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第五章
二人のアラン
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僕達が王城に招かれ何だかんだとあって2日後、今日は僕達は城下町へと繰り出している。
勇者であると判明したロイドと聖剣グランバルトの処遇を巡り城内では未だ有識者の間で喧々諤々の話し合いが続いているらしいのだけれど、それに関して僕達は当事者のようでありながら完全に蚊帳の外だったりする。
そもそも聖剣グランバルトはロイドから離れようとしないし、返したくても返せない状況なのだ。それが気に入らない者と、それならそれで勇者として戦ってもらえばそれでいいという者達の二つの派閥に分れてなかなか話し合いに決着がつかないままお城の中に軟禁される事2日、アランとの合流の約束を放置する訳にもいかなかった僕達は城下町へとやって来たのだ。
とはいえ外出許可が下りたのは僕とルーファウスの二人だけでロイドと小太郎、そして聖剣グランバルトはそのまま城内に留め置かれている。
まぁ、一度は行方知れずになった勇者と聖剣だ、危機が迫る中でまたしても出奔されたら困るだろうからな。
あと、ちなみに茉莉達聖女様御一行なのだけど、オロチと一緒に現在魔物の楽園の方に行っている。
何故そんな事になってしまったのかを一から話すとずいぶん長くなってしまうので割愛させてもらうのだけど、どうしてもオロチとデートがしたかった茉莉と「だったら楽園の方に来ればいい」と簡単に言うオロチとの口約束で王家と従魔師ギルドを巻き込んだ大事になってしまって、これまた色々あって大変だったんだ……
最終的には従魔師ギルドが折れて茉莉の楽園への招待は叶ったのだけど、そこに至るまでが僕にとっては結構な修羅場で、まだ仲良くなってもいない王都の従魔師ギルドのお偉いさんには睨まれるし、茉莉に絶対服従のレオンハルト王子は王家の権力を振りかざしてくるしで散々な目に遭った。
結果的には魔物の楽園は王家認知の施設であった事も判明して(というか、魔物の楽園の製作指示をしたのがそもそも初代国王陛下だった)事なきを得たのだけど、関係が微妙になってしまった王都の従魔師ギルドではオロチのお酒を調達してもらうのも難しくなってしまって、僕の懐が少々痛い。
そんなこんながありつつもアランとの待ち合わせの日、約束の場所は城下町の中央広場にある噴水前だ。どうやらそこは王都の観光スポットでもあるようで大いに賑わっていた。
「うわぁ、人が多いですね。アランとちゃんと合流できるかな……」
「平気でしょう、アランは目立ちますし」
熊の半獣人であるアランは背が高い。さすがに王都なだけあって田舎町に比べて獣人の数も多いのだけど、そんな中でもアランの身長は頭一つ分抜けているので僕達がアランを見付けるのは簡単かもしれないけれど、アランの方はどうだろうか?
この人の数ではアランが僕達を見付けだすのは大変だろうなという思いから、僕はアランが何処から来ても分かるように辺りを見回した。
とはいえ、アランとは逆で道行く人達より背の低い僕は人垣によって視界が塞がれてしまうのであまり遠くまでは見渡せない上に、頼みの綱のルーファウスは周囲より僕ばかりを見ているので役に立ちそうにない。
どうしたものかと思っていたら、通りの向こうから大柄な男が二人こちらへ向かい歩いて来るのが見えて僕はその見覚えのある体躯の持ち主に目を凝らした。
男の片方は腕に小さな子供を抱いており、腕の中の子供はその男に随分懐いた様子で首に抱きついている。あれは恐らく親子だろうなと思い、顔をよく見てみればどうにもそれは見知った顔で僕は戸惑う。
「アランだ」
そう、子供を腕に抱いている男はアラン。けれどどうにも違和感を拭えないのは子供がアランにべったりと引っ付いている事。
いや、元々アランに子供がいる事は聞いていたし、もしそれがアランの娘なのだとしたらその光景は当たり前の光景とも言えるのかもしれないのだけれど、その子が10年王都に帰っていないと言っていたアランの子だと仮定すると子供が明らかに幼過ぎるのだ。
戸惑いを隠せない僕はその仲睦まじい父子の傍らにいる男を見やり、またしても戸惑う。
「アランが二人いる……」
そう、仲睦まじい親子の傍らで子供の様子を窺い見るようにしている隣の男もまたアランで僕は戸惑いが隠せない。
「タケルは一体何を……」
そう言って僕の視線の先を見やったルーファウスもそれ以上言葉を続けられなかったようで、ぽかんと二人のアランを見やる。
「アランって兄弟いるって言ってましたっけ?」
「私は聞いていませんね」
アランはよく喋る男だ。なので王都に住まう妻子の話はよく聞かせてもらっていたのだが、兄弟の話は今まで一度も聞いた事がない。しかもここまでそっくりだという事はもしかしてアランは双子なのか?
どちらが僕の知る本物のアランなのかが分からなくて、まじまじと三人を観察していると子供を腕に抱いている方のアランが僕に気付き傍らのアランに声をかけた。すると子供を抱いていない方のアランがこちらを見やり、少し困ったような表情で僕達に大きく手を振った。
僕達が二人のアランに近寄っていくと、とても似ていると思っていた二人のアランの子供を抱いている方の腕や顔に幾つかの傷跡が見てとれた。
その傷は出来たばかりという感じではなく、昔に負った傷が完治しきらず残った傷跡という感じだ。僕達の仲間であるアランにはそんな傷跡などなかった事を考えると恐らく僕達のアランは子供を抱いていない方なのだとここでようやく判別ができた。
それにしてもこの二人、本当によく似ている。どうにか二人の判別を付ける事ができた僕だけど、それでもうっかりすると間違えてしまいそうだ。
「アラン、こちらの方は?」
「えっと、何というか……」
どうにも歯切れの悪いアランが言葉を濁す傍らで、子供を抱いたアランによく似た男は「俺はアランの兄でアレンって言うんだ、よろしくな」と、笑みを浮かべた。その笑い方が本当にもうアランにそっくりで僕はまたしても二人を見比べてしまう。
「アランとアレン、名前までそっくりなんですね」
「ははは、まぁな」
そう言って笑うのはアレンの方でアランは終始浮かない表情だ。なんだろう? アランは何かお兄さんにわだかまりでもあるのだろうか?
確かに王都には因縁深い人達が大勢いるとは言っていたけど、こんな浮かない表情のアランを見るのは初めてだ。
「その子はアレンさんのお子さんですか?」
「ああ、娘のアリ……」
「この子の名前はアリーだ、俺の姪っ子可愛いだろう!」
アレンの言葉を遮るようにアランが告げた子供の名前、確かアランの娘の名前はアリアだったから子供の名前までよく似てる。顔だけじゃなく命名センスまで似ているのだろうか? やはり双子?
僕が娘さんの顔を覗き込み「いくつ?」と問いかけると娘は小さな指を三本立てて「みっちゅ」と一言言ってほにゃんと笑った。この子、滅茶苦茶可愛いな。
「それにしてもアランから兄弟の話なんて聞いてなかったから驚きましたよ」
「ああ、俺も驚いた。まさかこんな事になってるなんて思わねぇし……」
歯切れの悪いアランが溜息を零しながら傍らの兄をちらりと見やると、兄であるアレンは「そういう運命なんだよ」と娘の頭を撫でた。
けれど二人がなんの話をしているのかまるで分からない僕は「どういう事ですか?」と思わず首を傾げてしまう。
しかし僕の問いにアランは答えず、アレンもまたにこにこと何も語らない。
「ルーファウス、タケル、俺はお前達に会えて嬉しいよ」
「え? は? どうも……」
アランの兄とはいえ、何だか妙に親しみを込めてそう言われてルーファウスは少々戸惑い気味だ。元々ルーファウスは人見知りが激しいから余計にだよな。
アランは割と誰にでもフレンドリーで、それはやはり兄も同じなのだなと「僕も嬉しいです」と手を差し出した。
差し出した手を握ってくれたアレンの手はごつごつしていて、僕はふと気が付いた。
「もしかしてアレンさんって軍に所属してたりしますか?」
「あ? ああ、よく分かったな。俺はグランバルト王国軍、重装歩兵隊に所属している」
やっぱり! ルーファウスのお父さんやレオンハルト王子がアランの事を知っているような雰囲気だったのはそのせいか。確かにこれだけ似ていればアレンとアランを間違えたとしても不思議ではない。
「王国軍、重装歩兵隊……あんた冒険者じゃないのか?」
アランが初めて聞いたというような顔でアレンを見やる。それに「まぁ、色々あるんだよ」とアレンは頷いた。
勇者であると判明したロイドと聖剣グランバルトの処遇を巡り城内では未だ有識者の間で喧々諤々の話し合いが続いているらしいのだけれど、それに関して僕達は当事者のようでありながら完全に蚊帳の外だったりする。
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結果的には魔物の楽園は王家認知の施設であった事も判明して(というか、魔物の楽園の製作指示をしたのがそもそも初代国王陛下だった)事なきを得たのだけど、関係が微妙になってしまった王都の従魔師ギルドではオロチのお酒を調達してもらうのも難しくなってしまって、僕の懐が少々痛い。
そんなこんながありつつもアランとの待ち合わせの日、約束の場所は城下町の中央広場にある噴水前だ。どうやらそこは王都の観光スポットでもあるようで大いに賑わっていた。
「うわぁ、人が多いですね。アランとちゃんと合流できるかな……」
「平気でしょう、アランは目立ちますし」
熊の半獣人であるアランは背が高い。さすがに王都なだけあって田舎町に比べて獣人の数も多いのだけど、そんな中でもアランの身長は頭一つ分抜けているので僕達がアランを見付けるのは簡単かもしれないけれど、アランの方はどうだろうか?
この人の数ではアランが僕達を見付けだすのは大変だろうなという思いから、僕はアランが何処から来ても分かるように辺りを見回した。
とはいえ、アランとは逆で道行く人達より背の低い僕は人垣によって視界が塞がれてしまうのであまり遠くまでは見渡せない上に、頼みの綱のルーファウスは周囲より僕ばかりを見ているので役に立ちそうにない。
どうしたものかと思っていたら、通りの向こうから大柄な男が二人こちらへ向かい歩いて来るのが見えて僕はその見覚えのある体躯の持ち主に目を凝らした。
男の片方は腕に小さな子供を抱いており、腕の中の子供はその男に随分懐いた様子で首に抱きついている。あれは恐らく親子だろうなと思い、顔をよく見てみればどうにもそれは見知った顔で僕は戸惑う。
「アランだ」
そう、子供を腕に抱いている男はアラン。けれどどうにも違和感を拭えないのは子供がアランにべったりと引っ付いている事。
いや、元々アランに子供がいる事は聞いていたし、もしそれがアランの娘なのだとしたらその光景は当たり前の光景とも言えるのかもしれないのだけれど、その子が10年王都に帰っていないと言っていたアランの子だと仮定すると子供が明らかに幼過ぎるのだ。
戸惑いを隠せない僕はその仲睦まじい父子の傍らにいる男を見やり、またしても戸惑う。
「アランが二人いる……」
そう、仲睦まじい親子の傍らで子供の様子を窺い見るようにしている隣の男もまたアランで僕は戸惑いが隠せない。
「タケルは一体何を……」
そう言って僕の視線の先を見やったルーファウスもそれ以上言葉を続けられなかったようで、ぽかんと二人のアランを見やる。
「アランって兄弟いるって言ってましたっけ?」
「私は聞いていませんね」
アランはよく喋る男だ。なので王都に住まう妻子の話はよく聞かせてもらっていたのだが、兄弟の話は今まで一度も聞いた事がない。しかもここまでそっくりだという事はもしかしてアランは双子なのか?
どちらが僕の知る本物のアランなのかが分からなくて、まじまじと三人を観察していると子供を腕に抱いている方のアランが僕に気付き傍らのアランに声をかけた。すると子供を抱いていない方のアランがこちらを見やり、少し困ったような表情で僕達に大きく手を振った。
僕達が二人のアランに近寄っていくと、とても似ていると思っていた二人のアランの子供を抱いている方の腕や顔に幾つかの傷跡が見てとれた。
その傷は出来たばかりという感じではなく、昔に負った傷が完治しきらず残った傷跡という感じだ。僕達の仲間であるアランにはそんな傷跡などなかった事を考えると恐らく僕達のアランは子供を抱いていない方なのだとここでようやく判別ができた。
それにしてもこの二人、本当によく似ている。どうにか二人の判別を付ける事ができた僕だけど、それでもうっかりすると間違えてしまいそうだ。
「アラン、こちらの方は?」
「えっと、何というか……」
どうにも歯切れの悪いアランが言葉を濁す傍らで、子供を抱いたアランによく似た男は「俺はアランの兄でアレンって言うんだ、よろしくな」と、笑みを浮かべた。その笑い方が本当にもうアランにそっくりで僕はまたしても二人を見比べてしまう。
「アランとアレン、名前までそっくりなんですね」
「ははは、まぁな」
そう言って笑うのはアレンの方でアランは終始浮かない表情だ。なんだろう? アランは何かお兄さんにわだかまりでもあるのだろうか?
確かに王都には因縁深い人達が大勢いるとは言っていたけど、こんな浮かない表情のアランを見るのは初めてだ。
「その子はアレンさんのお子さんですか?」
「ああ、娘のアリ……」
「この子の名前はアリーだ、俺の姪っ子可愛いだろう!」
アレンの言葉を遮るようにアランが告げた子供の名前、確かアランの娘の名前はアリアだったから子供の名前までよく似てる。顔だけじゃなく命名センスまで似ているのだろうか? やはり双子?
僕が娘さんの顔を覗き込み「いくつ?」と問いかけると娘は小さな指を三本立てて「みっちゅ」と一言言ってほにゃんと笑った。この子、滅茶苦茶可愛いな。
「それにしてもアランから兄弟の話なんて聞いてなかったから驚きましたよ」
「ああ、俺も驚いた。まさかこんな事になってるなんて思わねぇし……」
歯切れの悪いアランが溜息を零しながら傍らの兄をちらりと見やると、兄であるアレンは「そういう運命なんだよ」と娘の頭を撫でた。
けれど二人がなんの話をしているのかまるで分からない僕は「どういう事ですか?」と思わず首を傾げてしまう。
しかし僕の問いにアランは答えず、アレンもまたにこにこと何も語らない。
「ルーファウス、タケル、俺はお前達に会えて嬉しいよ」
「え? は? どうも……」
アランの兄とはいえ、何だか妙に親しみを込めてそう言われてルーファウスは少々戸惑い気味だ。元々ルーファウスは人見知りが激しいから余計にだよな。
アランは割と誰にでもフレンドリーで、それはやはり兄も同じなのだなと「僕も嬉しいです」と手を差し出した。
差し出した手を握ってくれたアレンの手はごつごつしていて、僕はふと気が付いた。
「もしかしてアレンさんって軍に所属してたりしますか?」
「あ? ああ、よく分かったな。俺はグランバルト王国軍、重装歩兵隊に所属している」
やっぱり! ルーファウスのお父さんやレオンハルト王子がアランの事を知っているような雰囲気だったのはそのせいか。確かにこれだけ似ていればアレンとアランを間違えたとしても不思議ではない。
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皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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