ワケアリな後輩達しかいないクランを押し付けられました

夜納木ナヤ

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依頼とお告げ

依頼とお告げ2

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 クランに戻ると、エミリが留守番をしていた。

「ただいま。珍しいな、おとなしく座っているなんて」

 エミリは常に走り回っているような子だ。
 椅子に座っているのなんて、食事をねだるときか、食事中ぐらいのもんだ。

「ちょっと先輩っ、私の扱い酷くないですかぁ?こんなかわいい女の子が帰りを待っていたんですよ?」
「はいはいかわいいかわいい」

 心の中では何度も思っていたが、いざ口にすると雑に聞こえるのは何故だろう。
 あんまり気持ちを込めすぎても誤解されそうだし、永遠の難題だ。

「2人は出掛けているのか?」
「ミキは夕飯の買い出しで、リナはその付き添いよ」
「そいつはまた珍しいな」

 エミリには苦手なものが2つある。まずひとつが『闇』だ。

 最近は大分ましになったが、明かりなしでは夜も寝られなかったし、出歩くことも出来なかった。

 そして2つ目。今となってはこっちのほうが厄介だ。
 それは『男』。

 話すことはおろか、姿を見るだけで怯え、逃げるか隠れるかしてしまう。
 
 だから俺達の暗黙のルールとして、クラン内にエミリだけを残すことはしないようにしている。

「一人で先輩を迎えたくって、リナには無理言っちゃった。とってもいやそうだったから、甘いものを買ってきて上げてね!」
「俺が買うのかよ……」

 まあ、いいけどさ。

「それで、2人に聞かれたくない話でもあるのかよ」
「先輩、依頼を断って来たでしょ」
「なんで知ってるんだよ」

 そんなに顔に出ていたか?
 エミリを見て、無意識に顔に出ていたか?

「分かるわよ。指名は私、エミリ」
「……」

 なぜバレている。気を遣わさないように隠しているはずなのに。

「大正解!!エミリちゃんすごーい!!」

 いつもよりテンションが高い。もしかしてエミリなりに元気付けようとしているのだろうか?
 
 ……いや、違うか。エミリ自身がこの闇の暗い空気を嫌ったのだろう。

「先輩わかりやすすぎるんだから。それでね、どんな内容だったのかなーって」

 珍しい。クエストには基本はついてくるだけで、自分から率先して動いたりはしない。

 ひとつの例外を除いては。

「お告げがあったのか?」
「……正解」

 エミリの声が静かになった。
 こんな彼女を見られるなんて、月に一度あるかどうかだ。

「それでなんて?」
「今日のクエストを受けろって」
「は?」

 今日のクエストって……エミリ指名のやつじゃねえか!
 それもばりばりに、依頼主の近くにいないといけないやつだ。

 いや待て、さっき断ってきたばかりだ。
 違う依頼が来る可能性だってある。

 コンコンコン。クランの扉がノックされた。
 この狙ったかのようなタイミング、まさかギルドの使いか!?。

 動けずにいると、扉がゆっくりと開いた。そして、ツインテールが顔を覗かせた。

「ただいまです、先輩」

 目が合うと、どうしたんですかをばかりに首をかしげている。そんな可愛らしい姿に、肩の力が一気に抜けた。

「おかえり、ミキ」

 持っていた荷物を、奪うように受けとりながら、中へと招き入れる。

 半開きだった扉は全開になり、リナもの姿も見えてくる。その顔はなぜか、ひきつっている。

「どうしたんだよリナ」
「先輩、クライアントらしき人物が来ているんだが」

 リナがその場から動くと、背中に隠れていたおっちゃんが姿を現した。
 ついさっき、依頼を断ったばかりの相手だ。

「ミキ、リナ、先に中に入ってくれ」

  二人を中に避難させると、大きくため息をついて見せる。

「どういったご用件で?」
「そのだな」

 横柄な態度で近づいてくると、頭から地面に頭突した。あまりに急な出来事に俺の思考は停止した。

 何事だ? おずおずと下を見ると、男は頭を着いていた。
 
土下座。体裁を全て投げ売り、謝罪をする時の行為だ。

「どういうことでしょうか」

 戸惑いつつも、表には出ないように毅然と対応をする。
 
「先程の無礼な振る舞い、謝っても許されないと思う。それでももう一度話を聞いてもらえないだろうか」
「こちらにはそれに応える理由が……エミリ?」

 閉まったはずの扉は少し開いていて、エミリの顔が半分ほど覗いていた。
『お告げ』か……正直忌々しい。

「わかりました。ただ用意がありますので、ギルドからの連絡を待ってください」
「分かった。待っている」

 男は怒鳴ることもなく、静かに立ち去っていった。
 さっきとはまるで別人だ。

「エミリ、出てきても大丈夫だぞ」
「う、うん……」

 俺の隣に立つと、おっさんの去っていた先を見つめた。

「ごめん、私のワガママで」
「いいさ。それよりも本当に良いんだな?」
「うん……それにあの人……」
「知り合いか?」
「違うけど、勘違いでなければきっと……」

 もごもごと言うだけで、教えてはくれない。
 言いたくないなら無理に聞き出すことでもないか。

「俺は今からギルドに行ってくる。あとでリナだけ来てくれ」
「私も行く」
「エミリ、町にもギルドにも男がいるんだぞ」
「分かってる。ワガママばかり言っていることも」

 ワガママはいつものことだが、今日はやけに強情だな。
 これが反抗期ってやつか?

「先輩、あの……」

 おとなしめの声がしたと思うと、今度はミキが覗いていた。扉から顔を半分だけ出して。
 その行動は流行りなのか?

「どうした、ミキ」
「ワガママなのは分かっているんですけど……その、エミリを連れってあげてくれませんか?」
「分かった」
「ちょ、即答!?」

 エミリは驚きながらも、不満そうにほっぺたを膨らませた。

 ミキがこんなことを言うのも珍しい。
 何か理由があるはずだ。

「行くぞエミリ。あーそれとミキ、少ししたら迎えが来ると思うから、リナと二人で出かける準備をしておいてくれ」
「ありがとうございます。それと……その、エミリのことっ、よろしくお願いします!」

 ミキが頭を下げると、右と左で結ばれている2本の髪が揺れた。
 いつもなら頭を撫でるところだったが、今日は少し距離がある。

「約束されました」

 手を振って返事をすると、エミリの手をとった。

 すると、エミリの肩がびくっと震えた。

 おっといけない。びっくりさせてしまった。先に一言かけておくべきだったな。

 これでも出会ったときよりはかなりマシにはなったが、急な変化はまだ苦手だ。

 それでもエミリは、俺の顔を見ると、嬉しそうに笑ってくれた。
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