43 / 56
第3章~港町での物語~
戦いは突然始まります
しおりを挟む
約束していた時間に、俺はティアと二人でイレギュラーを出た。盛大にヴァルキリー達が見送りをしてくれたが、レティだけ姿がなかったのは少々気がかりだ。
だが、それ以上考えている暇はなかった。ティアに連れられてやってきたのは、拠点から一番近い村を抜けた先にある、森の奥深くだ。そこには石版があり、ギルドの許可証を掲げることで入ることのできるダンジョンがある。ティアはさも当たり前のように許可証を取り出すと、ダンジョンの入口を開き、ためらうことなく入っていく。
あまりに自然な動作すぎて忘れていた。ここは難易度最高ランクで、絶対に近づくなと言われている最悪の場所だと。
「第1の契約者レティ、我に水の力を与え給え、ウォーターボール!!」
視界を覆い隠すほどに迫ってくる炎に、全力の水魔法をぶつける。有利属性のはずなのに、互角…どころか劣勢、かき消すだけで精一杯だ。
それもそのはず。その魔法を放ったのはS級モンスター、本来ならば冒険者がパーティを組んで選ぶはずのモンスター、火竜だ。
「ギャオオオ」
叫び声とともに、次の炎が襲いかかってくる。
強さだけでなく、地形も最悪だ。本来は空を飛び回っていて、炎が放たれたとしても逃げ場がある。だがここは洞窟の中。退路はなく、下手に避けようとすればティアに攻撃があたってしまう。
ウォーターボールで再び炎魔法でかき消す。僅かに残った火の粉が地面に残り、狭い空間を熱していて、サウナのように暑くなっていく。
「ヤマト、頑張って!」
暑さと危機的で状況で、俺は汗をかきまくっているのだが、ティアはいつもと変わらない。
落ち着いていると言えば聞こえはいいが、のんきすぎるようにも思えた。
「ガァアアア」
火竜は叫び声を上げると、炎の弾を放ってくる。連続で放ち続けて疲れてきたのだろうか。さっきよりも小さくなっていて、十分防げる大きさだ
「第4の契約者ラガナ、襲い来る炎を振り払う力を、アースシールド!」
地面が持ち上がり、俺の目の前に土の壁を作り出す。ぶつかった炎を完全に打ち消すまでは行かなかったが、壁が砕けると同時に炎も弾けた。その瞬間、俺と火竜の間を阻むものは何もなくなった。
「第1の契約者レティ、凍てつく水で祓い給え、アイスランス!」
細長い水を手の中で作り上げ一気に冷却して氷にする。それを風魔法で一気に削り、出来上がったのは氷の槍だ。
高濃度の魔法武器は強力なモンスタをも一撃で倒す。俺が手にしているのは、ヴァルキリーの加護がついた最強の槍だ。
頭が武器を槍として認識した瞬間、加護が発動する。薙ぎ払い。突き刺し。様々な使い方が頭をよぎり、俺は投げることを選んだ。
「食らいやがれ!」
火竜の腹に向かって飛んでいく槍に、氷魔法で強化を加える。そして腹に到達することには、火竜の胴体ぐらいの大きさになっていた。
「グアアアアア」
絶叫がダンジョンに響き渡り、火竜は地面に倒れた。瀕死だ。腹には巨大な穴が空いている。それでもまだ抵抗しようと、手足を震わせる。
「アークニードル!」
地面から突き出た複数の棘が、巨大な体を串刺しにし、火竜は動かなくなった。
「はあ、はあ…やったよな」
「お疲れ様」
膝をついていると、優しい声と一緒に手が差し出された。
その手の握って立ち上がるとやさしく微笑むティアの姿があった。
「おいおい、毎回こんなやつを倒してるのかよ…」
「ええ、去年はユレイルだったわ」
「まじか、あいつはあんなに強いのか…」
ユレイルの実力はイマイチ分からない。初めて出会った時に、素性を確かめようとして可視化の魔法を使ったが効果がなかった。
「でも、戦ったのは幼竜だったけれどね」
「…は?一応聞くけど、俺が今戦ったのは?」
「成竜ね。ここまで育つまで放置するなんてギルドも怠慢ねえ…」
さらっと言ってくれてるけど全然違うもんじゃねえか。成竜はSランクだが、幼竜はC~Fランク、経験のある冒険者なら余裕を持って倒せる相手だ。
そんなことを考えていると、複数の足音が近づいてきて、俺たちは一先ず岩陰に隠れたのだった。
だが、それ以上考えている暇はなかった。ティアに連れられてやってきたのは、拠点から一番近い村を抜けた先にある、森の奥深くだ。そこには石版があり、ギルドの許可証を掲げることで入ることのできるダンジョンがある。ティアはさも当たり前のように許可証を取り出すと、ダンジョンの入口を開き、ためらうことなく入っていく。
あまりに自然な動作すぎて忘れていた。ここは難易度最高ランクで、絶対に近づくなと言われている最悪の場所だと。
「第1の契約者レティ、我に水の力を与え給え、ウォーターボール!!」
視界を覆い隠すほどに迫ってくる炎に、全力の水魔法をぶつける。有利属性のはずなのに、互角…どころか劣勢、かき消すだけで精一杯だ。
それもそのはず。その魔法を放ったのはS級モンスター、本来ならば冒険者がパーティを組んで選ぶはずのモンスター、火竜だ。
「ギャオオオ」
叫び声とともに、次の炎が襲いかかってくる。
強さだけでなく、地形も最悪だ。本来は空を飛び回っていて、炎が放たれたとしても逃げ場がある。だがここは洞窟の中。退路はなく、下手に避けようとすればティアに攻撃があたってしまう。
ウォーターボールで再び炎魔法でかき消す。僅かに残った火の粉が地面に残り、狭い空間を熱していて、サウナのように暑くなっていく。
「ヤマト、頑張って!」
暑さと危機的で状況で、俺は汗をかきまくっているのだが、ティアはいつもと変わらない。
落ち着いていると言えば聞こえはいいが、のんきすぎるようにも思えた。
「ガァアアア」
火竜は叫び声を上げると、炎の弾を放ってくる。連続で放ち続けて疲れてきたのだろうか。さっきよりも小さくなっていて、十分防げる大きさだ
「第4の契約者ラガナ、襲い来る炎を振り払う力を、アースシールド!」
地面が持ち上がり、俺の目の前に土の壁を作り出す。ぶつかった炎を完全に打ち消すまでは行かなかったが、壁が砕けると同時に炎も弾けた。その瞬間、俺と火竜の間を阻むものは何もなくなった。
「第1の契約者レティ、凍てつく水で祓い給え、アイスランス!」
細長い水を手の中で作り上げ一気に冷却して氷にする。それを風魔法で一気に削り、出来上がったのは氷の槍だ。
高濃度の魔法武器は強力なモンスタをも一撃で倒す。俺が手にしているのは、ヴァルキリーの加護がついた最強の槍だ。
頭が武器を槍として認識した瞬間、加護が発動する。薙ぎ払い。突き刺し。様々な使い方が頭をよぎり、俺は投げることを選んだ。
「食らいやがれ!」
火竜の腹に向かって飛んでいく槍に、氷魔法で強化を加える。そして腹に到達することには、火竜の胴体ぐらいの大きさになっていた。
「グアアアアア」
絶叫がダンジョンに響き渡り、火竜は地面に倒れた。瀕死だ。腹には巨大な穴が空いている。それでもまだ抵抗しようと、手足を震わせる。
「アークニードル!」
地面から突き出た複数の棘が、巨大な体を串刺しにし、火竜は動かなくなった。
「はあ、はあ…やったよな」
「お疲れ様」
膝をついていると、優しい声と一緒に手が差し出された。
その手の握って立ち上がるとやさしく微笑むティアの姿があった。
「おいおい、毎回こんなやつを倒してるのかよ…」
「ええ、去年はユレイルだったわ」
「まじか、あいつはあんなに強いのか…」
ユレイルの実力はイマイチ分からない。初めて出会った時に、素性を確かめようとして可視化の魔法を使ったが効果がなかった。
「でも、戦ったのは幼竜だったけれどね」
「…は?一応聞くけど、俺が今戦ったのは?」
「成竜ね。ここまで育つまで放置するなんてギルドも怠慢ねえ…」
さらっと言ってくれてるけど全然違うもんじゃねえか。成竜はSランクだが、幼竜はC~Fランク、経験のある冒険者なら余裕を持って倒せる相手だ。
そんなことを考えていると、複数の足音が近づいてきて、俺たちは一先ず岩陰に隠れたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。
しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。
絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。
一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。
これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる