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18week

昔取った杵柄だがな!

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 灰になった僕はキヨヒコに、会長室直通エレベーターでオフィスの地下駐車場へと、そのまんま降ろされ、役員の入り婿待遇で許された白の通勤車に押し込められた。

「アマネはとりあえず帰れ!後の事はしゃーない、オレが引き受けるわ。で、カレンさん 探せ!やれるだろ?アマネよ。」

 そう言ってキヨヒコは、僕の首に下げた営業1課長表記の社内IDを外すと、自分の首にひっかけ

『バタン!!』

 車のドアを勢いよく閉める。

 そんな強引なキヨヒコが恨めしく、僕は少々不貞腐れた顔をしつつも車のエンジンをかけて、ウィンドウを下げる。

「会長御用達の弁護士が見つけられんもん、探せるって、キヨは本気で思ってんの?」

「健闘を祈る!!やれ!」

 窓越しに、片手で首から下げた僕のIDを摘まんで、ブラブラと振るキヨヒコは満面の笑顔だ。

 考えれば、

 直通エレベーター様々。

 なんせ例の受付嬢、ヤシロ女史のいるエントランスを通らなくてすんだわけで、このルートはキヨヒコの英断だ。

「だよなー。」

 仕方なく僕は観念して、車のライトを合図に点滅させると、ミラーにキヨヒコを映しながらマンションに向け車を走らせ、、


 今にいたる。

 しっかし、この2週間!!外食!外食!外食三昧!
 まともな家メシを食っとらんがな!僕!
 
 さすがに妻が家出で、いつものハウスメイドを寄越してとは妻の実家には言えない。

「学生ん時でさえ、家メシ食いっぱぐれた事ねーもんな。」

 実はオフィスから、そう遠くはない自宅マンションは、そこそこの値段であろう立地にある、コンシェルジュ付。

 まあ、全部妻の実家の不動産ね。もちの、ろんで。

「後で、コンシェルジュさまに、 なんか食うもんお願いすっか。」

 程なく着いた僕は、マンションパーキングの定位置に車を停めて、管理スタッフにキーを渡す。

 コンシェルジュにランチを依頼して、僕は今朝とかわらず妻のいない家に入る。

 毎日あんなにビクビクしながら深夜の玄関を開けていた僕でさえ、さすがにこの2週間は堪える。

「そろそろ、自炊すっかなっ?」

 さらに言えば、妻が居れば嫌がるだろうキッチンで、うがいをするのが此の2週間の癖になりつつある
わけで。

「よく、考えたら自炊なんか、上京すぐ以来かもーなー。よし、何んかあるかもーっと。」
 
 すっかり独り言も多くなって、そのままモダンな冷蔵庫に。

 そもそも冷蔵庫なんざ、ミネラルウォーターしか目にしてなかった。

 だって、妻お気に入りで、拘りのキッチンだぞ?
 そうそう、荒せねーよ。

『パタン』

 冷凍庫を開ける。

 僕は地方も地方、ど島出身。田舎もんだ。

 大学と同時に上京して始めたホストバイトのお陰で、なんやかんやと女子手作り飯にあやかれ、有難いことに毎日三食浮かせれてきたからなー。

 クズと言われりゃ、そーかも?いや、この顔を使った生存本能だよねー。

 と、
 ハウスメイドが何か作り置きしてるかもって、

「うお!!さすが!プロは 違うな!色々あるわー!、、   んん?この字って、、。」

 作り置き容器に丁寧に貼られた付箋には、見覚えのある文字が並んでいるけど?これ、

 妻だ。

「え?カレンさん?なんで?」

 ??る?

 妻は生粋の箱入りだ。

 そんでもって、さながら悪役令嬢な容姿と性格をしている。

 一見ね。

「あの実家なんか、絶ってー料理人がメシ作ってんのにカレンさんが、料理?うわ!もしかして、彼氏用? う、2週間前のメシってなんだっ、ヤバ、覚えてねぇ!」

 パカッと容器を開けて、付箋紙を、見る。 

 いや、いっつも遅くに帰ってくっと、映え映えの
プレートがダイニングに用意してあったから、てっきり出来るハウスメイド作だと思ってた僕。

 無数の容器付箋には~ 一部見やると、、

 ロッシーニ風ハンバーグ
 トリュフのボロネーゼ
 カクテルシュリンプ

 ね。書いてる。

 食った。気がする。よーな。ロッシーニがわからんけど!あ、でもこれ希望的観測欲だ、参った。

「もしかして、『彼氏』とやらの手掛かりが、これ?まて!まてまてまて!ガチでやる気入ったー!」

 料理教室にでも通っていたのか?そこで相手と出会うとか?冷凍庫に鎮座する容器が忌々しく見えて、

 僕はいきおい良く冷凍庫ドアを叩き閉めた。

「こんちくょう。ナメんなよ、こーなりゃサンチュアリをガサ入れしてやる。久しぶりにやってやらぁ。」

 僕は、そのまま妻のプライベートルームに向かった。
 夫婦の寝室を真ん中に挟んで、デカいウォークインクローゼットを互いに持っている。所謂サブルームだ。

「1番は、鞄だな、やっぱ。」

 下っぱホストん時、よく店の金とかロッカー荒らして 逃げた同僚とか、先輩の上客を取ってバックレの後輩を探すのにキヨヒコと2人、野郎の部屋を家捜したこと幾度となくだったなあ。 

 だから、キヨヒコは僕に『アマネなら出来るだろ?』と言ったのだ。

「うわ!鞄、多っ!」

 サブルームだけでも20畳はありそうな所にウオール棚が並んで、鞄もギッシリ。

「男なら、ジャケットとパンツのポケットなんだけどなあー。」

 妻の服は、どっちかとゆーとシックだ。

 暗いわけじゃなくて、ややつり目だから、甘色フワフワが似合わないとか思ってんだろなー。

「さて、いっちょやるか!」

 僕はまず、鞄に手を掛けた。

 男のポケットには何らかのブツが残ってる事が多い。

 ライター、ハンカチ、メモ 、たまに既婚の証、エンゲージとかポケットに入れっぱがある。

 そんで、こーゆーのは、けっこー交友関係を洗うといろいろ出てくるんだけど、

「女子はやったこと無いしなー。」
 
 違和感ない鞄達。

 誰かに贈られた物もなさげ。そーゆーのって、わかるよね?

 え?僕が妻に?大抵一緒に本人を連れて行くから、ちゃんと妻好みのモノを贈ってるぞ!

「んー、、、」

 金やカードの流れで、名刺をやりとりするよーな交流相手なら、とうの昔に弁護士が見てるだろうしな。
 電話の記録は論外、一発目に調べるブツだ。

 僕は、幾つかの鞄を さらに裏返して調べていく。

 品のいい、ブランドモノ。とくに問題ない。

 たまに、バックインバックもある。
 クラッチバッグか。パーティー用とかだろーな。

 女モノにも詳しくないとね、ホストは。

「鞄の中を出す時に落ちたモノとかは、こーゆーとこにある。」

 んだよね。

 僕は、ハンギングされている洋服の下を、今度は手で探りながら床も屈んで見ていく。

「見事になんもねーな。」

 まあ、それこそハウスクリーニング掛けられる
ことも想定内。反対側のハンキングも。

 あ、そういや、靴ん中に切符を入れる野郎いたな。
 へんな癖だよ。

「うん? 今なんかあった?」 
 
 ハンキングする洋服、ワンピースの奥に、服がある。

 サマーワンピースか?にしては色が派手いな?

 左右に服を掻き分けて、奥から出してみる。

 派手な赤のホルダーネックの

「これ、ドレス、かよ、て!あ、バッグインバックのクラッチも赤っぽいか、、にしても、おい!これっ!」

 手に持つハンガーのドレスを見、てネームを確認。

 汗が吹き出るっての?!

 間違いない。これは、夜の服ん店のヤツだ。

 夜の歓楽街には、その道御用達の店も入ってて、キャバ嬢や、ホステスを相手に、手頃値段でカクテルドレスを置いてる店がある。  

 独特のデザインネームタグ。

「間違いねーな。」

 思えば、さっきのクラッチバッグもこのドレスと合わせてる?に、見えないこともない。

「て、ことは?」

 そう、彼女、妻カレンは、



 僕の知らない間に ホステスをしていたっちゅーこと?!

 なぜに。

『フロントコンシェルジュです、ご依頼のランチ、お待たせいたしました。お持ちしました。』

 ついでに、このタイミングで下で頼んだランチが 玄関に着たってか?!
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