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第三章
僕達の家
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ダンジョン核のあった部屋は部屋そのものに封印の魔法陣が組まれているという事で、僕達は最初に飛ばされた真っ暗な部屋へと引き返した。
ルーファウスはその部屋の中央に片膝をついて座り込み、自分を中心にして杖で地面に模様を描き始めた。それはとても繊細で芸術的でもあるのだが、ルーファウスは決してそこにただ絵を描いている訳ではない。
「魔法陣ってこんな風に描くものなんですね……」
僕はルーファウスの作業の邪魔にならないように、彼の作業風景を眺める。そういえばあの不思議な部屋にあった本を読めば僕にも転移魔法陣が描けるようになると手紙にあったけれど、本当に描けるようになるのだろうか?
魔術を使う事と魔法陣を描く事は似て異なる全く別の作業だ。魔術を行使する事は魔術師の基本だけれど魔法陣を描くというのはどちらかと言えば職人的な作業で僕のように魔術師と名乗っていても魔法陣を描けない魔術師はいくらもいる。
そういう職人的作業もそつなく完璧にこなしてしまうルーファウスはやはり本当に凄い人なのだと僕は思う。普段の奇行が目立つ分、こうやって真面目に作業をしているルーファウスはとても格好良く見えてしまって困るんだよな。
ルーファウスの作業は小一時間程かかるという事で、その間僕達は少し手持ち無沙汰だ。これで、このダンジョン城も完全攻略かと思うと少し寂しい気持ちもある。とは言え、僕はまだダンジョンの全ての階層を攻略した訳ではない、途中をショートカットしているのだから達成感も薄い。
「アランはこのダンジョン城でどの階層が一番印象的でした?」
「一番といえば間違いなく48階層の大海原なんだが、47階層も凄かったぞ。なんせ一面の砂漠だからな。」
「砂漠……」
「歩けど歩けど、砂・砂・砂。俺達は身を隠す場所もないのに至る所にサンドワームが潜んでいて襲い掛かってくるんだ。フィールドが広いのに加えて寒暖差もえぐくてな、昼間は灼熱、夜は極寒で死ぬかと思った」
うわぁ……それはまたなかなか。
「46階層は樹海、45階層は沼地、どの階層も印象という点では甲乙つけ難かったな、お前等も一度行ってみるといい。ああ、そう言えば43階層は昼夜のない階層だったんだが、景色は常に夕暮れの景色でなかなか綺麗だったぞ。ただ、出てくる魔物はブラッディ・コンバットやらシャドウマンやら面倒くさいのばっかりだったけどな」
そんな風にアランがダンジョンについて語るのを聞いていたら一時間なんてあっという間で、気付いたらルーファウスの作業は終わり、転移魔法陣は描き終わっていた。
「さて、これで私の依頼は全てクリアです」
「お疲れ様、ルーファウス」
「はは、タケルのお陰で最終階層の攻略が楽勝でしたので特に疲れてなんていませんよ」
「そんな僕なんて全然。凄いのはオロチとライムで、僕はまだ半人前の魔術師ですからね」
ルーファウスは「御謙遜を」と苦笑したけど、実際オロチやライムがいなければ僕なんてまだまだ未熟な半端者だ、これからも慢心せずに精進しないと。
そんなこんなで僕達は一日足らずでダンジョン城から地上へ帰還する事になった。地上に戻ると時間はもう夜半過ぎで、冒険者ギルドへの報告は夜が明けるのを待ってという事になり、僕達は家へと直帰する事に。
ああ、でもすっかり住み慣れたこの家もダンジョン城攻略の依頼を受ける代わりに借り受けている物件な訳で、ダンジョン城を攻略してしまったらいつまでも居座り続ける訳にはいかないのだろうな。
リヴァイアサンの素材を売り捌いていけば当面生活には困らないだろうし、この際だから新たに皆で暮らす家を購入するのも有なのかも。
けれどダンジョンの攻略というひとつの目標を達してしまった今、この街に暮らし続ける意味もなく、冒険者は冒険者らしく旅に出るのもまた一興。
遅い夕食をとりながら僕が何気なくそんな話題を振ってみたら「タケルはせっかちだな」とアランに笑われてしまった。
「でも、この家の賃料が無料なのは依頼報酬な訳ですからいつまでも居座り続けるのは不法占拠になりますよ」
「タケル、私達は今まで誰もなし得なかったダンジョンの攻略をしたのですよ、それも無償で。この家くらいの見返りはあって当然、むしろこのまま報酬として受け取っても良いくらいです。タケルがこの家を気に入ったと言うのならばなんなら私が買い上げてもいい。転移魔法陣の設置の方はギルドから正式に出ている依頼なので、その分に関しては依頼料が入りますのでね、その依頼料を受け取ればこの家を買ってもおつりがきます」
真剣な表情でそんな事を言い出したルーファウス。
「それはルーファウスが受け取るべき報酬だから、そんな事しなくていいよ!」
「そうですか、それならもっと自然豊かな土地に一軒家でも購入しましょうか?」
僕が迂闊に「いいね」なんて言った日にはルーファウスなら本気で家の一軒や二軒くらい購入してしまうだろうという確信を持っている僕は、思わず全力で首を横に振った。
「何だかんだでメイズも3年か、ダンジョン攻略って目標も達したし、俺は一度王都に戻ってみようかと思っているんだが……」
アランがいつもの軽い口調でそんな事を言い出して僕は驚く。だってアランにとって王都は色々としがらみのある土地でもあるはずで、別れた妻子が暮らしている場所でもあるのだ。そんな諸々の事情を何となく察している僕達はどんな顔をしていいのか分からず顔を見合わせた。
「なんだよお前等、そんな顔すんな。確かに俺は王都で色々あったし、顔を合わせづらい奴もいる、だけどそういうの一度全部自分の中で片を付けなきゃならんかなって思ってんだよ。別に一緒に来て欲しいなんて事は思っていない、ただ一度行ってくるって言ってるだけだ」
「まぁ、アランが決めた事なら私は止めませんよ」
「僕もアランがいいなら……というか僕自身、王都には少し興味があるので行ってみたいです」
ルーファウスに続けて言った僕の言葉に、ルーファウスが少しだけ眉間に皺を寄せ「王都には教会の総本部がありますよ」と僕に告げる。
「あ~……駄目ですかね」
「駄目ではないですが、リスクはあるかと」
「ワイバーン騎兵団、見てみたかった……」
しょぼんとしてしまった僕にルーファウスは何とも言えない表情で言葉を詰まらせる。ルーファウスを困らせたい訳ではないけれど、それは僕の正直な気持ちなのだから仕方がない。
それに最近は僕の周りも平和だし、もういい加減3年も経っているのだからエリシア様も僕の事は諦めてくれているのではないだろうか。それこそ聖女様だってそこまで暇じゃないだろう?
「ま、まぁ、数日滞在するくらいなら、どうと言う事もないでしょう」
ルーファウスが頷いてくれた所で、僕はロイドに「ロイド君も行くよね?」と声をかけたら、ロイドは少しだけ浮かない表情で「ああ」と一言頷いた。そんな彼の表情に僕は小首を傾げる。そういえば、今日の彼は何やらとても言葉数が少ない。
「ロイド君、もしかして体調悪い?」
「え……いや、そんな事はない、けど」
「じゃあ、疲れが出たのかな? 無理したら駄目だよ。回復魔法かけようか?」
ロイドは「平気だ」と首を振ったがやはり表情は浮かないまま「今日は先に寝る」と寝室へと籠ってしまった。
「ロイド君、どうかしたのかな……」
「あ~……まぁ、今は放っておくしかないだろう」
アランは何やら理由を分かっていそうな意味ありげな表情でそんな事を言うのだが、そんなアランの言葉を受けてルーファウスは「彼は拗ねているだけですよ」と僕に告げる。
「拗ねてるって、何をですか?」
「圧倒的な実力差っていうのに凹んでいるのですよ、彼は」
「あ~あ~、ルーファウス、もうそれ以上言ってやるな、ロイドが可哀想だろう」
実力差って、今までだってアランやルーファウスとの実力差は分かっていたはずだし、まだDランクに昇格したばかりの僕達が彼等と並び立つのなんて無理だって話は彼としたはずなのに、なんでだ?
「お前も全然分かってないって顔だな、そういうとこだぞ」
アランに唐突にデコピンされた。そういうとこって、どういうとこ!?
「アラン! タケルが怪我をしたらどうするんですか!」
「俺だって、さすがにそんなに強く弾いてねぇよ。ああ、俺も今日はもう寝る、おやすみ」
そう言ってアランも寝室へと戻ってしまうと何となく今日はもうお開きかなという雰囲気になったので僕とルーファウスもそれぞれ寝室へと戻る。
それにしても、そういう所……か、僕は彼の気に障るような事をしてしまったのだろうか? だとしたらちゃんと謝らないとな、と僕は瞳を閉じた。
ルーファウスはその部屋の中央に片膝をついて座り込み、自分を中心にして杖で地面に模様を描き始めた。それはとても繊細で芸術的でもあるのだが、ルーファウスは決してそこにただ絵を描いている訳ではない。
「魔法陣ってこんな風に描くものなんですね……」
僕はルーファウスの作業の邪魔にならないように、彼の作業風景を眺める。そういえばあの不思議な部屋にあった本を読めば僕にも転移魔法陣が描けるようになると手紙にあったけれど、本当に描けるようになるのだろうか?
魔術を使う事と魔法陣を描く事は似て異なる全く別の作業だ。魔術を行使する事は魔術師の基本だけれど魔法陣を描くというのはどちらかと言えば職人的な作業で僕のように魔術師と名乗っていても魔法陣を描けない魔術師はいくらもいる。
そういう職人的作業もそつなく完璧にこなしてしまうルーファウスはやはり本当に凄い人なのだと僕は思う。普段の奇行が目立つ分、こうやって真面目に作業をしているルーファウスはとても格好良く見えてしまって困るんだよな。
ルーファウスの作業は小一時間程かかるという事で、その間僕達は少し手持ち無沙汰だ。これで、このダンジョン城も完全攻略かと思うと少し寂しい気持ちもある。とは言え、僕はまだダンジョンの全ての階層を攻略した訳ではない、途中をショートカットしているのだから達成感も薄い。
「アランはこのダンジョン城でどの階層が一番印象的でした?」
「一番といえば間違いなく48階層の大海原なんだが、47階層も凄かったぞ。なんせ一面の砂漠だからな。」
「砂漠……」
「歩けど歩けど、砂・砂・砂。俺達は身を隠す場所もないのに至る所にサンドワームが潜んでいて襲い掛かってくるんだ。フィールドが広いのに加えて寒暖差もえぐくてな、昼間は灼熱、夜は極寒で死ぬかと思った」
うわぁ……それはまたなかなか。
「46階層は樹海、45階層は沼地、どの階層も印象という点では甲乙つけ難かったな、お前等も一度行ってみるといい。ああ、そう言えば43階層は昼夜のない階層だったんだが、景色は常に夕暮れの景色でなかなか綺麗だったぞ。ただ、出てくる魔物はブラッディ・コンバットやらシャドウマンやら面倒くさいのばっかりだったけどな」
そんな風にアランがダンジョンについて語るのを聞いていたら一時間なんてあっという間で、気付いたらルーファウスの作業は終わり、転移魔法陣は描き終わっていた。
「さて、これで私の依頼は全てクリアです」
「お疲れ様、ルーファウス」
「はは、タケルのお陰で最終階層の攻略が楽勝でしたので特に疲れてなんていませんよ」
「そんな僕なんて全然。凄いのはオロチとライムで、僕はまだ半人前の魔術師ですからね」
ルーファウスは「御謙遜を」と苦笑したけど、実際オロチやライムがいなければ僕なんてまだまだ未熟な半端者だ、これからも慢心せずに精進しないと。
そんなこんなで僕達は一日足らずでダンジョン城から地上へ帰還する事になった。地上に戻ると時間はもう夜半過ぎで、冒険者ギルドへの報告は夜が明けるのを待ってという事になり、僕達は家へと直帰する事に。
ああ、でもすっかり住み慣れたこの家もダンジョン城攻略の依頼を受ける代わりに借り受けている物件な訳で、ダンジョン城を攻略してしまったらいつまでも居座り続ける訳にはいかないのだろうな。
リヴァイアサンの素材を売り捌いていけば当面生活には困らないだろうし、この際だから新たに皆で暮らす家を購入するのも有なのかも。
けれどダンジョンの攻略というひとつの目標を達してしまった今、この街に暮らし続ける意味もなく、冒険者は冒険者らしく旅に出るのもまた一興。
遅い夕食をとりながら僕が何気なくそんな話題を振ってみたら「タケルはせっかちだな」とアランに笑われてしまった。
「でも、この家の賃料が無料なのは依頼報酬な訳ですからいつまでも居座り続けるのは不法占拠になりますよ」
「タケル、私達は今まで誰もなし得なかったダンジョンの攻略をしたのですよ、それも無償で。この家くらいの見返りはあって当然、むしろこのまま報酬として受け取っても良いくらいです。タケルがこの家を気に入ったと言うのならばなんなら私が買い上げてもいい。転移魔法陣の設置の方はギルドから正式に出ている依頼なので、その分に関しては依頼料が入りますのでね、その依頼料を受け取ればこの家を買ってもおつりがきます」
真剣な表情でそんな事を言い出したルーファウス。
「それはルーファウスが受け取るべき報酬だから、そんな事しなくていいよ!」
「そうですか、それならもっと自然豊かな土地に一軒家でも購入しましょうか?」
僕が迂闊に「いいね」なんて言った日にはルーファウスなら本気で家の一軒や二軒くらい購入してしまうだろうという確信を持っている僕は、思わず全力で首を横に振った。
「何だかんだでメイズも3年か、ダンジョン攻略って目標も達したし、俺は一度王都に戻ってみようかと思っているんだが……」
アランがいつもの軽い口調でそんな事を言い出して僕は驚く。だってアランにとって王都は色々としがらみのある土地でもあるはずで、別れた妻子が暮らしている場所でもあるのだ。そんな諸々の事情を何となく察している僕達はどんな顔をしていいのか分からず顔を見合わせた。
「なんだよお前等、そんな顔すんな。確かに俺は王都で色々あったし、顔を合わせづらい奴もいる、だけどそういうの一度全部自分の中で片を付けなきゃならんかなって思ってんだよ。別に一緒に来て欲しいなんて事は思っていない、ただ一度行ってくるって言ってるだけだ」
「まぁ、アランが決めた事なら私は止めませんよ」
「僕もアランがいいなら……というか僕自身、王都には少し興味があるので行ってみたいです」
ルーファウスに続けて言った僕の言葉に、ルーファウスが少しだけ眉間に皺を寄せ「王都には教会の総本部がありますよ」と僕に告げる。
「あ~……駄目ですかね」
「駄目ではないですが、リスクはあるかと」
「ワイバーン騎兵団、見てみたかった……」
しょぼんとしてしまった僕にルーファウスは何とも言えない表情で言葉を詰まらせる。ルーファウスを困らせたい訳ではないけれど、それは僕の正直な気持ちなのだから仕方がない。
それに最近は僕の周りも平和だし、もういい加減3年も経っているのだからエリシア様も僕の事は諦めてくれているのではないだろうか。それこそ聖女様だってそこまで暇じゃないだろう?
「ま、まぁ、数日滞在するくらいなら、どうと言う事もないでしょう」
ルーファウスが頷いてくれた所で、僕はロイドに「ロイド君も行くよね?」と声をかけたら、ロイドは少しだけ浮かない表情で「ああ」と一言頷いた。そんな彼の表情に僕は小首を傾げる。そういえば、今日の彼は何やらとても言葉数が少ない。
「ロイド君、もしかして体調悪い?」
「え……いや、そんな事はない、けど」
「じゃあ、疲れが出たのかな? 無理したら駄目だよ。回復魔法かけようか?」
ロイドは「平気だ」と首を振ったがやはり表情は浮かないまま「今日は先に寝る」と寝室へと籠ってしまった。
「ロイド君、どうかしたのかな……」
「あ~……まぁ、今は放っておくしかないだろう」
アランは何やら理由を分かっていそうな意味ありげな表情でそんな事を言うのだが、そんなアランの言葉を受けてルーファウスは「彼は拗ねているだけですよ」と僕に告げる。
「拗ねてるって、何をですか?」
「圧倒的な実力差っていうのに凹んでいるのですよ、彼は」
「あ~あ~、ルーファウス、もうそれ以上言ってやるな、ロイドが可哀想だろう」
実力差って、今までだってアランやルーファウスとの実力差は分かっていたはずだし、まだDランクに昇格したばかりの僕達が彼等と並び立つのなんて無理だって話は彼としたはずなのに、なんでだ?
「お前も全然分かってないって顔だな、そういうとこだぞ」
アランに唐突にデコピンされた。そういうとこって、どういうとこ!?
「アラン! タケルが怪我をしたらどうするんですか!」
「俺だって、さすがにそんなに強く弾いてねぇよ。ああ、俺も今日はもう寝る、おやすみ」
そう言ってアランも寝室へと戻ってしまうと何となく今日はもうお開きかなという雰囲気になったので僕とルーファウスもそれぞれ寝室へと戻る。
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皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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