【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ

文字の大きさ
333 / 415

131.スキマに現れるもの③(怖さレベル:★★★)

しおりを挟む
「……ひ、っ……!?」

上げかけた悲鳴が、喉の奥で音にならずにつぶれました。

目の前。
その、押し入れのスキマ。

そこには、やはり白い人影がいました。

でも、ちがう。
昨日と違って、その人影の髪は短かったんです。

男の、子?

私の脳内に、その単語が浮かびました。

昨日は、女の子が押し入れにいた。
今は、男の子がいる。

じゃあ、昨日いた女の子は、どこに??

押し入れのスキマでうつむいたままの少女から、
私はゆっくりと、布団の方へ視線を移しました。

布団の、さっきまで足首があったあたり。
その部分が、ふわん、と少し浮いています。

例えるなら、子どもひとり、入れるくらいに。

まさか。
まさか、この中に、昨日の――。

(そ、そんなわけない……!! だって、昨日のは夢、だから……!!)

現実に起きるわけがない。
例え、また今も、少女の亡霊が見えていたとしても。

私は、わけのわからない事態の連続で、
混乱と恐怖で半狂乱になっていました。

だから。
だから、こんなことあるわけがない。

そう思って、思いっきり、掛け布団をはぎ取ってしまったんです。

「……い、ない……?」

がばっ、とはぎ取った布団の中には、なにもありません。

触れた弾力の正体となるものもなければ、
当然、白い人影の姿もない。

(そ、そりゃそうよね……そんなバカな)

布団の中にまで、幽霊がもぐりこんでくるなんて、あるわけがない。

そう、私がほんの一瞬、気を抜いたときでした。

はぁー……

耳元で、大きなため息が聞こえました。

すぐ、頭の後ろ。
唇を耳に近づけて、まるで、聞かせるように。

なにかいる。
すぐ後ろに、なにかが。

私の目玉が、ぐぐっ、と後ろを見るために動こうとします。

体は、硬直して動かないのに。
見ちゃいけない、理解しちゃダメだ、ってわかっているのに。

はぁー……

声が、吐息が、耳元で。

それと同時に、目の前の押し入れからも、

キィー……

あの、木材がきしむ禍々しい音が聞こえてきました。

どうしよう。
どっちを確認したらいい!?

私は、ガタガタ震えている体を動かすこともできず、
後ろを見ようとする視線と、
前の押し入れを確認したいという欲求をコントロールできず、
グルグルと視界が回転してきました。

はぁー……

そして、三度目に聞こえた吐息の後。

ひたり、と冷たい指が肩に触れて、それで。

私は、前日に引き続いてまた――意識を失ってしまったんです。





ええ……さすがに、二日続けての幽霊体験はこたえました。

だから次の日、彼に言ったんです。
この寝室で、子どもの幽霊を見たんだ、って。

まぁ、信じてもらえないだろうな、とは思っていたんです。

でも――彼の反応は、予想していたものとまったく違いました。

ええ、呆れられるとか、笑い飛ばされるんだろう、って思ってたんです。

でも――彼、すごく怒ったんですよ。
ええ、そう、ものすごくキレたんです。

「子どもの幽霊!? なんでそんなことを言うんだ!!」って。

私は、どうしてどなられるのか意味がわからなくて、
なにを言ってるのか聞いても、彼はどんどん怒りをエスカレートさせるばかり。

私も、頭ごなしにアレコレどなられたら、
だんだんと腹が立ってきてしまって。

その日は、朝から大喧嘩。

せっかくプロボーズまでされて、
指輪だって選んで、結婚まで秒読み――だったはずなのに、
最終的には、同棲を解消するほどのいさかいにまで発展したんです。

私は、その日のうちに部屋を飛び出して、
実家に帰ってしまいました。

その後、彼とはいろいろ話し合いもしましたが、
結局復縁するには至らず、そのまま別れてしまったんです。

ええ……これだけだと、あの子どもの幽霊二人が、
私たちの仲を引き裂いた、っていう感じですよね。

私も最初は、あの部屋に住まなければよかった、って、
ずいぶん後悔したし、あの幽霊を恨みました。

でも、実は……後日談がありまして。

彼、ね。
実は、他に交際相手がいたみたいなんです。

それも、私よりずっと年下の、まだ未成年の若い子と。

ウソだと思ったけど、目撃情報もあるし、
冷静に考えてみれば、付き合っているときにも思い当たることはあったんですよね。

バカですよね。私、なにも知らなかったんです。

それで、いろいろ調べてみてわかったんですが、
彼、実は過去にもそうして複数人と付き合っていたようで……。

しかも、若い子ばかりと付き合って、
妊娠させてしまって、困って堕胎させたことが何度もあるんだとか。

だから、あの日。

彼が、子どもの幽霊にあそこまで反応したのって、
もしかして『幽霊を見た』って言いだした人が、
他にもいたからじゃないかって、今は思うんです。

もう、今は連絡先すらわからない彼ですが……
きっと、もう、ロクなことにはなっていない。

そんな、気がしています。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

少し怖いホラー短編集(文字数500以下)

仙 岳美
ホラー
文字数500以下のショート集です、難しく無いので気楽にどうぞ。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

処理中です...