童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

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第三章

リヴァイアサン再び

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 メイズの街で過ごすこと数日、僕達はリヴァイアサンを倒すため、そしてその後のダンジョン攻略のための準備を念入りに整えて、改めてダンジョンへと潜った。
 そういえば、僕はついに魔法の杖を購入しました! 最初から言われていたのだけれど、杖というのはピンからキリまであって安いものはそこそこの値段で売られているけれど、使える用途が限られていてあまり持つメリットが感じられなかった。
 どうせなら、良い物を買おうと思っていた僕は鑑定スキルを駆使して良さげな物をずっと探していたのだけれど、僕が良さそうだと思う物は当然ながらどれもこれも高かった。
 けれど、リヴァイアサンの素材を売る事で思いがけず大金が手に入ったので、ついに購入していましたよ、魔法の杖!
 杖の中には華美に装飾が施され、機能はいまいちなのだが装飾のせいで値段が吊り上がっている物もあったりして、値段が高いのだから良い物だろうと購入して失敗する事もあると言う。けれど、僕が購入した杖は一見するとただの曲がった木の枝に適当に持ち手を付けただけのように見えるシンプルな物だ。
 新品でもない中古の杖で、見た目はとても地味だが機能面は充実している、全属性攻撃力アップに魔法耐性付与、物理耐性付与、魔力上限も底上げしてくれて、魔術を使う時の魔力量も軽減してくれるというパーフェクトと言ってもいい代物だ。
 そんな高性能にも関わらず華美な杖の並ぶ端っこで、ちんまり売られているのを見付けた時には僕は驚きを隠せなかった。
 その杖を売っている店主はその杖の価値をちゃんと分かっているようで、それなりの値段が付いていたけれど、恐らく長く客に手に取られる事もなかったのだろうその杖は本当に隠れるようにしてそこにあった。
 実際はもっと高値で売られていても不思議ではない杖だけど、客に手に取られる事もない商品という事で少し値引きもされていて、僕は一も二もなくその杖を購入した。まぁ、それでも白金貨2枚飛んでったけどね。
 店の店主は僕がその杖を購入すると告げた時、とても驚いたような顔をしていたけれど「大事にしてもらうんだよ」と優しく杖を撫でたので、何だか不思議な気持ちになった。
 店主のその眼差しはまるで娘を嫁にやる親のようだ。

「こんな事を言っても君は信じないかもしれないが、道具には魂が宿るもので、うちの杖にもひとつひとつ個性がある。特に年季を重ねて使い込まれた杖はそれが顕著で、この杖もそのひとつさ。元の持ち主はいつの時代の者かも分からないがずいぶん大事に扱われていたのだろう。だからこの杖は使う者を選ぶ、そもそも資格のない者の目には触れる事もできない不思議な杖さ、君みたいな若者といける事を杖も喜んでいるようだよ」

 長く魔法の杖と向き合ってきたのだろう店主の言うことには重みがある。長く使われた道具には魂が宿る、それは付喪神つくもがみという概念がある日本人には馴染みがある感覚で、僕はそんな杖が僕を選んでくれた事を嬉しく思った。

「大事に使わせてもらいますね」

 僕はライムの入っているローブの内ポケット横にある杖用の留め具にその杖を装着する。すると、まるでそこに収まるのが自然で当然だと言わんばかりに杖は収まって、僕はにやける顔を止められなかった。

「タケル、今日はずいぶんご機嫌ですね」
「ふふふ、分かりますか、分かっちゃいますよね。ついにこの杖を使えるのかと思うと嬉しくてソワソワしています」

 ダンジョンに潜ってセーブポイントである島に僕達が到着すると、あまり間を置かずに島にリヴァイアサンの巨体が巻き付いた。こうして見ると改めてリヴァイアサンの大きさを実感せずにはいられない。
 前回はこの巨大な海蛇をよく食べ尽くしたよなと思わなくもないのだが、オロチとライムの胃袋はブラックホールのように底がない、特にライムは止めなければ際限なく食べ尽くすまさに暴食。普段はそんなに大食らいという訳でもないのだけれど、目の前に御馳走があるとなったら皿まで食べ尽くす勢いで片付けていくので、もしかしたら食い溜めでもしているのかもな。
 元々スライムというのは食べるだけ食べて役に立たない魔物で従魔には向かないと言われているくらいなので食べる事には貪欲なのだろう。
 僕はそんなライムには腹いっぱい食べて欲しいので、常に自分達と同じだけの食料を与えていたけど足りなかったのかもしれないな……

『主、今日も美味そうな飯がこちらを睨んでいるが、行ってもいいか?』
「あ、オロチ待って! 君が行ったらまたすぐに終わっちゃうから今日は見てて。それでもし僕達が苦戦するようだったら手伝って」
『なんだ、今日は俺様は見学か。つまらぬな。そういう事ならさっさと行ってこい』

 憎まれ口を叩きつつもオロチは僕の言う事を素直に聞いてくれるのだから本当に良い子だよ。

「俺とロイドは浜辺に下りる、ルーファウスとタケルは後方から攻撃と支援を、あいつが海に潜った場合、俺達は手が出ないからその時は頼む!」

 アランがそう言ってリヴァイアサンの胴体が横たわる浜辺へとロイドと共に駆けて行く。近接戦闘の2人はどうやっても近寄らないと戦えないものな。
 僕はそんな駆けて行く2人に物理耐性、魔法耐性の聖魔法をかけた。
 補助系・回復系の魔術は四属性の中にもあるのだけれど、後方支援に関しては聖魔法が最強と言ってもいい。普段は聖魔法を使うなと言われている僕だけど、こんな時くらいは使わないとね。
 ルーファウスは先制攻撃と言わんばかりに、杖を持った手を天に向けて雨雲を呼ぶ。

「大いなる神のいかづち、悪しき魔物に裁きの雷光を、雷槍サンダースピアー!!」

 そんな詠唱と共に天から降り注ぐ幾つもの光の槍がリヴァイアサンの巨体に次々と突き刺さる。それに驚いたようにリヴァイアサンは胴体をくねらせ暴れ始めたのだが、そんな巨体に取りつくようにアランがその身体に登っていく。恐らく狙いは頭部だろう。
 ロイドはアランの補佐をするようにリヴァイアサンの身体に剣を振るったのだが、リヴァイアサンの鱗は硬く弾き返され悔しそうにしている。僕はそんな彼に物理攻撃力アップの祈りを捧げ、購入したばかりの杖を取り出した。
 リヴァイアサンは水生の魔物、弱点はルーファウスが放った魔術を見れば分かるように雷だろう。雷は風と水の複合魔術で、雷系の技自体が中級魔術なので、今ルーファウスが放った魔術は間違いなく高等魔術だ。
 僕もやってみてもいいだろうか? いや、でも、現在リヴァイアサンの身体にはアランが登っているし、すぐ近くにはロイドもいる。下手な攻撃を仕掛けたらアランやロイドまでも怪我を負ってしまう。
 僕が逡巡している間にも、ルーファウスは頭部を避けて続けて雷槍を放つ。アランとルーファウスの息はぴったりで、さすがだなと思わずにはいられない。

『タケル~ボクもなんかやる~』

 自分自身がどう動いていいかも分からない中、ローブから飛び出してライムが僕の周りを飛び跳ねた。何かやると言われても、一体何をやらせればいいのか……僕は魔術師で従魔師なのに、いざ戦闘となるとどう動いていいのか分からないなんて情けないったらないよ。
 僕はまだ魔術に関して手練れではない。威力の強い魔術を放つ事はできても、その攻撃を仲間に当てないようにピンポイントで標的に当てるのは難しい。かと言ってピンポイントで当てる事ができるような技は威力が低めで、リヴァイアサンに通用するとも思えない。
 そこで僕ははたと思いつく、周りに攻撃が飛び火するのなら、それを閉じ込めてしまえばいい。
 ライムに出来るかと問えば出来るというので、僕は杖を構えて詠唱に入る。その間にライムはリヴァイアサンの腹に飛びつき、むくむくと大きく膨れ上がって腹の一部を覆っていく。

「燃え上がれ、地獄の煉獄インフェルノ!!」

 僕はライム目がけて術を放つ。この技は火魔法の中では一番威力の高い単体攻撃魔術だ。けれど単体攻撃魔術でありながらも周りに延焼する可能性が高い魔術でもある。僕の放った地獄の煉獄インフェルノはそのままライムの中へとすべて吸い込まれ、ライムの腹の中で大爆発を起こした。
 けれどその爆発はライムの腹の中で収まって、周りに延焼はなし。僕は「よしっ!」と拳を握った。

『主はなかなかにえげつない戦い方をするな』

 不意にぼそりと呟かれた言葉。いつの間にかオロチが僕の傍らに立っていて、燃え盛るライムを見やる。

『従魔を犠牲にして攻撃を仕掛けるとは、なかなかどうしてできる事ではない』
「え、待って! 僕はライムを犠牲にしてなんかないよ!」
『いや、あれは完全にあのスライムも燃えているだろう?』

 そんな馬鹿な、と僕は青褪めてライムとリヴァイアサンを見やる。でも、確かにライムで延焼は完全に防がれているが、ライム自身も炎を纏い燃えている。

「わぁぁぁぁ、ライム~!!!」

 出来るというからやらせてみたけど、一発本番なんてするんじゃなかった……僕がショックでへたり込むと、そんな僕の膝の上に『なぁに?』とライムがぽすんと乗っかった。
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