童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

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第三章

僕は至って普通のモブおじさんです!

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 翌日から僕には今までと何も変わらない日常が戻ってきた。エリシア様との一件も片付いて、これからはこそこそする必要のない自由な生活を満喫できる! それは僕が待ち望んでいた生活で、何も問題はないはずだったのだが……

「タケル~今日は冒険者ギルドに残りのリヴァイアサン素材売りに行きたいんだけど、付き合ってもらえるか?」
「え? ああ、うん、いいよ」

 朝食を食べ終えたリビングで今までと何も変わらず声をかけてきたロイドに、僕は頷く。なにせロイドの荷物の大半は僕のマジックバックの中に収められているので、素材を売りに行くのならば僕が居なければ始まらない。

「貴方、いい加減、タケルに荷物持ちをさせるのはやめなさい」
「俺もそうは思ってるんですけど、俺、マジックバック持ってないですし、タケルがいいって言ってくれるので、つい。本当は俺もマジックバックが欲しいんですけどなかなか売ってないんですよねぇ」

 しれっとロイドはそう言って、僕の肩を抱き寄せる。今までだってこのくらいのスキンシップなんて当たり前にあったのに、僕はたったそれだけの事に動揺を隠せない。
 ルーファウスがこうやってロイドを目の敵にするのは日常茶飯事で、そんな光景は見慣れたものだけど、その横でぴしっと固まってしまった僕を見てアランが首を傾げて「タケル、どうかしたか?」と僕の顔を覗き込んできた。

「なっ、何でもないですよ!?」
「そうか?」

 何やら腑に落ちないという様子のアランは僕とロイドを見やり「俺も一緒に行ってもいいか」と、そう言った。

「アランさんも冒険者ギルドに何か用があるんですか?」

 ロイドの問いに「ん~まぁな」と、アランは気のない返事。大体僕達が冒険者ギルドに行く時は依頼を受注しに行く時や買い物の時などだけれど、ダンジョン城を攻略した僕達は現在依頼は何も受けていない。纏まったお金も手に入れたので、しばらくはのんびりしてもいいはずなのだが、何か依頼を受けるのか? それとも装備の新調だろうか?

「俺もずいぶん長いこと王都に帰ってないからさ、ちっとばかし情報収集」

 ああ、そういう事か。僕達はまだ次の旅への日程は全く決めていないけど、アランの中で王都への旅立ちは決定事項なのだろう、旅をするのなら道々どんな魔物が出るのか、どんな場所が危険なのか、どの辺りに宿があるのか等々、情報収集はとても大事だ。

「今回も依頼を受けながら王都まで行く予定ですか?」
「ん~今は結構金もあるし、今回は荷馬車でも借りてのんびり旅ってのもありかと思ってるけど、どう思う?」

 シュルクの街からここメイズへとやって来る間、僕達は旅費を稼ぎながらの徒歩の旅だった。冒険者の旅というのはそれが普通で、馬車を使って旅するのは貴族や商人などある程度金を持っている人のする贅沢な旅という認識だ。僕たち冒険者はそういった馬車の護衛依頼を受ける事はあっても、自分達で借りるという発想はなかったので、僕は少しワクワクする。
 けれど、そんな僕のワクワクをよそにロイドが「今回はオロチに乗って行くんじゃないんですか?」とアランに問う。

「え?」
「あんま得意じゃないんで馬車の方が俺としては助かりますけど、オロチに乗って行けば無料ただだし、一瞬で着きますよね、王都」

 確かに!

「俺もそれは考えたんだが、この間の一件もあるだろ。オロチはとにかく目立つからなぁ……」

 それも真理! オロチはとにかく居るだけで目立つ、それがいきなり上空を飛んでいたら、道行く人達を驚かせてしまうのは確実だろう。

「目立つなんて話で終わればいいですけど、オロチに乗って王都になんて、ドラゴンの王都襲撃だと勘違いされたあげく攻撃されるのは目に見えてます。絶対にやめた方がいい」

 はは、そこまでか……確かにドラゴンが出たという情報だけで、すぐに国中の高ランク冒険者に招集がかかり討伐命令が出るくらいだ、そりゃあ警戒するよな。

「やっぱそうなるか。そしたらやっぱり荷馬車か、馬だけでもいいが、お前等馬は……?」

 僕は首を横に振る。乗馬なんて僕には生まれてこの方縁のない生活だった、というか現代社会において馬に乗る経験なんてしている方が圧倒的少数派だと思うのだ。けれどこの世界においては乗馬は出来ない方が少数派のようで、ロイドもルーファウスも首を縦に振ったので、僕以外は全員馬に乗れるらしい。なんてこった!

「僕も乗馬、練習した方がいいですか?」
「まぁ、冒険者稼業を続けていくなら乗れた方が仕事の幅は広がるだろうな。護衛任務なんかだと乗馬スキルも馭者ぎょしゃスキルも必要になってくる。だが、ドラゴンを従魔に出来るタケルなら馬くらい手懐けるのはお手のものだろう?」
「それはどうなんでしょう……」

 確かに僕は従魔師でもあるけれど馬は魔物ではないし、使役できる魔物のタイプは人によって様々だと聞いた事がある。大型魔獣系を使役する従魔師は小型の動物には避けられると聞くし、爬虫類系の魔物に好かれる従魔師は獣型の魔物には好かれないとも聞いた事がある。
 現在僕が使役できているのはスライムとドラゴンの二体だけだし、特性的にはまだ全くつかめていないのだけど、この間マチルダさんのフェンリルにはそっぽを向かれているので、どんな動物でも簡単に手懐ける事ができるという訳でもないと思うのだ。
 あと、ついでに言うのであれば僕は運動神経があまりいい方ではないので、馬が乗せてくれたとしてもすぐに乗りこなせる自信はない。

「だとしたら、やっぱり荷馬車か。どのくらいの値で借りられるか調べて、もしくは購入も視野に入れて探してみるか」

 そんなアランの言葉と共に僕達は揃って冒険者ギルドへ行く事に。冒険者ギルドには何の用事もないはずのルーファウスも付いて来たのはお約束のようなもので、僕とロイド、その後ろにアランとルーファウスの四人は連れ立って歩いて行く。すると、どうも道行く人達が僕達を見ているような気がして僕は落ち着かない。

「あの、なんか、僕達すごく見られてる気がするんですけど、気のせいですか?」
「気のせいな訳ないだろう、俺達はずっと未攻略だったダンジョン城を攻略したパーティーだ、目立つなって方が無理な話だ。元々ルーファウスは目立つ容姿をしているし、俺もこれだしな」

 そう言ってアランは自身の頭の上にぴょこんと乗っかっている耳を指差す。この世界では獣人は当たり前に存在しているけれど、やはり人より数は少ない。アランは熊の半獣人なだけあって人族よりも頭一つ抜けて背も高いので確かに目立つ事は目立つのだ。

「だけど今一番注目されているのは俺達よりお前だろうけどな」
「え、なんでですか?」
「今更何を言っているのですか? ドラゴンを従魔にし、聖女様がわざわざ足を運んでまで訪ねて来た美貌の少年に注目が集まらない訳ないでしょう」

 美貌の少年……なんかそんな風に言われるとむず痒いな。だって僕のこの整った顔面は神様がくれた贈り物で親から貰った僕本来の顔ではないのだ。
 何というか僕にとってこの顔はアバターのような感覚で、美形は三日で飽きるの言葉通りに僕には見慣れ過ぎた仮想現実のキャラクターの顔のような感覚になってしまっているので、その顔面偏差値の評価は自身の評価とはどうにも相容れないのだ。

「僕の中身はくたびれたただのおじさんなのに……」
「俺はお前のそういうギャップのある所が好きだけどな」

 ケラケラと笑いながら応えるアラン、やっぱり驚かないんだな。

「アランはいつから気付いてたんですか?」
「あ? 何に?」
「僕の年齢にですよ、僕のことずっと普通に子供扱いだったくせに!」
「出会った当初からずいぶん大人びた子供だとは思っていたが、確信したのはお前に抱かれて寝た時からだな。俺がお前を子供扱いしていたのは、お前がずっと子供のふりをしてたから、その方がいいんだと思ってただけだぞ」

 僕に抱かれてって、それいつの話!? 僕はアランを抱いて寝た事なんかないはずだけど!?

「今、少しばかり聞き捨てならない言葉を聞きましたが、私の聞き間違いでしょうかね、アラン?」

 ほら~! ルーファウスの目が据わってる! ややこしい事にしかならないから言葉選びには気を付けて!

「いいだろ別に、お前だってタケルには好き勝手してんだ、俺とタケルにだってひとつやふたつ秘密があったとしてもお前がとやかく言えた立場じゃねぇよ」

 ひぃぃ! なんでアランはそんな火に油を注ぐようなこと言うんだよ! 何もない、何もない、秘密なんか何もない!!

「へぇ、意外とタケルってルーファウスさんだけじゃなく、アランさんも手玉にとってたんだ?」

 今度はロイドが僕の顔を覗き込んでくる。だけど僕は「知らない!」と全力で首を横に振る。

「でもまぁ、タケルが魔性なのは今に始まった事じゃないし、驚かないよ、俺は」
「魔性って……」

 ロイドの中での僕のイメージは一体どうなってんだ!? 僕は何処にでも転がっている至って普通のモブおじさんなのに!

「う~……もう知らない! 僕は先に行くからね!!」
「あ、待てって、タケル!」

 僕は皆を無視してギルドへと駆け出した。慌てたように三人が追いかけてくるけど、待ってなどやらない。ただでさえ周りに見られているのに、まるで痴話喧嘩のような会話をいつまでも続けていられるほど僕は厚顔無恥にはなれない。しかも僕を巡っての痴話喧嘩なんて噂にでもなったら醜聞もいいとこだから!

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