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第四章  阿羅国

出発の日

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 玲陽率いる飛翔隊には荷物運びに特化した者らがいる。
特にたくましく体の大きい者を選抜してあり、荷物を入れる大きな箱を縄で結び、10人がかりでそれを持つのだ。
大き目のタンスなども運べる寸法だ。
かなりの重量になるのだが、それを運ぶ部隊はクレイダの一族が担っている。

クレイダの種族は魔物だ、人とは違う能力を持ち、そして恐れられていたが、友好が保てるのならば頼りになる。
今や彼らはここに馴染み、人と和が保てており、また意外にも勤勉なところを見せ、人の世界の文字や技術を素早く覚えた。

俺から見ても彼らの能力は人よりも数段上と言える。

阿羅国に来る前は、魔物は獣と変わらないと思っていた者らも、それを見て考えを改め、互いに切磋琢磨できるようになった。

彼らは下半身に特徴がある。
上半身は毛深いだけでほとんど人と変わらないのだが、獣の足を持っていて、通常は靴を履かない。
しかし、町にでるためにはそれは隠さねばならないだろう。

阿羅国の衣装は着物だ。
袴であればごまかしやすいだろうとユーチェンが全て用意した。
俺はそのどこからどう見ても日本の和服と同じ服装に首を傾げた。

紗国とは狐の国と聞いているが、日本と共通点が多そうだ。

「荷が積み終わりました」

玲陽がキレイなお辞儀で礼をした。
俺は軽く頷いて、集まった皆を見渡す。

着物に袴を着け、そしてコートを羽織った飛翔隊は、揃いの青で統一されて、キリリと並んでいる。
心配した足元はゆったりした袴と、大き目にも思えるブーツ型の履物で隠れ、全く違和感はない。
毛深い獣毛の剃られた顔は色黒だが人と見まごうばかりで、角を削った跡が見えないように揃いの帽子をかぶっている。

「良いじゃないか、なんだかこう……いかにも宅配というか……」

俺は思わず笑ってしまって、集まった者に変な顔をされてしまった。

「たくはい?ですか?」

玲陽は不思議そうに尋ねてきた。

「いやいい、なんでもない」

俺は我慢できずに声をあげて笑い、そして皆を見渡した。

旅支度を終えた一行は立派に見えた。
報告では我が国を人攫い国家と罵る者もいるという……
これで少しはイメージが良くなるといいのだが……


「では、由利彦を背負うぞ」

ユーチェンが手伝ってくれて、俺の背に由利彦がぴたりとくっついた。
俺は回されたおんぶ紐を固く結び、肩に置かれた小さな手をポンポンと叩く。

「楽しみだな由利彦」
「はい!」
「万が一、気分が優れないようなことがあったら、すぐに言うのだよ」
「はい!」

由利彦のはしゃいだ返事に場が和み、皆が笑顔になっていく。
子とは、不思議なものだなと、心から思った。

「さあ、ユーチェン、俺とクレイダの間に入って」

角を削り獣毛を剃ったクレイダはニヤリとしてユーチェンの手を握る。

「ユーチェン緊張するな、もし疲れたら身を任せればいい、アタシとアラトがなんとかするからな」
「ええ、何しろ初めての経験ですから、そんなことが無いと自分でも言い切れませんから、ありがたくそうさせていただきますわ」

ユーチェンは素直にそう言うと、ゆっくりと頷いた。

見送りの者たちが遠巻きに我らを囲んでいる。
残る者達には俺がいない間にすべきことをたくさん伝えてある。
彼らはそれを完遂せねばと緊張しているようだった。

俺の息子と娘らはそれぞれの母や乳母に抱かれ、目を輝かせてこちらを見ている。
由利彦は彼らに手を振り、お土産を約束していた。

「さあ、行くぞ、後は頼んだ」

まず初めに玲陽が飛び、その後ろに護衛が5名、次に手を繋いだ俺とユーチェンとクレイダが飛んだ。一番後ろが荷物を持つ者らだ。

朝、まだ早い時間だ、季節は秋で風はそれほど強くない。

「わあああ!すごい、たかい!!!」

背ではしゃぐ我が子の声を聞き、ユーチェンが笑顔で応える。
クレイダも俺も皆、笑顔だった。

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