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第三章
無邪気な戦闘狂
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「へ?」
『タケル、だいじょうぶ?』
目の前で燃えているライム、けれど僕の膝の上にもライム、これは一体どういう事だ?
『今のすごかったねぇ! ぼふんってなってぼぉって燃えて、リヴァイアサン真っ黒こげ~! でも、おいしそう~』
『呑気だな』
「ライムぅぅぅ!」
僕はライムを抱き締めた。
『あれはそ奴の分裂体か、えげつない戦い方をするのは主ではなく、そ奴だったか、同胞を犠牲にして悪びれもせん』
『? オロチの言ってること、難しくてよく分かんな~い』
そういえばライムって複数のスライムの融合体だった、恐らく現在目の前で燃えているのはそんなライムと融合していた別の個体なのか。ライム、恐ろしい子!
そんな事を考えている間にもライムの分裂体が取りついたリヴァイアサンの胴体は分裂体ごと燃えている。さすがに胴体を燃やされたリヴァイアサンは大暴れだ。
「うわぁぁ! ちょ! 暴れんなっっ!!」
アランが暴れるリヴァイアサンに振り落とされて落ちてくる、そんな彼をライムの分裂体がぽよんと受け止めた。なんか気付いたらそこらじゅうにライムの分裂体が増殖してる。
『タケルぅ、もっとぼふんってやってぇ』
いや、でもライムちゃん、それやると君の分裂体が被害を受けるのではないのかい? 君の身体は大丈夫なのかい?
そんな僕の戸惑いをよそに『はやくはやくぅ~』と無邪気でえげつない戦闘狂のスライムが僕が指示を出すまでもなくリヴァイアサンの身体に取りついてリヴァイアサンを覆っていく。
これはもう、自分の中に魔術を打ち込めと言っているのだろうな。僕はままよとばかりに杖を構え、詠唱を唱えた。今度は少し控え目にいこう、だってライムの分裂体が目の前で傷付くのは見るに堪えない。
「いけ、火炎放射!」
火炎放射は火魔法の中でも簡単な魔術だが全体攻撃魔法でもある。アランがリヴァイアサンの身体から離れたし、簡単な魔術なのである程度コントロールには自信がある。僕は出来る、大丈夫だと自分に言い聞かせながら僕は術を放った。
これは今まで何度もライムとの連携で使ってきた戦法で一旦ライムが取りこんで発射する事で威力が数倍になる事は確認済みだし、その威力もある程度把握している、その際ライムが怪我をする事がない事も実証済みなので安心だ。
いや、安心なはずだった……
「ちょ、何でぇぇ!?」
ライムがへばりつくリヴァイアサンの身体に僕が火炎放射を放つと、いつもの如く威力は倍増したのだが、その威力の倍増具合が半端なく、一気にリヴァイアサンが燃え上がった。
空気が揺れるような叫びが辺りに響き、リヴァイアサンが大暴れで海水の中へと逃げて行こうとする。まぁ、火は水に弱いですし、水の中なら火は消える、けれどへばりついたライムの分裂体がそれを許すはずもなく、ライムの胎内で燃え盛る炎は消える事がない。
海の中でのたうち回るリヴァイアサン、そんな光景を固唾を飲んで見守っていたら、そのうち力を失ったリヴァイアサンが海に浮かんだ。
『ねぇ、タケル、おいしそうに焼き上がったリヴァイアサン、食べてもい~い?』
「えっと……うん、いいよ」
『わぁい』『たべるぅ~』と複数の歓喜の声が頭に響く。先程まで燃え上がっていたライムの分裂体までもがもぞもぞと動き出して、近場の分裂体と融合していく。あれ? あの分裂体は炎にやられたんじゃなかったの? 体全体が燃え上がっていた気がするのは気のせいなのか? ライムの、いや、スライムの体って一体どうなってんの!?
「ライムの攻撃力がますますスライム離れしてきましたね」
リヴァイアサンが動かなくなったのを確認したルーファウスが僕の傍へと寄ってきた。
「本当に、どうなってるんでしょうか……今日はいつも以上にライムの攻撃力が増していて僕もビックリしました」
「ビックリって、タケルは何を言っているのですか? ライムの攻撃力が増したのは単純にタケルの攻撃力が増したからですよ。ライムは従魔です、従魔師の力量次第で強さが変わるのは当然でしょう? ライムはタケルがいなければただの大飯ぐらいのスライムですよ」
え? そうなの? でも僕は何も――……ああ! 杖のせいか!!!
ライムが発した火力の強さが杖のせいだと気付いた僕は、とんでもない物を手に入れてしまったと戦慄する。
これはアレか、僕の魔術の威力+杖の攻撃力アップ機能×ライムの攻撃力増幅スキル=攻撃力の大幅増強、という事か!
「これを高等魔術でやっていたらと思うと、ゾッとしますね。それこそあそこで紅蓮陣なんて放っていたら、この辺り一面焼け野原、どころか私達も丸焦げだったかもしれません」
ちょっと! 怖い事言わないで!
「お~い、鍵! 鍵出たぞ~」
海辺に浮かぶリヴァイアサンの傍らで、アランが金色に光る小さな鍵を天に掲げぶんぶんと左右に振っている。なんだかライムがとんでもない戦闘狂のようになっちゃったけど、無事に鍵はGET出来たようで良かった。
僕達は鍵を手に入れたアランと合流し、祠へと向かう。ちなみにリヴァイアサンはあっという間にライムに食い尽くされた。お腹減ってたんだね。
リヴァイアサンの骨はいらなかったみたいで吐き出されたので、それだけは回収しておいた。食費の足しにさせてもらうよ。ってか、ライムの暴食が加速していて少しばかり僕は恐ろしいよ。
『タケル、だいじょうぶ?』
目の前で燃えているライム、けれど僕の膝の上にもライム、これは一体どういう事だ?
『今のすごかったねぇ! ぼふんってなってぼぉって燃えて、リヴァイアサン真っ黒こげ~! でも、おいしそう~』
『呑気だな』
「ライムぅぅぅ!」
僕はライムを抱き締めた。
『あれはそ奴の分裂体か、えげつない戦い方をするのは主ではなく、そ奴だったか、同胞を犠牲にして悪びれもせん』
『? オロチの言ってること、難しくてよく分かんな~い』
そういえばライムって複数のスライムの融合体だった、恐らく現在目の前で燃えているのはそんなライムと融合していた別の個体なのか。ライム、恐ろしい子!
そんな事を考えている間にもライムの分裂体が取りついたリヴァイアサンの胴体は分裂体ごと燃えている。さすがに胴体を燃やされたリヴァイアサンは大暴れだ。
「うわぁぁ! ちょ! 暴れんなっっ!!」
アランが暴れるリヴァイアサンに振り落とされて落ちてくる、そんな彼をライムの分裂体がぽよんと受け止めた。なんか気付いたらそこらじゅうにライムの分裂体が増殖してる。
『タケルぅ、もっとぼふんってやってぇ』
いや、でもライムちゃん、それやると君の分裂体が被害を受けるのではないのかい? 君の身体は大丈夫なのかい?
そんな僕の戸惑いをよそに『はやくはやくぅ~』と無邪気でえげつない戦闘狂のスライムが僕が指示を出すまでもなくリヴァイアサンの身体に取りついてリヴァイアサンを覆っていく。
これはもう、自分の中に魔術を打ち込めと言っているのだろうな。僕はままよとばかりに杖を構え、詠唱を唱えた。今度は少し控え目にいこう、だってライムの分裂体が目の前で傷付くのは見るに堪えない。
「いけ、火炎放射!」
火炎放射は火魔法の中でも簡単な魔術だが全体攻撃魔法でもある。アランがリヴァイアサンの身体から離れたし、簡単な魔術なのである程度コントロールには自信がある。僕は出来る、大丈夫だと自分に言い聞かせながら僕は術を放った。
これは今まで何度もライムとの連携で使ってきた戦法で一旦ライムが取りこんで発射する事で威力が数倍になる事は確認済みだし、その威力もある程度把握している、その際ライムが怪我をする事がない事も実証済みなので安心だ。
いや、安心なはずだった……
「ちょ、何でぇぇ!?」
ライムがへばりつくリヴァイアサンの身体に僕が火炎放射を放つと、いつもの如く威力は倍増したのだが、その威力の倍増具合が半端なく、一気にリヴァイアサンが燃え上がった。
空気が揺れるような叫びが辺りに響き、リヴァイアサンが大暴れで海水の中へと逃げて行こうとする。まぁ、火は水に弱いですし、水の中なら火は消える、けれどへばりついたライムの分裂体がそれを許すはずもなく、ライムの胎内で燃え盛る炎は消える事がない。
海の中でのたうち回るリヴァイアサン、そんな光景を固唾を飲んで見守っていたら、そのうち力を失ったリヴァイアサンが海に浮かんだ。
『ねぇ、タケル、おいしそうに焼き上がったリヴァイアサン、食べてもい~い?』
「えっと……うん、いいよ」
『わぁい』『たべるぅ~』と複数の歓喜の声が頭に響く。先程まで燃え上がっていたライムの分裂体までもがもぞもぞと動き出して、近場の分裂体と融合していく。あれ? あの分裂体は炎にやられたんじゃなかったの? 体全体が燃え上がっていた気がするのは気のせいなのか? ライムの、いや、スライムの体って一体どうなってんの!?
「ライムの攻撃力がますますスライム離れしてきましたね」
リヴァイアサンが動かなくなったのを確認したルーファウスが僕の傍へと寄ってきた。
「本当に、どうなってるんでしょうか……今日はいつも以上にライムの攻撃力が増していて僕もビックリしました」
「ビックリって、タケルは何を言っているのですか? ライムの攻撃力が増したのは単純にタケルの攻撃力が増したからですよ。ライムは従魔です、従魔師の力量次第で強さが変わるのは当然でしょう? ライムはタケルがいなければただの大飯ぐらいのスライムですよ」
え? そうなの? でも僕は何も――……ああ! 杖のせいか!!!
ライムが発した火力の強さが杖のせいだと気付いた僕は、とんでもない物を手に入れてしまったと戦慄する。
これはアレか、僕の魔術の威力+杖の攻撃力アップ機能×ライムの攻撃力増幅スキル=攻撃力の大幅増強、という事か!
「これを高等魔術でやっていたらと思うと、ゾッとしますね。それこそあそこで紅蓮陣なんて放っていたら、この辺り一面焼け野原、どころか私達も丸焦げだったかもしれません」
ちょっと! 怖い事言わないで!
「お~い、鍵! 鍵出たぞ~」
海辺に浮かぶリヴァイアサンの傍らで、アランが金色に光る小さな鍵を天に掲げぶんぶんと左右に振っている。なんだかライムがとんでもない戦闘狂のようになっちゃったけど、無事に鍵はGET出来たようで良かった。
僕達は鍵を手に入れたアランと合流し、祠へと向かう。ちなみにリヴァイアサンはあっという間にライムに食い尽くされた。お腹減ってたんだね。
リヴァイアサンの骨はいらなかったみたいで吐き出されたので、それだけは回収しておいた。食費の足しにさせてもらうよ。ってか、ライムの暴食が加速していて少しばかり僕は恐ろしいよ。
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