童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

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第四章

侵入、そして現れたのは

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 部屋の中は薄暗かったのだが、まるで僕達が現れたのを察知したかのように灯りの火力が上がり部屋の中が明るくなった。魔法で人感センサーのようなものを搭載しているのだろう。窓はない。ルーファウスの言う通り、ここは地下室なのだと思う。
 部屋には扉があったが、鍵はかかっていなかった。まぁ、ここまできっちりとセキュリティ管理をしているのであれば、易々侵入を許すなど想定していないのだろう。

「ルーファウス、ここには誰か住んでいるのか?」
「もし、現在父に愛人がいるのであれば居るかもしれませんね」
「え……」
「私もここ最近の父の動向までは把握していませんので、居るとも居ないとも言えません。私の知る限りではここはあくまで別邸で、愛人の住まいですのでいれば居るとしか言えないのです。ああ、管理人は居ると思いますよ。どうやらコタロー達が客人として扱われているようなので、本宅から使用人も数名こちらへと派遣されてきているかもしれませんね」

 別邸に愛人を囲うって何だか少し背徳的だよな、貴族でお金を持っているとやはり複数の人間とそういう事をしたくなるものなのだろうか? 僕にはそういうハーレム願望的なものが無いので理解できない。
 昔、夜のお店に連れて行かれた事もあるけれど女の子達にちやほやされるの苦手なんだよな……
 ルーファウス自身、自分は妾の子だって言っていたし、ルーファウスの父親は常に何人か愛人を侍らせているタイプの人なのだろうか? そういえば、小太郎が紋印を刻まれたであろう時も少し嫌らしい触られ方をして嫌だったと言っていたのを思い出す。

「俺はそういう話を聞きたかったんじゃなかったんだがな。あくまで侵入して大丈夫なのか聞きたかっただけで、用心棒的な奴はいないのか?」

 気まずげにアランが頬を指で掻く。

「見ての通り防犯面は万全なので用心棒は必要最低限ですね。居ても二人か三人程度でしょう」
「まぁ、それならいいけどよ。それにしても愛人か、良いご身分だな」

 アランの言葉にルーファウスは何も答えず「行きますよ」と扉の向こうへと向かう。扉の向こうは階段で上っていくと、先程ライムの分裂体から受け取った情報通り目の前に明るく長い廊下が現れた。
 そして先程は視界に入らなかったのだが、目の前には誰かの肖像画。それはルーファウスによく似た男性とその隣にはとても美しい女性がにこやかに微笑んでいる仲睦まじい感じの肖像画だった。
 ルーファウスに似た男性は姿形はルーファウスと似ているのだが、髪の色だけが違っていて、その人の髪の色はブロンドだった。そして傍らに座る女性の髪色はルーファウスによく似たシルバーブロンドだ。
 その肖像画を見た瞬間、ルーファウスはちっと舌打ちを打ち「悪趣味な」と、小さく吐き捨てた。この様子では詳細は聞かない方が賢明そうだな。
 廊下を左右見渡して、人の気配が無かったので僕達はそのまま右の廊下を進んでいく。スライムの視界は低いので先程はほぼ廊下しか見えていなかったのだが、廊下に並ぶ調度品はずいぶん高価な物に見える。
 人の気配はしないのだが、どこを見ても掃除が行き届いていて確かにここには誰かが暮らしているという気配がある。その割に人が動く気配も話し声すらも聞こえないのが不思議で仕方がない。
 廊下の突き当りを曲がり階段を上っていくと階段の踊り場にまた肖像画が現れた。今度は先程の肖像画と構図は似ているのだが描かれているのは二人の子供だ。先程は女性が椅子に座り、男性がその後ろに立っているような構図だったのだが、今度は綺麗な服を着せられた小さな少年が足の付かない椅子に座り、その横にその姉と思われるドレスの少女が立ち、にこりとこちらへ笑みを見せていた。
 ルーファウスはその肖像画を見て、またしても眉間に皺を刻む。

「何のつもりでこんな物を……」
「ルーファウス、どうかしたか?」
「いいえ、行きますよ」

 階段を上りきると目の前には右へと続く廊下、真っ直ぐ進んで三部屋目に小太郎とロイドは囚われているはずだ。

「何だか拍子抜けするほどあっけなく着いたんだが、大丈夫か?」

 アランの問いにルーファウスは答えない。確かに地下室からここまで屋敷の者に誰一人として遭遇しなかったし、囚われていると思われる二人の部屋の前には見張りすらいない。ここまで簡単に事が進むと何か罠でも仕掛けられているのではないかと不安になるくらいだ。
 扉には当たり前だが鍵がかかっている。

「ロイド君、小太郎君」

 扉をノックして中に声をかけるとしばらくの沈黙の後「タケルか?」とロイドの声で返事が返ってきた。

「良かった、今、扉開け――」

 言いかけたところで鍵がかかっているはずの扉がすっと内側へ開き、瞬間驚いて固まってしまった僕の後ろに立っていたルーファウスが僕を抱き締めるように後ろへ引いた。
 扉に手をかけ僕達の前に立っていたのは先程廊下の肖像画で見た人物だ。その人はまるで何事もなかったかのように「よく来たね、待っていたよ」と親し気にこちらへ笑みを見せた。

「一体誰を待っていたと?」

 僕を抱き締めたままのルーファウスの声が強張っている。目の前の男性は「そんなに怖い顔をするな」と、まるで悪戯が成功した子供のように綺麗な長いブロンドヘアを揺らし笑った。

「最近では家にも帰ってこない放蕩息子を家に招いただけだろう? まさかお前が勇者様と行動を共にしているとは思わなかったよ」
「私はとうの昔に勘当されているはずですが?」
「ホーリーウッド家からの放逐は長老達が勝手に言っている事だろう? 我が家には関係のない話だ。私だって今となっては別にホーリーウッドの名など捨ててしまって構わないのだよ。便宜上名乗ってはいるが、そろそろ切り捨ててもいいと私は思っている」

 にこやかだった男性の表情がすっと真顔になって、形だけ口元は笑みを浮かべているが細められた瞳は笑っておらずゾクッと背筋に怖気が走った。
 ルーファウスによく似た綺麗な顔、相当歳を経ているはずなのに、若々しいその外見からは歳を感じさせない。
 エルフって本当に年齢不詳だよな、一体この人は何歳なのだろうか?

「その言葉、母上や姉上が存命のうちに聞きたかったですね」
「人というのは短命だからね……」

 彼は少し悲し気に瞳を伏せる。
 ルーファウスを息子と呼んだこの人は間違いなくこの国の総務大臣アルバート・ホーリーウッドその人なのだろう。

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