【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ

文字の大きさ
394 / 415

155.通学路のワナ①(怖さレベル:★★☆)

しおりを挟む
(怖さレベル:★★☆:ふつうに怖い話)

小学生の頃って、登下校の時には決められた道――通学路を使いますよね。

自宅から学校までの道のりで『この道を通ってください』ってルートが決められている、アレ。

私は運が悪く、仲のいい友達とは違う方向に住んでいたので、
いつもひとりで登下校をしていました。

ええ、あの頃は、集団登校とか集団下校という習慣はなかったんですよね。

そして、私が通学路には、一か所だけ、変な場所があったんです。

いえ、見た目は別に、ふつうなんです。
ただ、なんというか――雰囲気が、おかしかったんですよね。

一軒家が並ぶ住宅街の中にある、とある家。
古びた雰囲気の一軒家。そこがその『変な場所』でした。

駐車場に一台も車はなく、
洗濯ものも干されていないし、電気がついているのも見たことがない。

窓はカーテンで覆われていて中が見えないし、
表札も外されていて、庭も雑草が生えまくっているんです。

まあ……そういう家は、あっちこっちにあるでしょうね。
よくある空き家といえばそれまでです。

私も、登校し始めた頃は、全然気にならなかったんですよ。

でも、だんだんと。

登下校で何度も家の前を通るについれて、
モヤモヤとわだかまるような、イヤな感じを覚えるようになったんです。

その家の前を通るたびに、
なんだか、人に囲まれているような気がするんです。

ええ……見回しても、ひとっこひとりいないのに、ですよ?

前、うしろ、右と左。
四方向から囲まれているような、そんな気配を感じるんです。

決まって、その家の前を通った時にだけ。

おんなじ道を通るクラスメイトに聞いてみましたが、
わかる子とわからない子、だいたい半々くらいでした。

不気味に思いはしていたものの、通学路ですから、変えることはできません。
もう、そこは『そういう場所』なのだと、気にしないようにしていたんです。



でも、私が五年生になった年の、秋ぐらいのことでした。

クラブ活動を終えて、だんだんと赤くなってきた空を眺めながら、
いつもの通学路を下校していました。

後ろの学校からは『遠き山に日は落ちて』のメロディが、
ややひび割れた音響で聞こえています。

太陽が傾き、自分の影がゆらゆらとアスファルトを伸びて、
ひとり帰る私は、なんとはなしに影ふみをしていました。

通学路には、他に人はいません。

うす暗いどこか物寂しい道を、
ぴょんぴょんと飛び跳ねるように進んでいる、と。

「……て……たす、け……」

どこからか、か細い声が聞こえてきました。
その声は幼い子どものようでもあり、今にも死にそうな老婆の声にも思えて、
足元からゾワッと冷たいものが這いあがってくるのを感じます。

「……けて……たすけ、て……」

今度は、もう少しハッキリと声がしました。

――誰かが、助けを求めている。

慌てて、声の聞こえた方へ走っていくと、

「え……ここ、って……!」

息を飲みました。

あの、いつも誰かの気配を感じる誰もいない家。
窓という窓が厚いカーテンで覆われて、家自体が死んでしまっているようなその家から、あの声は聞こえていたんです。

私は家の前で、立ちすくみました。

かぼそいながら、声は途切れることなく聞こえてきます。
例の、家の中から。

私は立ち止まり、一瞬、考え込みました。

誰かが助けを求めているなら、手助けしなくては。
でも、怖い。近づいたらまずいと、そう、本能が叫んでいる気がするのです。

『知らない人に声をかけられても、ついていかない』
というのは、学校でも教えられていること。

でも、今聞こえているのは、自分と同い年くらいの子どもの声です。
それも、助けを求めるような、頼りない声。

もしかしたら――誘拐でもされて、必死に助けを求めているのかもしれません。
このまま放っておいたら――殺されてしまうかも、しれない。

もし本当に危なそうだったら、
学校へ行って、先生をよんでくれば、きっと大丈夫。

あの頃は、まだ携帯電話が普及していなかった時代です。

だから、私はそのままそーっと、助けを呼ぶ声のする家に、
一歩一歩、近づいていきました。

例の家は、いつも通りひと気がありません。

玄関のドアには、クモの巣が絡みついていて、
生えっぱなしの木の枝が、パキパキと風に揺れて音を立てています。

家の中は、夕暮れ時だというのに明かりひとつ点いていないし、
赤い光で照らされた壁面が、妙に禍々しく、恐ろしいもののように見えました。

「…………っ」

怯える足が、ドアの前で止まりました。
さっきまでの『助けて』の声も、今はまったく聞こえません。

木の枝や雑草が揺れる音以外、
いくら耳を凝らしても、なにも聞こえないんです。

もしかして、いよいよ、危ない状態なんだろうか?

私が焦り始めた、そんな時でした。

フッ――と、周囲に人の気配を感じたのは。

「え……?」

キョロキョロと周りを見ても、誰もいません。

他に下校中の生徒の姿もなく、
正真正銘、この場には私しかいないのです。

それなのに。
それなのに、私を囲むように、人の気配がある。

なにもないのに、視線が刺さってくるような気配と、
人が笑っているような、独特の空気の揺れ動きを感じるんです。

怖い――気持ち悪い。

ぞわぞわと感じる悪寒。
腕に鳥肌が立って、急に恐怖を感じました。

>>
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

少し怖いホラー短編集(文字数500以下)

仙 岳美
ホラー
文字数500以下のショート集です、難しく無いので気楽にどうぞ。

霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。 静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。 『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。 一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。 語られる怪談はただの物語ではない。 それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。 やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。 日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。 あなたも一席、語りを聞いてみませんか? 完結いたしました。 タイトル変更しました。 旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる ※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。 エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。 表紙イラストは生成AI

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

処理中です...