【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ

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156.スナッフビデオ③(怖さレベル:★★★)

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(こいつ、怖くなったんだな)と思ったものの、
自分も同じ気持ちだったので、ホッと一息つきました。

不可解な着信、不可解なパソコン画面の映像。
あのスナッフデータのサイトに飛んでから、妙なことばかりが起こっています。

もう、帰ろう。
おれが薄気味悪い恐怖におびえ、立ち上がろうとした時でした。

『……ザザッ……ザザザッ……』

いきなり、雨のような音が大音量で響き渡りました。

「うわっ……な、て、テレビが……!!」

さっきまで、お笑い番組が流れていたテレビ。
その液晶に、ザァザァとノイズが走っています。

ガビガビと白黒の走るその画面に、一瞬さっきのパソコンのことが浮かびます。

(まさか……そんなはず、ない……だけど、もし……)

おれは、震える声で、八木原に問い詰めました。

「お、お前……っ、リモコンのボタン、押したか……!?」
「……か、かえ、変えてない……っ」

八木原は、まるでロボットみたいにぎこちない動きで、
マウスの横にあったリモコンを指さしました。

「おれ、なにも押してねぇし……そ、そもそも、地上波で砂嵐が映るなんてことねぇだろ……!!」
「え……じゃあ、なんで」

と、おれが戸惑い、テレビに目を向けたときでした。

『……ザザッ……ザザザッ……たす……ザザッ……け……ザザザッ』

ノイズに混ざるかのような、か細い女の声。
と同時に、ふっ、と、妙な匂いを感じたんです。

ふわりと香る――線香の、匂い。

それは徐々に濃くなり、締め切られた部屋を満たしていきます。

甘く、そしてどこか懐かしい香りは、しかし、おれたちの背筋を凍らせました。

『……ザザッ……たす……ザザッ……け……て……ザザザッ』

おれの目は、テレビ画面にくぎ付けになりました。

ノイズの走る画面に、時折、女の顔が映るのです。
それはさっき――パソコン画面に映ったのと、まったく同じ、顔。

青白い顔は生気を失って、うつろな瞳は宙を見つめています。
口元はわずかに開いて、なにかを訴えかけようとしているようでした。

絶望に満ちた苦悶の顔の女と、
苦しいほどの線香の香りと、
ザアザアと走るノイズ、助けを呼ぶ声。

それらが混ざり合って、おれたちをグルグルと幻惑するかのようでした。

八木原が、ブルブルと腕を震わせて、テレビのリモコンを掴みました。
そして、力いっぱい――壁に、たたきつけたんです。

ガシャンッ

リモコンはバラバラと破片をバラまいたものの、テレビのノイズは止まりません。

その時、テレビ画面に映っていた少女の顔が、
ゆっくりと八木原の方を向きました。

そして、ふわっと、かすかにほほ笑んだんです。
その微笑は、絶望と悲しみに彩られた、物悲しいものでした。

「……う、うわぁああああ!!!」

八木原が、叫び声を上げて駆け出しました。

ドン、ガン!! と激しい音を立てながら部屋を出ていく姿に、
おれはハッと体の自由を取り戻し、慌ててヤツの後を追いかけます。

そうして、おれと八木原は、ヤツの家から全力で逃げ出したのでした。


結局その後は、二人して、ファミレスに行って朝まで過ごしましたよ。
人がいるところじゃないと、なんだか、また同じ目に遭いそうで……。

明るくなってから、二人してそーっとヤツの家に戻りましたが、
テレビもパソコンも消えていて、まるで何事もなかったかのようになっていました。

八木原も懲りたらしく、あれ以来、
スナッフデータを集めるのはいっさいやめたようです。

その後、幸い、おれの身にもヤツの身にも、
不可思議な現象は起こっていません。

あ、でも一度だけ……おれ、町中で偶然、
あの動画の女の子にそっくりな少女を見つけたんです。

ええ、顔立ちも、髪型も、服装も――なにもかも、瓜二つ。
まるで、あの動画からそのまま抜け出してきたかのように。

彼女は誰かと待ち合わせでもしているのか、
駅のそばのオブジェの下で、ボーっと立ち尽くしていました。

その表情はどこかうつろで、生気が感じられない。
魂が、そのまま抜け落ちてしまったかのように。

ふと、彼女が顔を上げました。
そして――おれの方を、ジッと見つめたんです。
その瞳には、深い悲しみと諦めのような色が、確かに宿っていました。

おれは、逃げるようにその場を離れましたよ。
よくある、他人の空似……そう、自分に言い聞かせて、ね。

結局、あのサイトはなんだったのかわからないし、
あの少女はいったい何者だったのか、なにもわかりません。
おれたちはきっと、恐ろしい何かに、触れてしまったんでしょう。

今でも時々、あの少女の、絶望に満ちた表情が、
命のともしびが消えていく瞬間の虚無の顔が、フッ、と思い出されることがあるんです。

おれの話は以上です。ありがとうございました。
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