童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

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第四章

そ、それってHなやつですか!?

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 小太郎の紋印を見たアランが少し気まずそうに頭を掻いて告げた単語『淫紋』、けれど僕には言葉の意味が理解できない。
 ルーファウスもルーファウスで「確かにこの色の入り方はそれに近い気もしますが……」と首を傾げまじまじと紋印を見つめている。

「あの、『いんもん』って何ですか?」
「あ~……あんま子供に話すような内容じゃないんだが、よく借金持ちの女が入れられている事が多い紋印で、まぁ、大きな括りで奴隷紋ってやつだ。奴隷紋ってのは犯罪奴隷なんかに入れられていて、その紋印自体にそいつの犯罪歴やなんかが刻まれている。だから奴隷紋を刻まれている奴は何処に逃げてもその紋印を見ればどこの奴隷かすぐに分かるようになってるんだ。淫紋ってのはその俗称で……まぁ、つまり――娼婦に刻まれる事が多いから『淫紋』って呼ばれるんだよ」

 『娼婦』に刻まれる奴隷紋、それを称して『淫紋』
 僕は意味を理解してぼっと顔を赤らめる。

「そ・そ・それって……」
「名前は違ってもただの奴隷紋ですよ、ただ淫紋と呼ばれる紋印は彼に刻まれた紋印のような色をしている事が多いのは確かです。肌の色が上気した時に綺麗に紋印が浮かんでくるのが美麗でセクシーだと奴隷商が娼婦には敢えてその色で刻むので、淫紋なんて呼ばれるのですよ」

 なるほど! だから先程湯上りだった小太郎の肌にはあんなにはっきり紋印が浮かび上がっていたのに、今は薄くなってしまっているのか!
 因みに犯罪奴隷の場合、その犯罪歴が目に付くように腕や首など目に付きやすい場所にはっきりとした色で奴隷紋を刻むのが定石なのだそうだが、娼婦に堕とされた女性達のほとんどは自身や家族の借金によって奴隷になる者がほとんどなので、大きな犯罪は犯さないだろうという判断からあまり目に付かない場所に奴隷紋が刻まれる事が多いのだとか。
 なんだかひとつ大人の階段を昇った気分だよ。なにせこちらの世界へ来てから僕は娼婦と呼ばれる人に会った事もなければそんなお店に出向いた事もない。だから、当然この話は僕には知りようもない情報なのだ。
 小太郎の紋印を見てすぐに『淫紋』なんて言葉が出てきたアランはそういうお店に行った事があるのだろうか? あまつさえ見た事があるのだろうか?
 目に付きにくい場所なんて普段は隠してる場所だもんな、どんなタイミングで見る事になるのかなんてお察しだよ。童貞には刺激が強過ぎる。

「あ、あの……奴隷紋って、ボク、なんか悪い事しましたか!? ボク、奴隷なんですか?」

 小太郎がまたしても泣きそうな表情で僕達に問うてくるのだが、誰も彼に明確な返答をする事ができない。
 奴隷紋を体に刻まれた勇者様、か。うん、全く意味が分からない。

「この紋印は淫紋を模しているようですが奴隷紋は見ればある程度どんな犯罪を犯して奴隷になったのか来歴が分かるようになっているものです。けれど、この紋印に関してはそう言った情報は皆無ですね、奴隷紋というよりはマーキング、と言った感じでしょうか」
「マーキング?」
「ええ、コタローはこの紋印を入れた術者に居場所を捕捉されています、ちょっと物騒なのでとりあえず捕捉の妨害ジャミングをしておきますね」

 そう言うとルーファウスは小太郎の紋印に掌をかざして術式を発動する。すると小太郎の紋印が反抗するように一瞬発光したのだが、その光はすぐに消えた。

「闇の魔力の干渉はこの紋印に起因しているというのはあながち間違っていないかもしれません、念の為、宿屋を変えた方が良さそうです」

 そんなルーファウスの一言で僕達は急遽宿屋を変更する事になった。せっかく落ち着いたのに忙しないなと思わなくもないけど、変な人に襲撃されるのも嫌だからね。
 幸いこの街は観光地でもあり、宿屋はいたる所にある。急な申し入れに宿屋のフロント係は驚いたような表情を見せたが、他にも系列の宿屋があるとそちらを案内してくれたので僕達はそちらへ向かう事になった。

「そういえば今朝方、馬車の周りを何者かが窺ってた気配が残ってたのもコタローを狙ってた奴だったのかもな」

 そういえばライムも夜間に自分をぷにって何処かへ行った人がいたと言っていたなと思い出す。その真夜中の訪問者に然程の害意はなさそうだと思っていたのだが、自分が追われる立場ではなくなった事もあって少し気を緩め過ぎていたかもしれないなと僕は反省した。

 先の宿屋を決めた時点ではまだ日暮れ前だったのだが、何だかんだと日も暮れてしまい僕達は道を急ぐ。宿屋への道の途中にある繁華街にはまだ煌々と灯りが灯っいて、夕方から早々と飲み始めた飲兵衛達が出来上がり始める時間、繁華街はたいそう賑わっていた。

「なぁ、この際だからちょっと店に寄っていかないか?」

 良い匂いの漂う繁華街、活気のある酔っ払いの声を聞き、アランがそんな事を提案する。
 まぁ、僕達はまだ夕飯を食べていないし、ルーファウスなんか昼食すらも食べていないのだから、この辺で晩御飯を食べるのに否やはない。
 ただ人数が多いので宿屋を先に押さえておいた方が良いだろうという判断で宿屋に向かっていたのだが、この美味しそうな匂いには抗い難い。
 成長期真っ只中で食べ盛りのロイドと小太郎も腹を空かせていそうな気配を見せたので、僕達は一旦宿屋へ向かう足を止め、先に夕食をとる事に決めた。
 僕達の入った定食屋の店内は活気に満ちていて、客は皆思い思いに飲食を楽しんでいる。僕達は店員に案内されるがままに席に着いた。
 「昼食は正直微妙だったから」と、味のない肉塊を昼食に食していたアランとロイドは苦笑いを浮かべつつ、濃い目の味付けの料理と酒を次々に注文していく。ルーファウスはそんな彼等を呆れたように見やり、副菜的な物を頼んでいる。どのみち最終的には皆でつつく形の大皿料理だからね。

「小太郎君は何食べたい?」
「ボク、メニュー見てもよく分からないので……」

 確かに魔物肉の料理なんて魔物の名前と種類が分からなければ味の想像もできないだろうし、それは野菜や調味料に関しても同じ。料理名を見て、これはこういう物だと分からないと注文は難しいか。
 そういえば僕もこの世界に来たばかりの頃は店で適当な物を注文して痛い目にあった事もあったなと、なんだか懐かしい気持ちになった。
 小太郎は宿屋を出てからずっと元気がない。元々大人しい性格の小太郎が更に委縮してしまったのはルーファウスのせいだと思うけど、そういえばルーファウスは小太郎に一言も謝罪してないよな。ここは一度きちんとルーファウスに謝罪させなければとルーファウスの方を向くと、視界の先に長い黒髪が揺れて僕はそちらに視線を向けた。

「タケル、どうかしましたか?」

 僕の視線に気付いたのかルーファウスが首を傾げた。

「なんか向こうに黒髪の人が居たので。この世界って意外と黒髪の人って珍しいですよね……って、そうじゃない! ルーファウスは小太郎君に謝って!」
「は? 何をやぶから棒に」
「やぶから棒じゃない! さっきの完全にルーファウスの早とちりだったし、小太郎君に怖い思いさせたのルーファウスなんだから謝ってください!!」
「何故私が謝罪しなければならないのですか? そもそも紛らわしい体質のコタローが悪いのであって、私に一切の落ち度はありませんよ。それに元を正せばコタローを拾ったりしなければ、こんな面倒事に巻き込まれる事もなかったのです、感謝されこそすれ、謝罪の意味が分かりません」

 全く自分の非を認めようとしないルーファウス、僕はその態度に少しカチンとくる。

「大体さぁ、いつもルーファウスはそうやって――」
「あ、あ・あ……いいです、いいです、やめてくださいタケルさん! ボク、大丈夫なんで!!」
「やだぁ! ちょっと! マジでコタじゃない!! 久しぶり、あんた今まで何処行ってたのよ!」

 突然響いた女性の声。小太郎が驚いたようにそちらを向き、僕もそれにつられるようにそちらに視線を向けた。
 視線の先に立っていたのは冒険者風の出で立ちの女騎士(?)さん、胸元を隠す程度の丈の短いプレートアーマーを身に着けているので騎士だと判断したが、腹の辺りは露出しているのでその防御力には首を傾げざるを得ない。
 下半身もある程度防御力の高そうな防具を身に着けているものの何故かやはり露出部分が多くて、すらりと伸びた生足が眩しくて仕方がないよ。

「え、なんで……」
「何でって、なによ? あたしがここに居たらなんか不都合でもあるわけ!?」
「そ・そういう訳じゃないけど、茉莉ちゃんはお城に居ると思ってたから……」

 ん? んん? 今、小太郎君は彼女に何と言った? 

「マツリ、何か問題でもあったか?」

 今度は彼女の後ろからやたらとキラキラした歳若い騎士様が登場した。無地で一見地味に見えるのだが、高級そうな生地で仕立てられた衣服を纏い、身に着けている装飾品はどれもこれも細かい所まで細工が施されている。
 まるで絵本の中の王子様がそのまま飛び出してきたかのような金髪碧眼の美青年は女騎士に爽やかすぎる笑みを見せて彼女の肩を抱いた。
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