童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

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第四章

ルーファウス、過去を語る③

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「姉は王宮で皆と共に聖魔法を学びたいと言い出して、私達だけの生活は終わりを迎えます。それは私が5歳になる頃でした。母はその頃にはベッドに伏せる事が多くなり、そんな母を見ていたから尚更に姉は母の病にも対抗できる術を見付けだしたかったのかもしれません」

 聖女見習いとなったルーファウスの姉は家に居る事が減り、ルーファウスはこの大きな屋敷の中で一人ぽつんと残されて過ごす事が増えていった。
 自分を構ってくれる大人たち、執事のセルジュやメイド達はもちろんその間もルーファウスの傍に居たのだが、ルーファウスの喪失感はとても大きかった。
 自分も姉同様に聖魔法を学べばまた一緒にいられると思いはしたらしいのだが、あいにくルーファウスには聖魔法の素質はなかった。
 けれど魔術自体の素質は群を抜いている事が判明してルーファウスはエルフの里へと連れて行かれる事が増えていった。
 エルフは元来平和主義で争いをあまり好まないのだが、それでも戦わなければならない時には肉弾戦よりも魔術戦を好む。武器を使うにしても弓などの遠距離用で剣などはほぼ使わない。
 そんなエルフの特性をルーファウスは見事に引き継いでいた。
 エルフの中でも類稀な魔術の才能、けれど血統主義でもあるエルフの中でハーフエルフであるルーファウスが如何に才能を発揮した所で彼を手放しで褒める者はほとんどいなかった。
 むしろ、人の血の混ざったハーフエルフの子供が優秀であると知れ渡るほどエルフの里の中で彼は孤立していった。

「当時父は王宮勤めでそこそこ出世していてエルフの里にも何かと便宜を図る事も多かったようで、表立って父の子である私に何かを言ってくるような者はいませんでした。ですが、だからと言って居心地がいいとはとても言えません。加えて父の本妻である女性がホーリーウッドの本家筋で、父とはいとこ関係だったのですが力関係は妻の方が強かった、なので余計に妾の子である私に周りは冷たく当たったのでしょうね」

 そんな中、タロウはちょこちょことルーファウスの前に現れてはルーファウスに魔術を教えていった。それは今まで学んでいた魔術とはどこか違っていて、けれどその術は今まで習ったどんな術よりも優れていた。
 タロウは『ルーファウスは筋が良い』と褒めて伸ばし、気が付けば四属性魔法でルーファウスの右に出る者はいない程にまでルーファウスの魔術は洗練されていった。
 けれど、それは同時に大の大人でさえもルーファウスの魔術には敵わないという所までいってしまい、ルーファウスはますます孤立を深くしていく。
 それでもまだタロウがルーファウスの傍にいる間は良かった、けれどある時を境に急にタロウはルーファウスの前に姿を表さなくなり、ルーファウスはそれに多いに戸惑った。

「エルフの里に現れなくなったタロウが王宮に暮らしている事は知っていました、なので私は会えないと分かっていながら父への面会とかこつけて王宮へと行ってみたのです」

 まだ幼かったルーファウスは子供特有の無鉄砲さで父や従者の目をかいくぐり王宮の中をタロウを探して回った。そして後先考えないその行動で王宮内で迷子になった。
 そして迷子になったその先で見たものは……

「まぁ、いわゆる大人の情事というやつです。相手はもちろんフロイド国王陛下、私はまだその時二人の関係を知りませんでしたし、二人が何をしているのかも分かりませんでした。ただ、見てはいけないものを見てしまったという思いだけはありました。私はその場を逃げ出した、そしてそれっきり私はタロウには会えなくなりました。父に何故タロウは姿を見せないのかと問うと、父は彼は遠くに行ってしまった、とそれだけです。まるで形見のように彼の髪留めを渡されて、それ以上には父は何も語ってはくれなかった。語った所で幼い私では理解もできないと思われていたのかもしれませんけれど」

 エルフの里ではタロウは国王陛下に監禁されているとも、既に亡くなっているとも噂され、詳しい事情を知る者は誰もいなかった。
 例え知っていたとしても幼いルーファウスにその真実を語る者は誰もおらず、いつしかルーファウスもタロウとはもう二度と会えないのだと理解するようになっていた。
 その当時ルーファウスの父アルバートはまだ現在の地位には付いておらず王宮内でもまだ官僚の一人でしかなかったらしい。それでも国王陛下の覚えはめでたく、出世コースをひた走っていた。
 そしてアルバートの出世を決定づけた出来事、それが姉の婚姻だった。
 タロウが去り、引き籠りがちだったルーファウスへと告げられた姉の結婚の知らせ。姉はまだ当時16だった。しかも相手はあのフロイド国王陛下だと聞いてルーファウスは怒りに震えた。
 元々国王陛下とはほぼ面識などない、初対面で向けられた険しい表情と言葉だけでも彼を嫌うには充分だったが、その頃にはあの男が自分からタロウを奪った事も理解していた。
 タロウの消息はまったく分からない、そして今度は姉までも自分から奪っていくのかと言葉にならない怒りが胸の内を焼いた。

「なぁ、ルーファウス、話の腰を折って悪いんだが、お前の姉ってのはもしかして聖女テレサの事なのか?」
「ええ、そうですよ」

 ルーファウスが頷くと、アランは「マジか……」と絶句した。
 聖女テレサ、前にちらりと聞いた事がある。彼女はフロイド国王陛下の妻で存在を消されてしまったタロウの代わりに教会を設立したとされている人物だ。
 まさかそれがルーファウスの実の姉だったなんて、そんなの想像もしていなかったよ。

「ああ、でも確かに聖女テレサはホーリーウッド出身なのに短命だったと聞いている。なるほどそういう事だったのか……」
「姉は人としての寿命は全うしたと思います。ただエルフと比べてしまえばとても……とても短命でした。姉は父の決めたその婚姻を粛々と受け入れていました、けれどそれは決して姉の望んでいた婚姻ではありませんでした」

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