童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

矢の字

文字の大きさ
92 / 222
第三章

それはまるで仕組まれたゲームのようで

しおりを挟む
 僕達は洞窟を抜けて、今度は洞窟の東側にあると思われる祠へと足を向けた。

「うへぇ、これは完全に獣道だな。誰も訪れる奴が居ないんだから、当たり前と言えば当たり前なんだが、道がない」

 地図に指し示された方角へと探索魔法をかけながら進んでいく僕達なのだけど、そこには明確な道など存在せず、鬱蒼とした森の中を道を開拓していくような状況にアランが小さく零した。

「燃やしましょうか」
「やめろ、山火事になるだろうが!」

 掌の上に炎を乗せて淡々と言ったルーファウスにアランが制止をかける。こういう場合、アランの方がノリノリで燃やしそうなのに逆だったなと、僕は少し意外な気持ちだ。

「では、水で……」
「え」

 今度は水球を掌に浮かべたルーファウスに「まぁ、それなら」と、アランがOKを出すと同時に、水の塊が樹木をなぎ倒していく。
 鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギスではないが、存在するかどうかも分からない道を探して放浪するくらいなら歩きやすい道を己で作ればいいじゃないかという強い意志を感じる。
 でも、ある意味開拓者としてはそれが正解だよな、敷かれた道しか歩いてこなかった僕からは出てこない発想だよ。

「足場が悪いから気を付けてついて来いよ」

 なぎ倒された樹木を跨いでアランが僕とロイドに注意を呼び掛ける。視界が開けた分だけ歩きやすくなった道をどうにかこうにか進んでいくと、やがて眼前に小さな建物が見えてきた。
 建物といってもそれは壁のない掘っ立て小屋のような感じで、かろうじて屋根があるので建物だと認識できる程度の代物だ。

「これが、あの地図にあったか祠か? どれどれ」

 アランが建物の中を覗き込む。とはいえ壁はなく中が丸見えなので、僕にもそこにある物がよく見える。それは然程大きくもない石碑だ。アランは触れないように四方からその石碑を眺め回した。

「何か書いてあったりしますか?」
「石碑にリヴァイアサンの絵が刻まれてるな、あと穴が開いてる」

 「ここ」とアランがしゃがんで指差した先、確かにそこには何かを差し込めそうな穴が開いている。

「これは鍵穴っぽいですね」
「だよなぁ……って事は、キーアイテムはそのまんま『キー』って事か。その鍵が最初から入手できていれば世話なかったんだが、そもそも俺達は順番を間違えたな」
「順番、ですか?」
「そうだ。恐らくだが正しい順番としては、島に到着、リヴァイアサンが現れ島から出られなくなる、島探索、壁画見付ける、祠を見付ける、鍵穴見付ける、リヴァイアサン討伐、キーアイテムGETの流れがこの階層の正しい攻略手順なんじゃないかと俺は思う、だが探索より先にリヴァイアサンを先に倒してしまったから俺達はキーアイテムを取り損なったって事だ。まぁ、やり直しがきくって点ではダンジョンで良かったなって感じだな。外だったら魔物も復活しないし、アイテムを取り損なったらそれまでだ」

 現実がシビアなのは当たり前だが、ダンジョン内では何でもありだな。自分達が死んだら復活できない所だけは現実リアルだけど、それ以外は挽回がきくらしい。

「ダンジョンって、まるで見えない誰かの遊戯盤ゲームボードで無理やり遊ばされてるみたいだ。それこそ自分の命を懸けた殺戮遊戯デスゲームじゃないか」

 ロイドが少し神妙な声音で放った言葉に「その通りですよ」と、珍しくルーファウスが返事を返した。

「だから私は常々ダンジョンは嫌いだと言ってるのです。確かにダンジョン内では失敗をしてもやり直しがきく、けれどそれは自分が生きていたらの話です。魔物は何度でも甦るのに私達の命はひとつしかない、こんな理不尽な場所、探したって他にはありませんよ。ダンジョンというのはそうやって冒険者たちを遊戯へと誘い、命を奪い糧としている、それこそダンジョン自体が凶悪な魔物そのものであると私は考えます」

 ルーファウスの語る言葉に僕の背筋に怖気が走った。そもそもダンジョンというのは核を中心にして成長するものなのだそうだし、ダンジョン自体が魔物であると考えたら確かにしっくりくるのだ。そう思うと現在僕達は魔物の腹の中で冒険をしているという事になる訳で、考えただけでゾッとする。

「さっさとダンジョン核を見付けて封じてしまわないとですね!」
「そうですね、ですが、こうなるとリヴァイアサン復活まで私達にできる事はもう何もありません、準備も兼ねて一度街に戻りましょうか」
「え、帰るんですか?」
「リヴァイアサン復活まで何日かかるか分かりませんが、それまで野宿でサバイバルでも良ければこのままでも構いませんよ。ですが、転移魔法陣をこの島へ設置すれば、この島から再スタートできるのですから無駄に気を張ってリヴァイアサンを待つより、充分に休んで再戦するのが賢明だと思いませんか?」

 それは確かにルーファウスの言う通りだ。僕達がダンジョンに潜って既に数日が経過している。オロチのお陰でほとんど魔物は襲って来ないとはいえ、ここが危険なダンジョン内である事に変わりはない。
 それなら一度街に戻って、ゆっくり休んでまた挑戦というのも有なのか、言ってしまえばこの島はゲームのセーブポイントという事だ。

「俺も賛成だな、というか俺のマジックバッグの中身、リヴァイアサンのお陰で既に満杯なんだよ、できれば荷物を減らしたい」

 僕達はリヴァイアサンの骨や皮、臓物を等分に分けたのだけど、どうやらアランのマジックバッグの容量的に既に限界がきているらしい。
 僕のは全然平気なんだけど、それだけ僕のマジックバッグは大容量って事なんだろう。ちなみにロイドの分も僕のバックにしまわれているので、僕のマジックバッグの容量はアランの二倍以上という事だ。無料ただで貰った物なのに、アランのバッグより物が良いなんて、少し申し訳ない気持ちになるな。

「それに俺はそろそろ酒も恋しい」
『酒!』

 アランがぼそりと零した呟きにオロチの瞳がきらりと光った。なんだよ、その期待に満ちた眼差しは!

「言っとくけど、2人とも飲みすぎは厳禁だからね!」

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...