童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

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第二章

街で買い物をしてみました

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「大丈夫かな、アラン」
「俺には全く話が見えなかったんだが、イライザって誰?」

 ロイドの問いに自分もよく分からない事を前置きしつつ、たぶんアランの奥さんじゃないかと伝えるとロイドもアランが既婚者だったとは思っていなかったようで、とても驚いていた。

「疾風のアランって言ったら十年も前から俺達の街で冒険者やってんのに、結婚してたんだな。そんな話、聞いた事もなかった」

 へぇ、じゃあ少なくともアランは十年くらいは王都に帰ってないって事か。確かにそれじゃあ奥さんに愛想尽かされても仕方がないのかな。
 家族に仕送りはしてるって言ってたけど、あんまり連絡してる風でもなかったし、普通何年失踪してたら婚姻関係破綻って認められるんだっけ? 僕の世界とこっちの世界ではルールが違うのだろうけど、それでも十年も経過してたら他の人と再婚は可能な気がするな。
 そこまで考えて僕はわずかに心の中に引っかかりを覚える。けれど、その引っかかりに思いを及ばす前にロイドがグイっと僕の手を取り「せっかく大きな街に来たんだ、少し観光でもしてこうぜ」と僕を引っ張った。

「勝手に出掛けちゃっていいのかな?」
「保護者の方が勝手に行っちまったんだ、俺達の責任じゃない。それに晩飯の時間までに宿に戻れば、少しくらい街を見て回ったって問題ないだろ」

 まぁ、確かに街の外へ勝手に冒険に出るわけでもなし、街の中を少し見て回るくらいなら恐らく危険はないだろうと思い、僕はロイドの提案に頷いた。
 冒険者ギルドのある通りはこの街の中でも往還道であるらしく人も多いし店も多い。僕たちはそんな往還沿いの店を覗いて回る。
 食料品、雑貨類、土産物屋など店舗を構えた店もあれば露店もたくさんあって、まるでお祭りにでも来たような賑やかさの中を僕たちははぐれないように手を繋いで歩いた。
 賑やかな通りを二人で手を繋いで見て回るなんて、これでロイドが女の子だったらちょっとデートみたいじゃないか? などという思考が微かに頭を掠めたのだが、どのお店の店員も僕たちを「仲のいい兄弟」と信じて疑わないようだったので、まぁ、そりゃそうですよね、と安堵した。
 幼い子供の手を年長者が繋いで歩くのは社会常識的にも普通の事のようなので変に考えを巡らせるのは止める事にする。妙な気を回してロイドの気遣いを無下にしては失礼だからな。
 ロイドの希望で武具の置いてある露店を覗いたら、店の端にキラキラと宝石の付いたアクセサリーが置いてあることに気が付いた。武具の店に宝飾店に置いてありそうなキラキラのアクセサリーだなんてあまり相容れないなと思い何とはなしにそれを見ていたら「欲しいのか?」とロイドに声をかけられた。

「あ、そうじゃなくて、なんで武具の店にこんな綺麗なの置いてあるのかなって不思議で」
「おっ、チビの方は見たところ魔術師か、だったらちょうどいい、それは魔法防御の魔術が付与されたれっきとした防具なんだぞ」

 と、店主が僕の疑問に答えてくれた。

「これも武具に入るんですか?」
「魔術師は元々筋力もあんまねぇし、重い装備は逆に体力を削るだろ、だからこういうのが重宝されんのさ。まぁ、普通に彼女の土産にって買って帰る冒険者も多いがな」

 なるほど、それなら納得だ。そういえばゲームの中でもアクセサリーは個別に装備枠があったりしたし、そういう意味なら確かにアクセサリーは武具である。色とりどりの宝石が煌めくアクセサリーは華麗で、無骨になりがちな装備品を思えば女性冒険者にも人気がありそうだ。

「坊ちゃん方、おひとつどうだい? まけとくぜ」

 商売っ気の強い店主が笑顔で売り込みをしてくる。けれど、今日はただの物見遊山なので僕が愛想笑いでかわそうとしたら、ロイドが不意に「これ幾ら?」と店主に問う。
 ロイドが指差したのはエメラルドっぽい石とアメジストっぽい石が繊細に配置された髪飾り。

「おっ、坊ちゃんお目が高いね、これは良い魔石を使っていて防御力も高いんだ。本来なら銀貨2枚はするとこだが、今日は特別大サービスで銀貨1枚と銅貨5枚にまけてやるよ」
「銀貨1枚に銅貨5枚か……」

 ロイドが少し難しい顔をしている。円換算でおよそ15000円だもんな、そりゃ悩むよ。家族のお土産にするにしても少し高価過ぎる気がしないでもないし。

「これ、もう少しまからない? 銀貨1枚じゃダメ?」
「ははは、さすがにそれは無理だ、その金額ならこっちだな」

 そう言って店主が見せてくれた商品はロイドが狙っている商品と比べると明らかに地味でシンプルな物でロイドは唸る。

「やっぱり、コレがいい。どうしてもまからない? 売ってくれたら俺、他の冒険者仲間にもこの店紹介しとくよ」
「はは、坊ちゃんは値引き上手だな、仕方ねぇ、銀貨1枚と銅貨3枚! これ以上はまからねぇよ」
「よし、買った!」

 おおお、凄い、結局元の値段よりだいぶ値切ったロイドに僕は心の中で拍手喝采だ。
 そもそも店で値切り交渉をするという文化のない社会で育ってきた僕は、こういうお店の人とのやり取りがあまり得意ではない。だから買い物をするにしても大体いつも言い値で購入してしまうのが常なのだけど、交渉すれば安く買い物ができる場合もあるんだな。

「毎度あり、また来いよ」

 そんな店主の愛想のいい声を背に僕たちは店を出る。

「それ、誰かにお土産?」

 何とはなしに聞いた問いにロイドが「ん」と、僕の目の前に買った髪飾りを差し出した。

「え? なに?」
「やる。お前に似合いそうだと思って買ったんだ。お前はまだ弱っちいし、こういうの必要だろ」
「や、貰えないよ、こんな高いの!」
「お前には必要だって言ってんだろ! 戦闘中に倒れられると俺もリーダーとして困るんだよ、だから黙って付けとけ!」

 そう言ってロイドはルーファウスが綺麗に纏めてくれた僕の髪にぱちんと髪飾りを留めてしまった。

「あ、ありがとう」
「行くぞ」

 ロイドは僕と視線を合わせないまま、ぶっきら棒に手を差し出す。
 う~ん、この世界の男性には貢ぎ癖でもあるのだろうか? ルーファウスといい、彼といい、僕はこんなに甘やかされていて良いものなのだろうか?
 確かに現在の僕は見た目に可愛い美少年だけど、今まで培ってきた40年の歴史を鑑み、こんな風に大事に扱われるのは何かが違うと戸惑いが隠せない。
 これも魅了スキルの高さがなせる業なのか? 美形ってそれだけで人生イージーモードなんだなと失礼にも僕は思わずにいられないのだった。

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