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61話 ~服~
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まず、自分の意志で魔法を発動させる、という感覚から身につけていかなければ。
「……よし、服か……」
物は試し。
腕を宙に突き出して、服、を想像する。
「……服……服……??」
しかし、しかし、だ。
服、と一口に言っても、洋服のバリエーションというのは多い。
特に女性ものの服など、流行、季節によって多種多様だ。
「ど……どんな服にすれば……??」
『着たい服でも想像すればいいじゃろ。ないのか?』
「着たい服、ですか……」
現代の、自分が着ていたような服を――と思ったところで、あ、と気づく。
この世界は、ファンタジーだ。
現代の服なんて考えたら、ものすごく浮きまくること間違いない。
しかし、この世界に来て、まださほど人の姿を見ていなかった。
せいぜい、兵士とか戦士を見たくらいだし、さっきだって、周囲の視線が気になり過ぎて、とても観察する余裕なんてなかった。
(うーーん……もうしょうがない。元の世界の服で、とりあえずマシな感じのものを想像すればいいか)
ザ・無難の極みとして、トレーナーの上下を想像する。
どうせ一回目だし、うまくいくはずもないけれど、これなら失敗したとしても、多少マシな出来になるんじゃないだろうか。
魔法で、服を作り上げる。
その光景を想像し、意識を両手に集中させる。
あちこちに垂れ流しているらしい魔力とやらを一点に集め、物体を生成していく、そんなイメージ。
「……うーーーーん……??」
『ダメそうじゃのぉ』
「……なんでじゃい!!」
思わず、ベシッと壁を叩く。
言われた通り、イメージしているというのに、服の『ふ』の字も現れないではないか!
『もしかして……お主、無から生成しようとしておらぬか?』
「えっ? 魔法ってそういうもんじゃ……? というか、回復は無から生成してましたけど」
『魔法といえど、すべて魔力から端を発するわけでもないぞ。錬金術を聞いたことはないか? 火と水、風は空気から。土や金は大地から力を成せる。衣類の生成も、素材がなければ作れんよ』
「そ、それを早く言ってくださいよ……! というか今、服の素材になるもんなんてありませんが……!?」
懐をゴソゴソと探って出てきたのは、お守り、ティアラ、そして金色のバナナくらいしかない。
服の元、となると布だろうか。それこそ服屋、もしくは布屋にいけば入手できるかもしれないが、今は真夜中。店は閉まっているだろう。
「むむむ……どうしたものか……」
それ以前に、この恰好のまま店に乗り込んでいったら昨日の二の舞になる可能性大だ。
どうするか、と腕を組んで考え込んでいると、
チカチカチカ
取り出したお守りが、突然光を放ち始めた。
「あっとっと……お、王女様、ですか!?」
お守りを両手で握り語り掛けると、光は反応するように点滅した。
『ま、魔女様……! よかった、連絡がつきました……!』
「お久しぶりです、王女様! お元気ですか?」
『ええ、こちらの方はどうにか……そちらはいかがですか?』
「えぇと……」
王女のおだやかな声にほわほわとなごんでいたものの、その問いかけに一瞬口をつぐむ。
戸惑った気配を察したのか、彼女は気づかわしそうに言葉をつづけた。
『なにか……なにか、あったんですか……?』
「実は、エリアスさんのお姉さんの町にいるんですが、私、その……追い出されてしまいまして、ですね……」
『えっ!? エリアスの姉というと……アスタリカ様ですか? ずいぶんと遠くの方へ……』
「ええ、魔物に襲われてワタワタしてたらこんな方へ来てしまいまして……」
気づいたら来ていた、というのが正しいだろうか。
正直、地理もよくわからないうちにテレポート×二回もしているものだから、現在地はサッパリだ。
『それで、放り出されたというのは……?』
「あはは……どうにも、不審者と思われてしまいまして……」
『それは、なんともお気の毒に……ということは、今もまた、森に?』
「あ、いえ、一応町中で潜伏中です。ただ、長居はできないので、移動するつもりですが……」
『なるほど……アスタリカの収める町は治安がよく、魔物たちの出現もほとんどないと聞いています。ただ、庇護下から出たらどうなるか……どうか魔女様、重々お気をつけて』
「はい……! 王女様も、どうかご自愛ください」
お守りの光は徐々に小さくなり、プツッ、と消えた。
「ああ、癒しは王女様だけよ……」
『なにを言うか。わしの毛並みとて癒しじゃろう』
「む、確かに。ふわっふわですね」
もふもふもふ、と神鳥の羽を撫でさする。
抜いたら痛そうだけど、羽の一、二本ならいいんじゃないかなぁ、なんて思いつつ、ゆったりと毛並みにそって梳かしていく。
何度か繰り返していると、指が羽に引っ掛かったらしく、何本か羽根が抜け落ちた。
『痛ッ! お主、撫でるなら丁寧に頼む』
「すいません、つい……あの、この羽根ってもらってもいいですか?」
『んん? まぁ、構わんが……ああ、服の素材にするのか』
「ええ……まあ、大した量じゃないんで、アレですけど」
『なにを言う? それこそ、魔力の出番じゃろ。その羽根に魔力を込めて増幅させれば、強力な魔導士であれば、いくつも服を生成できるぞ』
「えっ……し、質量保存の法則は!?」
『しつ……? なにを言っておるのだ、お主は』
「あっいえ、なんでも……魔法、便利ですねぇ」
制約があるとはいえ、やはり、魔法。ファンタジー。
この羽根ひとつで服が作れるなど、とても考えられないが――いや、ダメだ。
そう考えてしまったら、本当に作れなくなってしまう。
これで、作れる。いや、作る。
そう、自分自身に暗示をかけなくては。
「よし、がんばるぞ……!」
すぅ、と息を吸い、そのまま、止める。
「……よし、服か……」
物は試し。
腕を宙に突き出して、服、を想像する。
「……服……服……??」
しかし、しかし、だ。
服、と一口に言っても、洋服のバリエーションというのは多い。
特に女性ものの服など、流行、季節によって多種多様だ。
「ど……どんな服にすれば……??」
『着たい服でも想像すればいいじゃろ。ないのか?』
「着たい服、ですか……」
現代の、自分が着ていたような服を――と思ったところで、あ、と気づく。
この世界は、ファンタジーだ。
現代の服なんて考えたら、ものすごく浮きまくること間違いない。
しかし、この世界に来て、まださほど人の姿を見ていなかった。
せいぜい、兵士とか戦士を見たくらいだし、さっきだって、周囲の視線が気になり過ぎて、とても観察する余裕なんてなかった。
(うーーん……もうしょうがない。元の世界の服で、とりあえずマシな感じのものを想像すればいいか)
ザ・無難の極みとして、トレーナーの上下を想像する。
どうせ一回目だし、うまくいくはずもないけれど、これなら失敗したとしても、多少マシな出来になるんじゃないだろうか。
魔法で、服を作り上げる。
その光景を想像し、意識を両手に集中させる。
あちこちに垂れ流しているらしい魔力とやらを一点に集め、物体を生成していく、そんなイメージ。
「……うーーーーん……??」
『ダメそうじゃのぉ』
「……なんでじゃい!!」
思わず、ベシッと壁を叩く。
言われた通り、イメージしているというのに、服の『ふ』の字も現れないではないか!
『もしかして……お主、無から生成しようとしておらぬか?』
「えっ? 魔法ってそういうもんじゃ……? というか、回復は無から生成してましたけど」
『魔法といえど、すべて魔力から端を発するわけでもないぞ。錬金術を聞いたことはないか? 火と水、風は空気から。土や金は大地から力を成せる。衣類の生成も、素材がなければ作れんよ』
「そ、それを早く言ってくださいよ……! というか今、服の素材になるもんなんてありませんが……!?」
懐をゴソゴソと探って出てきたのは、お守り、ティアラ、そして金色のバナナくらいしかない。
服の元、となると布だろうか。それこそ服屋、もしくは布屋にいけば入手できるかもしれないが、今は真夜中。店は閉まっているだろう。
「むむむ……どうしたものか……」
それ以前に、この恰好のまま店に乗り込んでいったら昨日の二の舞になる可能性大だ。
どうするか、と腕を組んで考え込んでいると、
チカチカチカ
取り出したお守りが、突然光を放ち始めた。
「あっとっと……お、王女様、ですか!?」
お守りを両手で握り語り掛けると、光は反応するように点滅した。
『ま、魔女様……! よかった、連絡がつきました……!』
「お久しぶりです、王女様! お元気ですか?」
『ええ、こちらの方はどうにか……そちらはいかがですか?』
「えぇと……」
王女のおだやかな声にほわほわとなごんでいたものの、その問いかけに一瞬口をつぐむ。
戸惑った気配を察したのか、彼女は気づかわしそうに言葉をつづけた。
『なにか……なにか、あったんですか……?』
「実は、エリアスさんのお姉さんの町にいるんですが、私、その……追い出されてしまいまして、ですね……」
『えっ!? エリアスの姉というと……アスタリカ様ですか? ずいぶんと遠くの方へ……』
「ええ、魔物に襲われてワタワタしてたらこんな方へ来てしまいまして……」
気づいたら来ていた、というのが正しいだろうか。
正直、地理もよくわからないうちにテレポート×二回もしているものだから、現在地はサッパリだ。
『それで、放り出されたというのは……?』
「あはは……どうにも、不審者と思われてしまいまして……」
『それは、なんともお気の毒に……ということは、今もまた、森に?』
「あ、いえ、一応町中で潜伏中です。ただ、長居はできないので、移動するつもりですが……」
『なるほど……アスタリカの収める町は治安がよく、魔物たちの出現もほとんどないと聞いています。ただ、庇護下から出たらどうなるか……どうか魔女様、重々お気をつけて』
「はい……! 王女様も、どうかご自愛ください」
お守りの光は徐々に小さくなり、プツッ、と消えた。
「ああ、癒しは王女様だけよ……」
『なにを言うか。わしの毛並みとて癒しじゃろう』
「む、確かに。ふわっふわですね」
もふもふもふ、と神鳥の羽を撫でさする。
抜いたら痛そうだけど、羽の一、二本ならいいんじゃないかなぁ、なんて思いつつ、ゆったりと毛並みにそって梳かしていく。
何度か繰り返していると、指が羽に引っ掛かったらしく、何本か羽根が抜け落ちた。
『痛ッ! お主、撫でるなら丁寧に頼む』
「すいません、つい……あの、この羽根ってもらってもいいですか?」
『んん? まぁ、構わんが……ああ、服の素材にするのか』
「ええ……まあ、大した量じゃないんで、アレですけど」
『なにを言う? それこそ、魔力の出番じゃろ。その羽根に魔力を込めて増幅させれば、強力な魔導士であれば、いくつも服を生成できるぞ』
「えっ……し、質量保存の法則は!?」
『しつ……? なにを言っておるのだ、お主は』
「あっいえ、なんでも……魔法、便利ですねぇ」
制約があるとはいえ、やはり、魔法。ファンタジー。
この羽根ひとつで服が作れるなど、とても考えられないが――いや、ダメだ。
そう考えてしまったら、本当に作れなくなってしまう。
これで、作れる。いや、作る。
そう、自分自身に暗示をかけなくては。
「よし、がんばるぞ……!」
すぅ、と息を吸い、そのまま、止める。
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