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アオアイに友来る2 蘭紗視点
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パカラッパカラと軽快に馬を駆り、二人で並んで学園島の港を目指した。
アオアイではみっちりと乗馬の授業もするので二人共危なげない。
この島はアオアイの本島とは違って住人は少ないのだが、大勢の子が学園で暮らす為に使用人や職員が多い。
そしてそれを支える市場なども盛況だ。
港町はかなりの賑わいがある。
昼過ぎの今の時間ならその港町で働く人々の最も忙しい時間帯だから、この服装ならば紛れることが出来るだろう。
とはいえ、本当は許可なく学園を抜け出すなどもってのほかなのだが……
「馬はここに預けるよ」
涼鱗は慣れた様子で古い家屋に顔を出し、中から出てきた気の良さそうな老婆に一声掛けた。
老婆は盲目のようで杖を頼りにしていたが、やわらかい笑みを浮かべ涼鱗の声に耳を傾け嬉しそうにしている。
我は涼鱗を真似て粗末な馬小屋に学園から乗ってきた白馬をくくりつけた。
「こっちだよ」
涼鱗が手を引っ張るのに任せて歩みを進める。
老婆の家は港町の裏手にあったようで、家の角を曲がってすぐ狭い路地裏に出た。
独特の匂いに顔をしかめると、涼鱗が面白そうに我の顔を見た。
「蘭紗はさ、紗国にいた頃、本当に城だけで生活してたんだね、自由はないの?」
「自由……?」
我は何を問われているのかとっさに判断がつかず、オウム返しにするしかなかった。
「だからさ、行きたい場所に行ったり、やりたいことをやったりってことだよ」
「それは……特に……必要性を感じなかったが……」
「えぇ……」
涼鱗は歩みを止め、情けない表情で我を見つめる。
「自分の欲求ってものがないの?」
「いや……体調を維持したり、具合の良い時を見計らって体を鍛えたり、そういうことには時間を使ったし、それが我にとっての希望だったが」
「はぁ……」
盛大に溜息をついて肩を落とした涼鱗は「ま、いいか」と呟いてなおも我の手を引いた。
「文にあったのはこの先の宿だ、裏口から入るから厨房を通るけど、皆忙しくてこっちのことなんか見ないから、気にしないでささっと通るんだよ、わかった?」
「ああ」
路地裏はいろんな建物の裏口や勝手口がひしめき合っていて、湯気がもうもうと出ている。
そこには当然建物名など記されているわけでもないので、どれが何の扉なのかまるで見当がつかない。
というか、このような道を歩くのも初めてなのだが……
行き交う人々は皆我らと似たような装束で重い荷物を肩に担いだり、下ごしらえの済んだ物を箱に入れて駆けていたり、裏とは思えない人通りの多さだ。
しかも、細い道なのだから当然すれ違う時に肩や腕が当たる。
容赦なくぶち当たって来るそれらの衝撃に顔を歪ませていると、涼鱗がすっとある扉を開きするりと入ると中から我の手を引っ張った。
少々驚いたが素直に従うと、なるほどそこは多忙を極める厨房だった。
大声で怒声が行き交う中、涼しい顔ですいすいと歩く涼鱗の手を思わずぎゅっと握り、必死に付いていく。
途中なにかの箱に突っかかり転びそうになったが、涼鱗がハッとして後ろを振り向き抱きとめてくれた。
お互い細いが背は一緒ぐらいだ。
なのに力が強いなと感じて、羨ましく思った。
そして、野菜が箱に入れられて積まれて置かれる階段下に出て、その奥を伺う。
「この先の階段を上がっていけば3階の部屋って聞いてるから」
涼鱗はヒソヒソと耳に近づけて囁いた。
我は頷いてそのまま二人で給仕が行き来する廊下を走り、階段を登った。
一気に3階まで上り、息が上がったまま部屋を探す。
涼鱗は「305」と呟いている。
見ればドアには数字が書いてある。
「ここだ……」
涼鱗はドアをノックすると、ドアがするりと開いた。
中から覗く男子は我らと同じか少し下ぐらいに見える、黒い髪を一つに結わえ、きついオレンジの瞳を我に向けた。
「そいつは……」
「蘭紗だよ!紗国の王子なんだ」
「……そうか」
オレンジの目は伏せられ、そのままドアを大きく開き中に招き入れられた。
「部屋の中は狭いし……そのテーブルセットもない」
「いいさ、ベッドに座っていい?」
「ああ、もちろんだ」
涼鱗は遠慮なくベッドにぽすんと座り、我の手も引っ張るものだから横になだれ込むように座らされた。
「紹介するね、僕のお友達のトレム。ラハームの下町の友達なんだ」
「下町っていうか、貧民街だ。俺は、大国の王子に紹介されるようなそんな立場じゃねえよ」
トレムは居心地悪そうに床に座った。
「トレムもこっちおいでよ!」
どこまでも明るい涼鱗は屈託なく笑うとトレムの腕を引っ張る。
「いや……俺はここでいいよ。同じところに座るなんて……」
そう言って我をチラリと見た。
警戒心の滲むその視線に我はどうすればいいのかわからず、思わず目をそらす。
「わざわざ来てくれてありがとうね!」
「いや、まあ、そうだな……涼がまだこの後何年もラハームに戻らないって聞いて、それなら一度会っておこうと思って」
「なんかあったの?」
「うん……俺、職人になるんだ、弟子入りを認められた」
「職人?」
「ああ、おまえから字を習ったり数字を教わったりしたもんだから、まともな職場をめぐって弟子入りを申し込んでいたんだ。俺もそろそろあんなところ抜け出なきゃって思ってたから」
「どんなところへ弟子入りするの?」
涼鱗は心配げにトレムを覗き込んだ。
トレムは至近距離にある涼鱗の顔を見て一瞬とても優しい瞳の色を浮かべた。
アオアイではみっちりと乗馬の授業もするので二人共危なげない。
この島はアオアイの本島とは違って住人は少ないのだが、大勢の子が学園で暮らす為に使用人や職員が多い。
そしてそれを支える市場なども盛況だ。
港町はかなりの賑わいがある。
昼過ぎの今の時間ならその港町で働く人々の最も忙しい時間帯だから、この服装ならば紛れることが出来るだろう。
とはいえ、本当は許可なく学園を抜け出すなどもってのほかなのだが……
「馬はここに預けるよ」
涼鱗は慣れた様子で古い家屋に顔を出し、中から出てきた気の良さそうな老婆に一声掛けた。
老婆は盲目のようで杖を頼りにしていたが、やわらかい笑みを浮かべ涼鱗の声に耳を傾け嬉しそうにしている。
我は涼鱗を真似て粗末な馬小屋に学園から乗ってきた白馬をくくりつけた。
「こっちだよ」
涼鱗が手を引っ張るのに任せて歩みを進める。
老婆の家は港町の裏手にあったようで、家の角を曲がってすぐ狭い路地裏に出た。
独特の匂いに顔をしかめると、涼鱗が面白そうに我の顔を見た。
「蘭紗はさ、紗国にいた頃、本当に城だけで生活してたんだね、自由はないの?」
「自由……?」
我は何を問われているのかとっさに判断がつかず、オウム返しにするしかなかった。
「だからさ、行きたい場所に行ったり、やりたいことをやったりってことだよ」
「それは……特に……必要性を感じなかったが……」
「えぇ……」
涼鱗は歩みを止め、情けない表情で我を見つめる。
「自分の欲求ってものがないの?」
「いや……体調を維持したり、具合の良い時を見計らって体を鍛えたり、そういうことには時間を使ったし、それが我にとっての希望だったが」
「はぁ……」
盛大に溜息をついて肩を落とした涼鱗は「ま、いいか」と呟いてなおも我の手を引いた。
「文にあったのはこの先の宿だ、裏口から入るから厨房を通るけど、皆忙しくてこっちのことなんか見ないから、気にしないでささっと通るんだよ、わかった?」
「ああ」
路地裏はいろんな建物の裏口や勝手口がひしめき合っていて、湯気がもうもうと出ている。
そこには当然建物名など記されているわけでもないので、どれが何の扉なのかまるで見当がつかない。
というか、このような道を歩くのも初めてなのだが……
行き交う人々は皆我らと似たような装束で重い荷物を肩に担いだり、下ごしらえの済んだ物を箱に入れて駆けていたり、裏とは思えない人通りの多さだ。
しかも、細い道なのだから当然すれ違う時に肩や腕が当たる。
容赦なくぶち当たって来るそれらの衝撃に顔を歪ませていると、涼鱗がすっとある扉を開きするりと入ると中から我の手を引っ張った。
少々驚いたが素直に従うと、なるほどそこは多忙を極める厨房だった。
大声で怒声が行き交う中、涼しい顔ですいすいと歩く涼鱗の手を思わずぎゅっと握り、必死に付いていく。
途中なにかの箱に突っかかり転びそうになったが、涼鱗がハッとして後ろを振り向き抱きとめてくれた。
お互い細いが背は一緒ぐらいだ。
なのに力が強いなと感じて、羨ましく思った。
そして、野菜が箱に入れられて積まれて置かれる階段下に出て、その奥を伺う。
「この先の階段を上がっていけば3階の部屋って聞いてるから」
涼鱗はヒソヒソと耳に近づけて囁いた。
我は頷いてそのまま二人で給仕が行き来する廊下を走り、階段を登った。
一気に3階まで上り、息が上がったまま部屋を探す。
涼鱗は「305」と呟いている。
見ればドアには数字が書いてある。
「ここだ……」
涼鱗はドアをノックすると、ドアがするりと開いた。
中から覗く男子は我らと同じか少し下ぐらいに見える、黒い髪を一つに結わえ、きついオレンジの瞳を我に向けた。
「そいつは……」
「蘭紗だよ!紗国の王子なんだ」
「……そうか」
オレンジの目は伏せられ、そのままドアを大きく開き中に招き入れられた。
「部屋の中は狭いし……そのテーブルセットもない」
「いいさ、ベッドに座っていい?」
「ああ、もちろんだ」
涼鱗は遠慮なくベッドにぽすんと座り、我の手も引っ張るものだから横になだれ込むように座らされた。
「紹介するね、僕のお友達のトレム。ラハームの下町の友達なんだ」
「下町っていうか、貧民街だ。俺は、大国の王子に紹介されるようなそんな立場じゃねえよ」
トレムは居心地悪そうに床に座った。
「トレムもこっちおいでよ!」
どこまでも明るい涼鱗は屈託なく笑うとトレムの腕を引っ張る。
「いや……俺はここでいいよ。同じところに座るなんて……」
そう言って我をチラリと見た。
警戒心の滲むその視線に我はどうすればいいのかわからず、思わず目をそらす。
「わざわざ来てくれてありがとうね!」
「いや、まあ、そうだな……涼がまだこの後何年もラハームに戻らないって聞いて、それなら一度会っておこうと思って」
「なんかあったの?」
「うん……俺、職人になるんだ、弟子入りを認められた」
「職人?」
「ああ、おまえから字を習ったり数字を教わったりしたもんだから、まともな職場をめぐって弟子入りを申し込んでいたんだ。俺もそろそろあんなところ抜け出なきゃって思ってたから」
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