみたいですよ? 使った事はないですけど」

 ルーファウスがまたしてもぽかんとした顔でこちらを見ている。あれ? 言ってなかったっけ?

「四属性魔法を全て扱える術者はそこそこの人数いるし、それぞれ特殊魔法を単体では使える者も確かに居る、だけど全部って……君はどこまで規格外なんだい、タケル」
「規格外、ですか?」
「そうだよ! そもそも聖魔法と闇魔法は相反するものだから適性的に両方は成立しないってのが定説なのに!」

 そうなの? 神様、これちょっとやり過ぎちゃったんじゃないのかな?

「そういえば、僕のステータス見て修道女シスターさんが何処かの神子様ですか? って言ったんですよね……」
「そりゃそうだろうよ! それだけの特殊ステータス見たら、普通はそういう反応だよっ! なんで黙ってたの! ってか、この事他の人には言ってないだろうね!」
「え、まぁ、それは、言ってないですよ?」

 ルーファウスに「絶対言っちゃ駄目だから」と何度も何度も念押しされた。
 でも「言ってくれなかった」と怒りながら、「誰にも言っちゃ駄目」ってダブスタもいい所だよなぁ。でもまぁこれは僕のことを心配してくれてるんだろうから何も言うまい。何が駄目なのかさっぱり分からないけど。

「あの、それよりも僕は今日こそ冒険に出てみたいのですけど……」
「一緒に行く」
「え、」
「君みたいな危なっかしい子、一人になんてさせられませんよ!」
「いえ、でも、僕が受ける依頼はGランクの依頼ですよ。Aランク冒険者のルーファウスさんを付き合わせる訳には……」
「つべこべ言わない、君が行くと言うのなら、私は絶対について行くからね!」
「あ……はい」
「お前等、朝っぱらから騒々しいな……」

 アランがふわわと大あくびで隣のベッドで起き上がった。今日も賑やかな一日になりそうだよ。

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