契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います

夜納木ナヤ

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第2章~ヴァルキリーを連れ出せ~

加護を失った影響は確実に出ています

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 俺は次のターゲットにシュヴァルトライテのカリンを選択した。特性こそないが、彼女の加護は武器全般だ。適正のある武器を持てば、初心者冒険者ですら中級冒険者ぐらいの戦闘力を得ることが出来る。レッドラグーンがくるものを拒まずにいられるのはこの力のおかげだ。

 カリンのいる第9支社は、江戸のような町並みになっている。デザインしたのは俺だ。契約時に侍の話をしたらやたら食いついてきて、住みたいとずっと言っていたのだ。
 その中でも、高台にある道場は遠目からでも見ることが出来た。

「おっはー、みんな元気ぃ」

 手を振りながら笑顔を振りまくのは、女神……ではなく、ヴァルキリーカリンだった。
 出会った時のことは今でも忘れない。金色の髪に、ちょっと濃い目のメイク。いかにもなギャルが、俺を待っていたのだ。気さくな性格の彼女は、セイラのように部屋に閉じこもっていることはない。屋敷の中を好き勝手動き回るのだ。

 高台のふもとには訓練場があり、今も何人かが汗を流している。その多くはクランに入りたてのメンバーだ。
 ここは初心者冒険者が配属される、クランの登竜門でもあるのだ。

 さて、カリンはどこだ……って、探すまでもないか。ずっと声が聞こえている。

「ようカリン。今日も元気そうだな」
「ちーっす、ヤマトっち。今日はどうしたし」

 楽しそうにしていた笑顔をより楽しそうにしながら、カリンは顔を覗き込んでくる。黒いドレスからの見える、やたら育った胸元が強調され、なるべく自然に目を反らした。ったく、ちょっと無防備すぎるだろ。

「話があってな」

 俺が口を開こうとしたその時、外から声が聞こえてきた。

「ふざけるな!こんな状態でクエストに行けるわけがないだろう!」

 言い争っているのは、小太りの中年おっさんと冒険者の集団だった。冒険者の目にはクマがあり、見るからに疲弊している。

「ふざけているのは貴様の方だ。しっかりと4時間睡眠は与えたではないか」
 
 中年おっさんの名前はホリ。ここ第9支社の管理者だ。クランが受けたクエストに対して、どの冒険者が行くのかを決めるのが彼の主な仕事だ。迅速にクエストをこなる手腕が評価され、今はすべてを任されている。

「そうだとしても、こんなボロボロのままでは戦えない」

 クエストの疲労と眠気であれば、4時間もあれば回復できる。だがそれも一昨日までの話だ。
 すでにセイラの加護はなくなっていて、いままでと同じ睡眠時間では足りなくなっている。

「これでは魔法も使えない!無理だ!」
「そうだ!また20時間ぶっ続けで働くなど無理だ!」

 SNSに投稿したら大炎上しそうなほどにブラックな内容だ。ホリは功を急ぐあまり、横暴を働いているとは聞いていたが、まさかここまでとは。

「次のクエストが詰まっているんだ。ワガママを言うなら除名だぞ」
「ちょっと待て」
「なんだ……って、ちっ、腰巾着…じゃなかった、これはヤマト殿。ご機嫌麗しゅう」

 俺を見るなり、あからさまに不快そうな顔をされた。こいつに限らず、俺のことをよく思っていないやつは一定数存在する。それは、上の立場のやつになるほど多い。
 経費の不正利用を指摘したら、我を忘れて掴みかかってきたやつなんかもいた。クラン創設時のメンバーの権限は大きい。忙しさに飲まれて、離れた支社にはあまり来ることがない分、定期的に訪れる俺は煙たいようだ。

「何やら揉めていたようだが」
「いえいえ、彼らはこれからクエストに行く予定なのですが、ごねられましてな」

 白々しい。俺が話を聞いていなかったとでも思っているのか?

「見るからに彼らは疲弊しているけど、それほど重要なクエストなのか?」
「ち……いえ、ですが早いほうが良いと思いまして」

 手をこすりながら、にやにやとわざとらしい笑みを浮かべてくる。はっきり言って不快だ。

「怪我人が出ないように管理するもの仕事じゃないのか?それに、今のままクエストに行っても失敗する可能性が高い。責任は取れるんだな?」

 レッドラグーンのクエスト成功率は90%を越えている。冒険者ギルド全体の成功率が70%ほどなので、少数精鋭ではなく、無差別に人を入れているクランがこの数字なのだから、異常だった。
 実はカラクリもある。クエストに失敗すると、よほどの理由がない限りは除名になるのだ。あわよくばクランがクエストを受けた事実もなくなるのだ。

「それは……いえ、分かりました。あと5時間猶予を与える。それでいいな」

 ホリはフンと鼻息を立てながら、大股で去っていく。ありゃあ全く反省していないな。
 
 残された冒険者は俺に前に立つと一斉に頭を下げた。

「ありがとうございます!」
「いいよ別に。それよりもいつもどおり寝ても回復しきらなかったんだな?」
「はい……一体どうなっているのか…」

 困惑する彼らの前に、内心ほくそ笑んだ。
 驚かせたりせず、じっくりダメージを与えていく。彼らの顔を見れば、計画通りに事が進んでいるのがわかった。
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