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第七章 阿羅国という国
静かな森
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しばらく何事もない日は続いた。
阿羅国はこの世界において最北に位置する、雪深い極寒の冬となるのだ。
冬の間は皆家の中でできる手仕事を中心に行い、交易の品を作ることに余念がなかった。
俺は一人で森の中にいた。
時折こうやって、森の奥を歩くのだ。
城の後ろに広がる森は、深く雪に覆われ、膝までの深さ積雪がある。
俺は低空飛行し進んだ。
見えて来たのは、美しい湧き水。
その横に簡単な小屋を立てさせてある、ここは俺の秘密基地のようなものだ。
「湧き水とは不思議なものだ」
凍らずに水のままの池に両手を入れ、そのまま口に含む。
甘い水だ、体の疲れが全て流れていくような、清浄な水。
「さて……」
俺は小屋に入り、簡単に作ったベッドの上に腰かけ、脇に抱えていた書類を広げる。
これは玲陽が持ち帰った様々な国の情報だ。
日本にいる頃から、俺は与えられた部屋で勉強するよりも、図書館やカフェ、公園で参考書を開くことが多かった。
こういう癖は治らないものだなと苦笑する。
玲陽は良くやってくれた。
おそらく、この文面に現れない様々な悪意にさらされたに違いない。
どこからともなく湧き出てきた俺や、魔物のクレイダたちとは違い、歴史の長いラハーム出身の玲陽であっても、白い目で見られ、試される、そんな日々だっただろう。
ねぎらってやりたいのだが、玲陽は何かと用事を思い出し、あまり俺と二人になりたがらない。
俺のそばに他の男たちが増えていくことも、笑顔で喜んでいる。
自分が俺のそばにいると、邪魔になるとでも考えているのかもしれない。
俺の長い一生を思い、孤独であってほしくない、その一心で、俺の周りに人が増えることを喜んで。
もはや、親のようなその愛情に、俺はどう応えればいいのものか。
その時だった、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
ここにいる間は、近寄らぬよう皆に伝えてある、それでも声をかけざるを得ないということか。
俺は悪い予感に心臓がドクリと音を立てたのを聞いた。
のっそりと立ち上がり、扉を押し開ける。
「阿羅彦様!阿羅彦様!」
この声は執務室にいる俺の助手だ、もう近くまでやってきていた、雪景色の森の中に必死な顔が見える。
「なんだ」
俺の問いに助手は叫んだ。
「エクトル様が!捕縛されたとのことです!」
俺の手から書類が落ち、その一枚はハラハラと池に舞った。
少し開いた口から、漏れ出た空気が白い。
頬も、冷たさにパリパリと音をたてて凍っていく。
それは手にも広がり、辺りの木も音を立てて凍って行った。
「ひぃぃ」
助手は俺を見て尻もちをつき、そして驚愕に目を見開いた。
俺はその顔を見てハッと我に返り、魔力を抑える。
とたんに森にしずかに溶けていった。
「あ……あ……」
助手は腰が抜けたまま雪に埋もれていた、
俺は彼に近寄り雪から救い出すと言った。
「すまなかった、驚かせたな」
「いえ……阿羅彦様、そ、それよりも……お早く」
腕の中で震える助手を抱えたまま、城へと飛んだ。
阿羅国はこの世界において最北に位置する、雪深い極寒の冬となるのだ。
冬の間は皆家の中でできる手仕事を中心に行い、交易の品を作ることに余念がなかった。
俺は一人で森の中にいた。
時折こうやって、森の奥を歩くのだ。
城の後ろに広がる森は、深く雪に覆われ、膝までの深さ積雪がある。
俺は低空飛行し進んだ。
見えて来たのは、美しい湧き水。
その横に簡単な小屋を立てさせてある、ここは俺の秘密基地のようなものだ。
「湧き水とは不思議なものだ」
凍らずに水のままの池に両手を入れ、そのまま口に含む。
甘い水だ、体の疲れが全て流れていくような、清浄な水。
「さて……」
俺は小屋に入り、簡単に作ったベッドの上に腰かけ、脇に抱えていた書類を広げる。
これは玲陽が持ち帰った様々な国の情報だ。
日本にいる頃から、俺は与えられた部屋で勉強するよりも、図書館やカフェ、公園で参考書を開くことが多かった。
こういう癖は治らないものだなと苦笑する。
玲陽は良くやってくれた。
おそらく、この文面に現れない様々な悪意にさらされたに違いない。
どこからともなく湧き出てきた俺や、魔物のクレイダたちとは違い、歴史の長いラハーム出身の玲陽であっても、白い目で見られ、試される、そんな日々だっただろう。
ねぎらってやりたいのだが、玲陽は何かと用事を思い出し、あまり俺と二人になりたがらない。
俺のそばに他の男たちが増えていくことも、笑顔で喜んでいる。
自分が俺のそばにいると、邪魔になるとでも考えているのかもしれない。
俺の長い一生を思い、孤独であってほしくない、その一心で、俺の周りに人が増えることを喜んで。
もはや、親のようなその愛情に、俺はどう応えればいいのものか。
その時だった、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
ここにいる間は、近寄らぬよう皆に伝えてある、それでも声をかけざるを得ないということか。
俺は悪い予感に心臓がドクリと音を立てたのを聞いた。
のっそりと立ち上がり、扉を押し開ける。
「阿羅彦様!阿羅彦様!」
この声は執務室にいる俺の助手だ、もう近くまでやってきていた、雪景色の森の中に必死な顔が見える。
「なんだ」
俺の問いに助手は叫んだ。
「エクトル様が!捕縛されたとのことです!」
俺の手から書類が落ち、その一枚はハラハラと池に舞った。
少し開いた口から、漏れ出た空気が白い。
頬も、冷たさにパリパリと音をたてて凍っていく。
それは手にも広がり、辺りの木も音を立てて凍って行った。
「ひぃぃ」
助手は俺を見て尻もちをつき、そして驚愕に目を見開いた。
俺はその顔を見てハッと我に返り、魔力を抑える。
とたんに森にしずかに溶けていった。
「あ……あ……」
助手は腰が抜けたまま雪に埋もれていた、
俺は彼に近寄り雪から救い出すと言った。
「すまなかった、驚かせたな」
「いえ……阿羅彦様、そ、それよりも……お早く」
腕の中で震える助手を抱えたまま、城へと飛んだ。
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