契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います

夜納木ナヤ

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第3章~港町での物語~

再会は突然でした

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 足音がして入ってきたのは6人ほどのパーティだった。入った時にも言ったが、このダンジョンは強力なモンスターが出るため、入ることのできる冒険者は限られている。もしかしてギルドは火竜の存在に気が付き、討伐依頼を出したのだろうか?

「ねえエミール、あれは赤竜じゃない?」

 聞いたことのある名前に注意を向けると、目的の人物は確かにいた。警戒しながら、火竜の死体に近づいていき、安全と分かるとパーティメンバーにサインを出した。

「ねえエミール、どうして火竜は倒れているの?」
「分からない、が、まだほのかに魔力は生きている。最近まで生きていたと考えていいだろう」
「まさか、倒した人物がこの近くに?」

 パーティメンバーは一斉に周囲をきょろきょろしだす。その表情は不安そのものだ。

「落ち着け。目的は分からないが、俺たちに敵意があるのならわざわざ姿をくらませたりもしないだろう」
「それは、そうかもしれないわね…」
「そうだ。それよりもギルドに報告に行ってもらえないか?俺は残って調べておく」

 エミールの声に、僧侶らしき女の子が慌てて近づいた。ローブに隠れて顔は見えないが、先ほどから一番発言しているのは彼女だ。

「残るって、まさか一人で!?危ないわよ!」
「大丈夫だ。このダンジョンには火竜以外に強力なモンスターはいない」
「だけど、倒した奴らが戻ってくるかも…」

 エミールは首を左右に振って否定すると、女の子だけでなく、パーティ全体に目配せをした。
 それは意識を確認すると言うよりは、威圧している様だった。

「これはクランリーダーの命令だ。聞き分けてくれ、ミヤ」

 ミヤと言うのは、僧侶の女の子の名前だったようだ。ローブ越しに見えた口は何か言いたそうにしているようだったが、ぐっと唇を噛んだ。

「分かったわ。けど、死んだら一生恨むからね」
「おー怖い怖い。死んでから恨まれては償えないし、せいぜいそうならないように気を付けるよ」

 エミールが頷くと、パーティは聞き分けよく、来た道を戻っていった。
 気配が完全になくなったのを確認すると、エミールは俺たちの隠れている岩を見つめた。

「そこにいらっしゃるのですよね、火竜を倒した冒険者様」

 やはりと言うべきか、俺たちがいることはばれていたようだ。おとなしく出て行くと、エミールは頭を下げていた。

「俺は冒険者じゃないぞ。それと、早く頭を上げてくれ」

 言うまで顔をあげないのは分かっていたので、早めに顔をあげさせた。

「お久しぶりです、ヤマト様。こんなに早くお会いできるとは思ってもみなかったです」
「俺もだよ。それでどうしてここに来たんだ?」
「俺としても、どうやって入ったのかと聞きたいところですが…まあ、いいです。冒険者ギルドの依頼で来ました。このダンジョンの火竜討伐はレッドラグーンに委託されていたのですが、進捗が不明のため確認してきてほしいと」

 そこまで答えると、何を期待しているのか嬉しそうに俺を見ている。

「あらヤマト、貴方はレッドラグーンの四天王なんでしょ?どうして知らないのかしら」

 背中に隠れて様子を伺っていたティアが、顔だけ出して、悪戯っぽく笑った。

「おや、そちらの女性は?」
「そうだな…クランメンバー的な奴だ」
「それは本当ですか!!ではやはり冒険者ギルドに復帰を…」
「それはしてないよ。あくまでクラン的な奴だよ」

 前のめりの近づいて来たエミールを制すると、本人も気づいたようで慌てて離れた。

「失礼しました」
「いいよ。それとティア、俺は四天王でもなんでもない。そもそも俺はクランの運営には関わっていなかったからな。クエストの内容だってほとんど知らん」
「そうでしたか…てっきりレッドラグーンの残した問題を解決して回っているものなのかと」

 途端にエミールは残念そうに俯いた。感情の上がり下がりが随分激しいな。
 それにしても、レッドラグーンが残した問題だと?聞き捨てならない単語を聞いた気がする。

「エミール、この火竜以外にも放置されていた委託案件があるのか?」
「はい。委託だけではなく、しばらく放置されていた通常クエストもありますね。最近の俺たちのクエストのほとんどはその後始末ですね」

 レッドラグーンは既に解散している。だが、管理のずさんさが招いた問題は後から後から出て来ている。クランの加護を失った元メンバーの半数は己の無力さに失望し、冒険者を辞めたとも聞いている。元より、その程度の覚悟であれば、どこかで命を落としていたであろうから、俺としてはよかったと思っている。

「ところでヤマト様はどうしてここに?」
「あーそうだな…実は俺は知らない。隣の、あー彼女はティアって言うんだけど、その護衛で連れてこられた」
「連れてこられたなんて人聞きが悪いわね」

 ほっぺたを膨らませて拗ねたようにそっぽを向いた。ヴァルキリー達がこの仕草をするのはよく見るが、ティアは初めてだ。知らない相手の前ではよく見られたいと言う精神からくる、ぶりっ子と言うやつだろうか?

「それでは恐れ入りますがティア様、言える範囲で構いませんので事情を聞かせていただけませんか?これでもギルドの依頼で来ていますので」

 ティアはどうしようかと目配せしてきたので、俺は頷いた。エミールは真面目だが、堅物ではない。俺たちの事情も考慮してくれるだろう。

「ちょっと行きたいところがあってね、ここが近道なの」
「なんと、このダンジョンはどこかに続いているのですか?」
「ええ、その場所と行き方については…」

 ティアが口ごもっていると、エミールはすかさず言った。

「秘密、ですね?」

 ティアは驚いたように一瞬固まったが、すぐに頷いた。

「ありがとうエミール」
「いえ、それよりも成竜を倒してくださったのですよね?俺達としてはかなり手間が省けましたよ」

 その口調はいつもと変わらず、本気なのか冗談なのか、俺には判断がつかなかった。

「それではヤマト様。機会があったらクラン・サクラフブキにも遊びに来てください。歓迎しますので」
「分かった」

 エミールに見送られて、俺とティアはダンジョンのさらに奥へと進むのだった。   
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