裸の天女様~すっ裸で異世界に飛ばされた災難ファンタジーコメディ~

榊シロ

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51話 ~浄化~ & 幕間「テルペロン鳥」

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「……うわぁ」

 でろでろに濡れた、それ。

 いくら恩人からもらったアイテムでも、触りたくない気持ちで遠巻きに見つめた。

『なにをしておる。せっかく、神力を補充してやったというに』

 ドン引きしている私の前で、悪行を働き終えた鳥は、ゆうゆうと毛づくろいをした。

「えっ……魔力、補充……?」
『意味もなく食ったわけないじゃろ。浄化ついでに力を補ったんじゃ』
「あっ……そう……ですか……」

 草の上に落とされたお守りのヒモ部分を、おそるおそる持ち上げる。当然ながら、濡れている。

「…………」

 ピシャッ、パシャッ

『……オイ、お主』
「いやぁ……まぁ……ねぇ?」

 すぐそばに流れている小川にそっと浸し、バシャバシャと洗う。
 なんともいえない視線に、あいまいな笑みで微笑み返し、ある程度気が済んだら引き上げた。

「まぁその……ありがとうございました」

 たき火のそばで燃えない程度の距離で吊るし、鳥に向き直った。

「あの国で……唯一の希望なんですよね、姫様が。これで連絡もとれなくなったらかなり悲しかったんで……ありがとうございます」

 と、しみじみと呟いた。

 姫様は、あの国での良心だ。
 女王様は狂ってしまっているようだし、いずれ、どうにか助けて差し上げたい、とは思っている。

 現状、こっちが手出しするとむしろ悪い立場になりそうだし、そもそもそんなことができる手段なんてないんだけど。

『……ふむ、希望か。なかなか面白いことを言う』
「オモシロイですかぁ?」

 今の会話に面白要素あったか? と疑問が浮かぶが、鳥は気にもとめないのかピッ、と古い羽を引っこ抜いている。

『まぁ、これで向こうからの通信を受信することは可能じゃろう。気長に連絡を待つことじゃな』
「あっそういえば……こっちからメッセージを送ることってできないんですかね」
『おそらくはムリじゃな。簡易的なモノのようじゃし』
「無事を知らせたいのに……う~ん、ままならない……」

 などと、のんびり会話をしつつ火に当たり、夜は更けていくのだった。




~幕間~

※キャラクター同士のちょっとした会話です。
 ストーリーは進行しませんので、興味ない方は飛ばしてください~※

ハナ「テルペロン鳥さん、テルペロン鳥さん」
テルペロン「なんじゃ? なにか聞きたいことでもあるのか」
ハナ「えっと、テルペロン鳥さんの個人の名前ってないんですか」
ヴィルクリフ「あー、それ気になるな。テルペロン鳥、って種族名だろ? オレたちで言う”人間”みたいな」
テルペロン「ふむ……それがのぉ。なんといえばいいやら。テルペロン鳥というのは、基本的には一匹ずつしかいないんじゃ。だから個体名という概念自体がない」
ハナ「えっと……? 一匹ずつ、って言うと……え、子どもどうやって生むんですか?」
テルペロン「前の鳥が死ぬときに、卵を産む。そして、その卵が孵化して、生まれた鳥が元の親を吸収するんじゃ。そうして、代々我々は命をつないでいくんじゃよ」
エアリス「ああ……うちに伝わっている伝説と同じね。本当に希少な生態で、羽はなんでも治る薬に、肉は不老の薬になるという話まであるとか」
ヴィルクリフ「はー、たしかに今の話じゃあ、そういう話が出回ったっておかしくねぇな」
ハナ「(火の鳥みたいなモンなのかな……)」
テルペロン「まぁ、ほんとのところ、羽や肉を食ったところで腹を壊すだけじゃと思うがのぉ」
ハナ「ああ、でも、テルペロンさんが古風なしゃべり方なのも納得しました。そうやって、昔の記憶とかもずーっと受け継いでいるってことですね」
テルペロン「ま、そういうことじゃな。とはいえ、わしは……ちょっと特殊なんじゃが」
ハナ「特殊……?」
テルペロン「まぁともかく、そういうわけで、わし固有の名はない。そのままテルペロンと呼べばいい」
エリアス「なるほど……わかりました」
ハナ「もういっこ聞いていいですか?」
テルペロン「お主、容赦ないのぉ……べつに構わんが」
ハナ「昨日とってた人の姿って、本体じゃないんですよね? あれ、なんだったんですか?」
ヴィルクリフ「あー、お前、昨日の夜に話したっつってたもんな」
テルペロン「あれはのう、この泉に訪れた人々を見て、わしが真似た姿じゃ」
ハナ「ほお? モノマネとかコピーとかそういう……?」
テルペロン「まぁ簡単に言うとそういうことじゃ。ただ、ひとりの人間をまねておるわけじゃないから、まったく同じ人間はいないと思うがの」
ハナ「……なぜにショタ、いえ、なんで子どもの姿なんですか?」
テルペロン「その方が、神力の消費が少ないからじゃ。大人の方が身体も大きいからの」
ハナ「ちなみに、鳥の方が身体のサイズ的に小さいですけど……人の姿の方がいいんですか?」
テルペロン「鳥の姿をずっとしておると、捕まえられそうになったりして色々と面倒なんじゃ。人ならば、紛れられるからの」
ヴィルクリフ「あ~……確かに。神鳥なら高く売れそうだし、賊のヤツらは狙うな」
エリアス「一応、領地で神鳥を捕まえるのって重罪なんだけど……そもそも、どこに生息してるかも謎だから、取り締まりようはないのよね、確かに」
ハナ「ははぁなるほど……」

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