闇ギルドの影は目的を果たすために戦い続ける

夜納木ナヤ

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惜別~バベルの塔~

彼女は勝手にやって来る

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 裏山の一つは、すぐに立入禁止になった。
 人が一人死に、新たなにモンスターも確認されたのだ。当然の処置とも言える。

 その二度の現場に居合わせた俺は、白い目で見られることとなった。
 凶悪なモンスターを呼び寄せる『死神』として。

「気にすんなよ、カケル」
「そうだ。俺たちは信じてるぜ」

 クラスで変わらず話しかけてくれるのは、徹矢と渉ぐらいのもので、チームツンツンのやつらさえ、目が合うとそらすようになった。
 別に構わない。群れる相手がほしいわけではない。むしろ好都合とも言える。
 俺への興味が削がれた時、孤独な存在として秘密裏に殺していくだけだ。

 完璧なプラン…そのはずだった。

☆☆

 迎えた実技の時間。

 二人組みを作れ。
 担任の出した指示の下、生徒は散っていく。

 だが、俺の周りには誰もいない。
 徹矢と渉は一緒に組もうと言って来たが、俺から断らせてもらった。

 さて、相手もいないことだしは隅っこで見学でもしていようか。
 歩き出そうとした時、行く手を阻む者がいた。

 満開の笑顔を浮かべ、手のひらを上に向けると、両手を差し出してきた。

「カケル、一緒に組もうよ」
「エリカ…なんのつもり…いや、俺は一人でいい」

 彼女の笑顔は俺に近づくに連れて消えていき、最後は無表情のままで、俺の耳元に口を寄せてきた。

「駄目だよ。それじゃあ授業は受けられない。それに…ほら、もっと周りを感じてみてよ」

 そんなのは言われなくても気づいている。
 俺たちのことを、初めて会うモンスターを見つめるみたいな、奇怪な目で見つめてくる視線を。

 それもひとつやふたつじゃない。
 ここにいるほぼ全員が、同じことを思っている。

「ちょ、ちょっとエリカっ、何してるの…危ないよ?」

 一人の女生徒が駆け寄ってきた。
 こいつには見覚えがある。実技の時にエリカを呼んでいたやつだ。

「危ない?どうして」
「だってその人は、危険なモンスターを呼び寄せるんでしょ?」

 そういう噂だ。
 だが、実を言うと正解だ。

 最初の忍者サルを召喚したのは俺だし、マッドクラーケンを地面に閉じ込めておいたのも俺だ。

「カケルは危なくなんかないよ?それに昨日は私もその場にいたよ?」
「それはそうだけど…って、カケル…?」
「カケルは私の幼馴染だよ。それなのにみんな酷いよねえ…こんな冷たくするなんて…」

 エリカは後ろで腕を組むと、その場で円を描くように一周した。
 それから顔を上げると、クラスメイトに向かって笑いかけた。

「カケルは悪くないよ。昨日は陽同院先輩も一緒だったんだから。なにかしてたら捕まってるはずだよ、ね?」

 これは完全に脅しだ。同意など求めていない。
 俺になにかしたら許さないとメッセージが込められている。

「カケルがなにかしてないことぐらい分かりきってるだろ」
「当然だな」

 徹矢と渉もここぞとばかりにフォローに来た。
 エリカはともかく、なんでこの二人はこんなに俺を信頼しているんだ?全くわからんぞ。

「何、なにー?盛り上がってるねー」

 人の山をかき分け、騒がしいやつまでご登場だ。

「咲…と眼鏡まで。どうしてここに?」
「眼鏡って、君は失礼じゃない…」
「いいじゃん別に。それよりカケル、楽しそうで安心したよ」

 陽同院咲の登場で、クラスの動揺は更に広がった。
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