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雨音2
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食堂に着くと、料理長が自ら煮込みうどんを持ってきてくれて、いろんな薬味も広げてくれた。
「わあ、おいしそうだね。味が変化できるようにしてくれたの?お味噌?いいね、栄養もあるし少し溶かしても……でも一回このままで食べてみようね」
僕はいつものように翠の横に座り、食事の世話をする。
最初驚いた給仕らだったが、今はもう誰も驚かない。
「冷ましたからね、熱くないよ……あーん」
口をパクっとあけてちゅるちゅるすする翠は本当にかわいい……
「しっかり噛んでね、そうそう、上手」
一生懸命噛んでおいしいと思ったのかパアと顔に喜色を浮かべる。
料理長もほっとした顔だ。
「よろしゅうございました、翠紗様のお気に召したようで」
「うん、ありがとうね、いつも」
「いえいえ、とんでもございません! 薫様の夕食もうどんでよろしいのですか?」
「うん、僕もうどんでお願い」
なるべく同じものを食べることにしているのだ。
自分と同じだときっと翠が安心するはずだから。
紗国ではお箸もスプーンもフォークもナイフもあって、日本とほぼ同じだ。
だけど翠はどれもうまく使えない。
時々固いパンや、園でもらう生の野菜ぐらいしか食べたことがなかったらしくて……
僕は根気強く箸を覚えさせている。
でも今回は自分で食べれるようにフォークをもたせてみた。
お椀を小さな手で持ってフォークを動かすが、向きが逆になっているのでそれを直してやる。
そしてようやく刺さったものを口に持っていき、ちゅるちゅると食べている。
「うん、上手だよ」
僕は頭をなでなでして褒めた。
「自分で食べてみる?僕もお料理が来たから、こっちを食べるよ」
「うん」
翠の横に並んで、時折助けながら僕もうどんを食べる。
子供の世話しながらごはんを食べると、食べた気がしないとか聞いたことあるけど……
なるほど本当だね……
でも、翠の笑顔だけで幸せだから、なんでもいいんだよ。
「明日から、お勉強始まるけど、大丈夫かな?嫌じゃない?」
「うん、なまえ、書きたい」
翠は自分に名前があることをすごく喜んでいる。
字というものがあることは理解していたようなので、はやくそれを操れるようになりたいようだ。
向学心があることは重要だよね。
二人共食べ終わり、フルーツとお茶が出てくる。
そのフルーツを見て固まる翠……
「どうしたの?」
「これ……ぶど?」
「うん、ぶどうだね」
「僕、園でぶどのせわしてた」
「え」
料理長をはじめ皆がハッと体を強張らせる。
嫌な記憶を呼び覚ましたのでは?と。
「これ、落ちたの時々もらった、おいしいの」
翠は嬉しそうに指差す。
「そう……園では、もらえることもあったんだね」
「うん、おにぎりとかも」
意外にも、目をかけてくれた人がいたんだと、ほっとする。
「ぶどはおいしいから、おうひさまたべて。僕は味しってるよ」
「そう?僕も知ってるから、一緒に食べようよ、翠と食べるほうがいいな」
「うん!」
知ってるものが出てきて自慢気にする翠の姿を見て料理長が涙ぐんでいるのが見えた。
僕は翠に一つ渡して皮を剥こうとした。
「ちがうの、このままがおいしいの」
翠は皮付きのまま食べろと手で押し込んでくるので、そのまま食べた。
種はなくて、とっても芳醇な味がじわーっと広がって、ああ懐かしい味だ。
「おいしいね!種ないんだ……皮も美味しいね」
「うん」
翠は一つブドウを口に入れて嬉しそうに噛んだ。
「どう?」
「園で食べていたのよりあまい……」
「ここはお城だからね、良いものが選ばれて運ばれてくるのかもね」
「おうさまとおうひさまのために?」
「……そうだね、でも翠たちが一生懸命作ってくれているのを忘れてはいけないね。とてもおいしくできているね」
僕は翠の頰をツンツン突いて笑った。
翠も喜んで僕の頬をツンツンしてくる。
アハハって笑い合って楽しく終わった食事のあと、大好きな露天風呂には残念ながら危なくて行けないので、内風呂に2人で入った。
痩せた体だが、傷んでいた箇所が無くなっただけでも随分心が落ち着く。
気になったのは背中の羽毛部分。
ちょうど肩甲骨あたりにちょうど天使の翼みたいに生えているので、とってもかわいいのだけど。
最近かゆいというのだ。
僕はそこにシャンプーを付けて丁寧に洗ってあげて、そしてすすいだ。
「まだ気になる?」
「だいじょうぶ」
「そう?」
僕は床が滑るから気をつけてねと言いながらゆっくりと歩く。
湯船に入って2人であったまって「はぁー」って同時に息をはいて笑い合って。
そしてぽかぽかのままベッドに入った。
僕の部屋のベッドだ。
寝入る翠の穏やかな顔を見ていて、最初の頃の怯えた様子がすっかり無くなったことにホッとする。
どんどん慣れて、今が当たり前だと感じてほしい。
翠の小さな手が抱きしめているウサギの縫いぐるみを見てフフと笑う。
僕が小さい頃、大好きだった縫いぐるみを真似して縫ってみたんだよね。
だからガタガタだし、あんまり可愛くないけど、作るのを見ていた翠はすごく喜んでくれて、それ以来寝るときには必ず抱っこして、起きるときは丁寧にベッドに寝かしてから起きてくる。
かわいらしい習慣だ……
侍女もその様子を眉を下げて見守っている。
すっかり寝入った翠の顔を見ながら僕は窓を叩きつける風と雨の音を聞いていた。
そして、そっと心の中でつぶやく。
蘭紗様……
シンとなった部屋の中で聞く暴風雨の音は、迫ってくるようで少し恐ろしかった。
「わあ、おいしそうだね。味が変化できるようにしてくれたの?お味噌?いいね、栄養もあるし少し溶かしても……でも一回このままで食べてみようね」
僕はいつものように翠の横に座り、食事の世話をする。
最初驚いた給仕らだったが、今はもう誰も驚かない。
「冷ましたからね、熱くないよ……あーん」
口をパクっとあけてちゅるちゅるすする翠は本当にかわいい……
「しっかり噛んでね、そうそう、上手」
一生懸命噛んでおいしいと思ったのかパアと顔に喜色を浮かべる。
料理長もほっとした顔だ。
「よろしゅうございました、翠紗様のお気に召したようで」
「うん、ありがとうね、いつも」
「いえいえ、とんでもございません! 薫様の夕食もうどんでよろしいのですか?」
「うん、僕もうどんでお願い」
なるべく同じものを食べることにしているのだ。
自分と同じだときっと翠が安心するはずだから。
紗国ではお箸もスプーンもフォークもナイフもあって、日本とほぼ同じだ。
だけど翠はどれもうまく使えない。
時々固いパンや、園でもらう生の野菜ぐらいしか食べたことがなかったらしくて……
僕は根気強く箸を覚えさせている。
でも今回は自分で食べれるようにフォークをもたせてみた。
お椀を小さな手で持ってフォークを動かすが、向きが逆になっているのでそれを直してやる。
そしてようやく刺さったものを口に持っていき、ちゅるちゅると食べている。
「うん、上手だよ」
僕は頭をなでなでして褒めた。
「自分で食べてみる?僕もお料理が来たから、こっちを食べるよ」
「うん」
翠の横に並んで、時折助けながら僕もうどんを食べる。
子供の世話しながらごはんを食べると、食べた気がしないとか聞いたことあるけど……
なるほど本当だね……
でも、翠の笑顔だけで幸せだから、なんでもいいんだよ。
「明日から、お勉強始まるけど、大丈夫かな?嫌じゃない?」
「うん、なまえ、書きたい」
翠は自分に名前があることをすごく喜んでいる。
字というものがあることは理解していたようなので、はやくそれを操れるようになりたいようだ。
向学心があることは重要だよね。
二人共食べ終わり、フルーツとお茶が出てくる。
そのフルーツを見て固まる翠……
「どうしたの?」
「これ……ぶど?」
「うん、ぶどうだね」
「僕、園でぶどのせわしてた」
「え」
料理長をはじめ皆がハッと体を強張らせる。
嫌な記憶を呼び覚ましたのでは?と。
「これ、落ちたの時々もらった、おいしいの」
翠は嬉しそうに指差す。
「そう……園では、もらえることもあったんだね」
「うん、おにぎりとかも」
意外にも、目をかけてくれた人がいたんだと、ほっとする。
「ぶどはおいしいから、おうひさまたべて。僕は味しってるよ」
「そう?僕も知ってるから、一緒に食べようよ、翠と食べるほうがいいな」
「うん!」
知ってるものが出てきて自慢気にする翠の姿を見て料理長が涙ぐんでいるのが見えた。
僕は翠に一つ渡して皮を剥こうとした。
「ちがうの、このままがおいしいの」
翠は皮付きのまま食べろと手で押し込んでくるので、そのまま食べた。
種はなくて、とっても芳醇な味がじわーっと広がって、ああ懐かしい味だ。
「おいしいね!種ないんだ……皮も美味しいね」
「うん」
翠は一つブドウを口に入れて嬉しそうに噛んだ。
「どう?」
「園で食べていたのよりあまい……」
「ここはお城だからね、良いものが選ばれて運ばれてくるのかもね」
「おうさまとおうひさまのために?」
「……そうだね、でも翠たちが一生懸命作ってくれているのを忘れてはいけないね。とてもおいしくできているね」
僕は翠の頰をツンツン突いて笑った。
翠も喜んで僕の頬をツンツンしてくる。
アハハって笑い合って楽しく終わった食事のあと、大好きな露天風呂には残念ながら危なくて行けないので、内風呂に2人で入った。
痩せた体だが、傷んでいた箇所が無くなっただけでも随分心が落ち着く。
気になったのは背中の羽毛部分。
ちょうど肩甲骨あたりにちょうど天使の翼みたいに生えているので、とってもかわいいのだけど。
最近かゆいというのだ。
僕はそこにシャンプーを付けて丁寧に洗ってあげて、そしてすすいだ。
「まだ気になる?」
「だいじょうぶ」
「そう?」
僕は床が滑るから気をつけてねと言いながらゆっくりと歩く。
湯船に入って2人であったまって「はぁー」って同時に息をはいて笑い合って。
そしてぽかぽかのままベッドに入った。
僕の部屋のベッドだ。
寝入る翠の穏やかな顔を見ていて、最初の頃の怯えた様子がすっかり無くなったことにホッとする。
どんどん慣れて、今が当たり前だと感じてほしい。
翠の小さな手が抱きしめているウサギの縫いぐるみを見てフフと笑う。
僕が小さい頃、大好きだった縫いぐるみを真似して縫ってみたんだよね。
だからガタガタだし、あんまり可愛くないけど、作るのを見ていた翠はすごく喜んでくれて、それ以来寝るときには必ず抱っこして、起きるときは丁寧にベッドに寝かしてから起きてくる。
かわいらしい習慣だ……
侍女もその様子を眉を下げて見守っている。
すっかり寝入った翠の顔を見ながら僕は窓を叩きつける風と雨の音を聞いていた。
そして、そっと心の中でつぶやく。
蘭紗様……
シンとなった部屋の中で聞く暴風雨の音は、迫ってくるようで少し恐ろしかった。
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