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156.スナッフビデオ②(怖さレベル:★★★)
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「それにこれ、やっぱ日本人だよな?」
「まぁ……日本語っぽいの、しゃべってたしなぁ……」
どこかの倉庫で撮影されているようですが、
動画内で少女が叫ぶ単語は明らかに日本語でした。
もしこれが本物だとすれば、これは実際に人が殺された映像ということ。
おれは少々、気分が悪くなりました。
「おい……ほんとにこれ、買うのか?」
「そりゃあな。お前だって面白がってただろ?」
「まぁ最初はな……でも、ちょっとこれは……」
「作りモンかもしれねぇだろ? これ、買ったらモザイク無し版ついてくるみたいだし、それの出来次第って感じだな」
「……ホント、お前の趣味はヤベェわ」
コイツの家までついてきたことを後悔しつつ、
ヤツが例の動画を購入しようとしているのを眺めました。
せっかくのほろ酔い気分はすっかり抜けましたが、
新しくアルコールを入れる気にもなれません。
おれが水道水をガブガブと飲んで、気を落ち着けていると、
「……あれ? おかしいなぁ」
と、八木原がカチカチとマウスを何度もクリックしていることに気づきました。
「なんだよ、買えたんだろ?」
「いや、それがさあ……なんかダメなんだわ」
「購入画面までいってんじゃん。これでダメなのか?」
「そうなんだよ。ほらここ。購入ボタン押しても無反応」
と、八木原は目の前で【購入】と書かれたボタンをクリックしますが、
たしかに画面は切り替わりません。
リンクが切れているのか、アドレスすらも表示されていないようでした。
「……ってことは、これ、偽サイトっつーことか」
「いやー、詐欺だったら、金の支払いだけはさせるだろ?」
「ああ、確かに……でも、買えないなら仕方ねぇよな。リンク切れてるだけじゃねえの? 他の動画はどうなんだよ」
「それがさあ、試してんだけど……なんかダメっぽくて」
八木原はカチカチとマウスを動かし、他の動画をいくつかクリックしています。
そうしてヤツがせわしなく作業をしていると、ふと、
部屋の空気が少しだけ、重くなったように感じました。
(……ん……なんだ……?)
ズン、と肩に感じるようなイヤな感じに首を傾げた次の瞬間、
急にパソコン本体が、ガガガッ、と妙な起動音を発し始めたんです。
「お、おい、パソコン大丈夫か?」
「まあ、これ容量めっちゃデカいから大丈夫だと思……あっ」
と、言っているそばから、ブツッ、と画面が消えました。
まっくらになった画面に、マヌケな八木原の顔と、
あきれ顔のおれとが二人、映っています。
「おいおい、どんだけアレコレ押したんだよ」
「……うーん? いやあ、押そうとしてもダメだったんだけどなぁ……やっぱこういうサイトだから負荷が高いのか……?」
と、ヤツが電源ボタンに手を伸ばした時でした。
パソコン画面が、不意にチカチカと明滅し始めたんです。
「おい、八木原! 画面が……!!」
「うわっ……なっ、なんだよこれ……!!」
八木原は、慌ててパソコンの電源ケーブルを引っこ抜こうとしますが、
コンセント部分が配線でいっぱいで、手こずっているようでした。
画面は相変わらずチカチカと点滅をくり返していて、
おれは呆然とその映像に魅入っていました。
すると、一瞬。
フッ――
ほの暗い影のようなものが、映りこみました。
ザザッ、ザザザッ
点滅していた画面に、ノイズが走り始めました。
ぼやけていた映像が、白黒だった映像が、
だんだんハッキリと形作られ、おれは言葉を失いました。
「あ……!」
少女の顔。
映っているのは、ひとりの、絶望に満ちた少女の顔です。
それは、あの。
さっきの動画サイトで殺された、少女の顔だったんです。
彼女の顔はまっ白で、あの動画と同じ、
苦悶に満ちた表情をしていました。
涙を流し、
最後のあがきと言わんばかりに、はくはくと口を動かして。
ノイズ混じりの映像の中、赤い舌がうごめき、
た、す、け、て、と、音を形作りました。
「――ッ!!」
ゾッ、と全身に冷水が浴びせかけられたかのような寒気。
ヤバイ。なにか、とてつもなく、ヤバい――!
「っ、これだ!!」
――ブツンッ
と、パソコン画面が突然真っ暗になりました。
え、今のは。なにが起きた?
混乱するおれの前で、コンセントを片手にした八木原が、
パソコンの下から這い出してきました。
「ようやくコンセント抜けたわ~……あれ、どうした?」
間の抜けた顔の八木原に、おれは半ギレ状態で、
さっきの出来事――パソコンに少女の顔が映ったことを伝えました。
「いや、ハハ……そんなまさか……お前、からかうなって……」
「からかってねぇよ……! パソコン画面がおかしくなったの、お前も見てるだろ……!?」
「……え、じゃあ、マジで?」
お互い、無言で顔を見合わせます。
八木原はふいに立ち上がり、
今まで消えていたテレビを点けて、にぎやかなお笑い番組に切り替えました。
>>
「まぁ……日本語っぽいの、しゃべってたしなぁ……」
どこかの倉庫で撮影されているようですが、
動画内で少女が叫ぶ単語は明らかに日本語でした。
もしこれが本物だとすれば、これは実際に人が殺された映像ということ。
おれは少々、気分が悪くなりました。
「おい……ほんとにこれ、買うのか?」
「そりゃあな。お前だって面白がってただろ?」
「まぁ最初はな……でも、ちょっとこれは……」
「作りモンかもしれねぇだろ? これ、買ったらモザイク無し版ついてくるみたいだし、それの出来次第って感じだな」
「……ホント、お前の趣味はヤベェわ」
コイツの家までついてきたことを後悔しつつ、
ヤツが例の動画を購入しようとしているのを眺めました。
せっかくのほろ酔い気分はすっかり抜けましたが、
新しくアルコールを入れる気にもなれません。
おれが水道水をガブガブと飲んで、気を落ち着けていると、
「……あれ? おかしいなぁ」
と、八木原がカチカチとマウスを何度もクリックしていることに気づきました。
「なんだよ、買えたんだろ?」
「いや、それがさあ……なんかダメなんだわ」
「購入画面までいってんじゃん。これでダメなのか?」
「そうなんだよ。ほらここ。購入ボタン押しても無反応」
と、八木原は目の前で【購入】と書かれたボタンをクリックしますが、
たしかに画面は切り替わりません。
リンクが切れているのか、アドレスすらも表示されていないようでした。
「……ってことは、これ、偽サイトっつーことか」
「いやー、詐欺だったら、金の支払いだけはさせるだろ?」
「ああ、確かに……でも、買えないなら仕方ねぇよな。リンク切れてるだけじゃねえの? 他の動画はどうなんだよ」
「それがさあ、試してんだけど……なんかダメっぽくて」
八木原はカチカチとマウスを動かし、他の動画をいくつかクリックしています。
そうしてヤツがせわしなく作業をしていると、ふと、
部屋の空気が少しだけ、重くなったように感じました。
(……ん……なんだ……?)
ズン、と肩に感じるようなイヤな感じに首を傾げた次の瞬間、
急にパソコン本体が、ガガガッ、と妙な起動音を発し始めたんです。
「お、おい、パソコン大丈夫か?」
「まあ、これ容量めっちゃデカいから大丈夫だと思……あっ」
と、言っているそばから、ブツッ、と画面が消えました。
まっくらになった画面に、マヌケな八木原の顔と、
あきれ顔のおれとが二人、映っています。
「おいおい、どんだけアレコレ押したんだよ」
「……うーん? いやあ、押そうとしてもダメだったんだけどなぁ……やっぱこういうサイトだから負荷が高いのか……?」
と、ヤツが電源ボタンに手を伸ばした時でした。
パソコン画面が、不意にチカチカと明滅し始めたんです。
「おい、八木原! 画面が……!!」
「うわっ……なっ、なんだよこれ……!!」
八木原は、慌ててパソコンの電源ケーブルを引っこ抜こうとしますが、
コンセント部分が配線でいっぱいで、手こずっているようでした。
画面は相変わらずチカチカと点滅をくり返していて、
おれは呆然とその映像に魅入っていました。
すると、一瞬。
フッ――
ほの暗い影のようなものが、映りこみました。
ザザッ、ザザザッ
点滅していた画面に、ノイズが走り始めました。
ぼやけていた映像が、白黒だった映像が、
だんだんハッキリと形作られ、おれは言葉を失いました。
「あ……!」
少女の顔。
映っているのは、ひとりの、絶望に満ちた少女の顔です。
それは、あの。
さっきの動画サイトで殺された、少女の顔だったんです。
彼女の顔はまっ白で、あの動画と同じ、
苦悶に満ちた表情をしていました。
涙を流し、
最後のあがきと言わんばかりに、はくはくと口を動かして。
ノイズ混じりの映像の中、赤い舌がうごめき、
た、す、け、て、と、音を形作りました。
「――ッ!!」
ゾッ、と全身に冷水が浴びせかけられたかのような寒気。
ヤバイ。なにか、とてつもなく、ヤバい――!
「っ、これだ!!」
――ブツンッ
と、パソコン画面が突然真っ暗になりました。
え、今のは。なにが起きた?
混乱するおれの前で、コンセントを片手にした八木原が、
パソコンの下から這い出してきました。
「ようやくコンセント抜けたわ~……あれ、どうした?」
間の抜けた顔の八木原に、おれは半ギレ状態で、
さっきの出来事――パソコンに少女の顔が映ったことを伝えました。
「いや、ハハ……そんなまさか……お前、からかうなって……」
「からかってねぇよ……! パソコン画面がおかしくなったの、お前も見てるだろ……!?」
「……え、じゃあ、マジで?」
お互い、無言で顔を見合わせます。
八木原はふいに立ち上がり、
今まで消えていたテレビを点けて、にぎやかなお笑い番組に切り替えました。
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