童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

矢の字

文字の大きさ
81 / 222
第三章

酒は飲んでも飲まれるな

しおりを挟む
 楽しく飲み始めてしまったアランとオロチ、仲良くなれて良かったよと思う一方でそんな二人を眺めて少しだけ眉を顰めているのはルーファウス。

「ルーファウス、なんでそんな難しい顔をしてるんですか?」
「いえ、これは私の勝手な感情なので……」
「何か少しでも気にかかる事があるなら我慢せずに言って欲しいです。誰かが何かを我慢してする共同生活はあまり良くないので」

 僕の言葉にルーファウスは「そこまで深刻な話ではありませんよ」と苦笑する。

「私の中ではドラゴンというのは倒すべき悪、もしくは関わってはいけない魔物という考えでしたので、こうもあっさり打ち解けるアランは度量が広いのか、考えなしなのかどちらなのかと考えていただけです」
「ドラゴンは倒すべき悪、ですか」
「別にタケルが連れて来た彼を悪だと言っている訳ではありませんよ! ただ世間一般の考え方は恐らく私とさほど違いはないかと」

 ああ、確かにそうかもしれないな。だからこそ古老のドラゴンは絶滅寸前の同胞を保護して欲しいと僕に依頼してきた訳だしね。

「ドラゴンって凄く強いですから怖いと思うのは当たり前ですよね、魔物と対話ができるだなんて誰も思ってもいないでしょうし、食べられる、殺されるって思ったら反撃したくなる心理は僕にも分かります。だけど今日僕は二匹のドラゴンと話をしてみて全く対話ができないなんて事はないなと思いました。それどころかドラゴンは喋れないだけでこちらの言葉の意味は理解していますし、恐らく知能レベルは僕たちとほとんど変わりない。それなのに一方的に忌み嫌われるのはやはりどうかと思うので、僕は彼らに協力できる事を嬉しく思ってますよ」

 ルーファウスは僕の言葉に耳を傾け「度量の広さではアランよりもタケルの方でしたね」と、ふっと肩の力を抜く。

「ドラゴンを従魔になんて始めはどうなる事かと思いましたが、この様子なら何も問題はなさそうです。アランのあの様子、シュルクでの生活を思い出しますよ」
「あはは、あそこでは皆で毎日宴会してましたもんね」

 僕が初めて暮らした西方の街シュルク、冒険者が集うシェアハウスは毎日賑やかで連日連夜の宴会はもはや当たり前の光景だった。毎日飲んだくれていてこの人達大丈夫なのかな? なんて思う事もあったけど、アレはアレでとても楽しい思い出だ。

「なぁ、ルーファウス、せっかくの新人歓迎会だ、今日はお前も飲め!」
「はい!?」

 アランがグラスを片手にルーファウスの方へと寄ってくる。

「お前は酒癖が悪いだけで、意外と飲める奴だってのを俺は知ってんだからな」
「私は自ら飲酒はしないと自戒しているのですから放っておいてください」
「それは承知の上で、今日は無礼講だから飲めと言ってるんだ」
『そうだそうだ、こんな美味い飲み物を自戒する意味が分からん、飲めるのならば飲めばいい』
「ちょ、アラン! オロチまでそういう事言わないの!」

 お酒が入って少し強引になっているアラン、そしてかなり陽気になってしまっているオロチは豪快に笑いながらついに酒瓶から直接酒をラッパ飲みし始めてしまった。

「オロチ、何やってんの!?」
『じじいは常日頃からもう一度美酒を味わいたいなんて口癖のように言っていたが、これは納得だ。酒というものは美味い! 飲めるのに飲まないなんて愚の骨頂だ』

 いかん、これは確実に飲ませてはいけないタイプの人間に飲ませてしまった気がする。オロチは人間ではないけれど、これは絶対酒に溺れるタイプだ。

「オロチ、お酒は適度に嗜む方がいいんだよ」
『あん? 俺様に口答えか?』

 いやぁぁー! 目が据わってる、これオオトラになって気が荒くなるやつだろ!? ドラゴンに暴れられたりなんかしたら手に負えなくなるぅ!!!

「僕は君の雇い主です! 体調管理も僕の仕事、これ以上の飲酒は許しません!」

 僕はオロチの手から酒瓶を取り上げる。まぁ、取り上げたその瓶は既に半分ほどまで減ってたけど。
 僕とオロチがそんな攻防を繰り広げている傍らではアランとルーファウスも「飲め!」「飲みません!」の攻防を繰り広げていた。酒瓶を取り上げられて不服そうなオロチはそんな二人を見て『こいつ等はいいのか?』と不満気だ。

「良いとは言い切れないけどオロチは飲みすぎ。酒瓶一本ラッパ飲みとかあり得ないよ。その前にグラスで何杯も飲んでただろ、飲み過ぎ厳禁」
『…………』

 オロチが黙った所で、アランとルーファウスの方はルーファウスが折れて「では一杯だけですよ」とグラスを受け取ろうとしたその瞬間、オロチが動いてルーファウスの座っていた椅子の後ろから腕を伸ばし、ルーファウスを羽交い絞めにした。

「は?」

 目を白黒させるルーファウス、オロチは無言でにやりとアランに視線を向ける、それを察してかアランが僕から酒瓶を奪ってルーファウスの口に突っ込んだ。なんか絵面が卑猥! なんて、言ってる場合じゃない!!!

「ちょっとアラン何してんですか!?」
「今、そいつと意思の疎通がはかれた気がしてな」

 そう言ってルーファウスに無理やり酒を飲ませながらアランはけらけらと笑っている。これ完全にアルハラだよ!

「二人とも、世の中にはいくら酔っているからと言えども、やっていい事と悪い事があります! 捕縛!」
「え?」
『なんだこれは!?』

 僕の声かけと共に光の輪が宙に現れ、それがアランとオロチを拘束し、きつく締め上げた。
 光の輪を解こうとオロチは暴れるが魔力で練られたその光の輪がそう簡単に外れる事はない。本来は盗賊なんかの捕縛に使う魔術だけど、文句なんか言わせない。

「二人はそこでしばらく大人しくしてなさい! ルーファウス、大丈夫!?」

 酒瓶の半分ほどを無理やり一気飲みさせられたルーファウスの顔色がおかしくなってる。机に突っ伏すようにぐったりしている彼は元々色白なのだが、完全に血の気を失って青白い、それは自分の魔術を自分で食らって死にかけた、あの時の事を思い出す。

「ルーファウス、ねぇ、しっかりして!」
「タ、ケル……?」

 けれどあの時とは違ってどうやらルーファウスの意識はあるようで、弱々しくはあるけど僕の名を呼んでくれてホッとした。それこそ急性アルコール中毒は怖いんだ、死んでしまう場合だってあるものを他人に無理強いなんてホント駄目だよ!

「良かった、気持ち悪くないですか? 大丈夫? 今水を……」
「タケル、タケル……行かないで」

 僕が台所に水を取りに行こうと踵を返そうとしたらルーファウスが僕の腰にぎゅっとしがみついてきた。

「お水持ってくるだけなんで、少し待って……」
「いやだ!」

 ふるふると首を振るその仕草がずいぶんと幼げだ。ぎゅうぎゅうときつく僕を抱き締めるルーファウス、ちょっと苦しい。よくよく見ればルーファウスの耳元から首筋にかけて段々に朱が昇ってきている。

「僕を置いて行かないで、僕をもっと愛してよ!」

 嫌だ嫌だと首を振りながらこちらを見上げたルーファウスの瞳が潤んで見えた。

「大丈夫ですよ、すぐに戻ってきますから、ね」
「駄目です、嫌です、絶対に離さない」

 まるで駄々っ子のようになってしまった彼を見た瞬間、あ、もうこれは手遅れだと僕は悟る。ただでさえ僕への執着が強い彼なのに、こうなってはもうお手上げだ。
 泥酔したルーファウスは泣き上戸で、そして赤ちゃん返りとでも言えるような甘え方をしてくる。そんな己の醜態を悔いていた彼はこの三年間お酒に口をつけなかったというのに……
 僕はぎゅうぎゅうと抱き締める腕を緩めず泣き続ける彼の頭を撫でる。困ったな、こうなっては寝付くまでルーファウスは僕を離しはしないだろう。

「タケル、俺、水持ってこようか?」

 場の雰囲気に飲まれて完全に空気のようになっていたロイドがおずおずと僕に声をかけてくる。僕はそれに「ありがとう、おねがい」と頭を下げた。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...