ワケアリな後輩達しかいないクランを押し付けられました

夜納木ナヤ

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依頼とお告げ

依頼とお告げ3

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 エミリは人気者だ。町を歩くだけで、たくさんの人が声をかけてくる。

「お、エミリちゃんじゃん、おはよー」
「お、ホントだ!今日はいいことありそー」
「くそー、今日に限って応援グッズを持ってきていないぞ……」

 挨拶をされたり、遠巻きに手を合わせられたり、反応は様々だ。
 共通しているのは、どれも好意的だってことだ。

 けれど、どれだけ好意を向けられても、エミリは怯えたように隠れるだけだ。

 せめて手ぐらい振れるようになってくれたらいいんだけどな。そう思ったのは、何度目か分からない。

 真っ直ぐに道を抜けると、目的地はすぐそこだった。
 本日二度目のギルド。その中はやけに殺伐としていた。

「ようタユラ、久しぶり」
「久しぶり……じゃないわよ!てか何しに来たのよ!」

 なぜだか怒られた。
 そういえば、依頼を断ってくれって頼んだまんまだった。

「さっきの依頼だけど、改めて話し合いの場を設けたい」
「それはいいけど、まさかエミリも同席させるつもり?」

 俺の隣にいる存在に気がつくと、困惑した顔を浮かべた。
 
 だが、気の知れた相手であればエミリは強い。
 逃げも隠れもせず、ぐっと体を前に乗り出した。

「私が頼んだの」
「それでもね……今はみんな、敏感になっているし……」

 俺たちの話に聞き耳を立てるように、ギルド内は静まり返っている。

「私がそうしたいの」
「えーっと……」

 タユラは困った顔のまま視線を一周させ、最後は俺のところに戻ってきた。
 だが、その視線を遮るように、エミリは手を合わせて立ちふさがった。

「お願い!」
「はあ……場所を変えましょう……」

 タユラはついに折れた。

「悪いな、タユラ」
「もういいわよ…その代わり、今度ご飯をおごりなさいよ」
「へいへい」

 適当に流すと、「もー」っと更に文句を言われた。
 
 仕方ないじゃないか。この場で「行く行く!」なんて乗り気で答えたら、あとで串刺しにされかねない。
 主にタユラのファンから。

 本日2度目の応接間には、クラン・スイレンのメンバーが勢揃いだ。
 これはなかなかに珍しい。
 
 クエストの交渉は俺一人か、いてもタユラかリナが同席するくらいだ。

「まさかここまで本気だったなんて……それに、流石にこれは過保護ね」

 よかれとして呼んだのはずなのに、タユラには呆れられてしまった。

「そういえばタユラさん、ギルド内がやけに殺伐としているがなにかあったのか?」

 全員分の椅子があるのだが、リナだけは壁に背中を預けて立っている。

「さっきあなたたちの"先輩"に文句を言った人がいたの。それがエミリ絡みだったから、その人がエミリに危害を加えようとしているんじゃないかって騒然としているのよ。まだ暴挙にでた人はいないと思いたいけれど」
「それは許せないな」

 リナは、そこにはいない相手に対して剣を振った。

「そうです!先輩がかわいそうです!」

 ミキはかわいらしい力こぶを作って、可愛らしく怒ってみせる。てか相手じゃなくて俺がかわいそうなのかよ。

「なあ先輩、もしかしてさっきの人が……」
「ああ、そうだ。ついでに言うと、今から受けるクエストの依頼人だ」
「やはりか。もしや私はいらないことをしてしまったか?」

 リナは剣をしまうと、下を向いてしまった。
 女の子にしては大きめの手は鞘に触れ、わずかに震えている。

「リナは悪くないわ。どちらにせよ、もう一度話をするつもりだったから!」
 
 エミリは立ち上がると、壁に向かってシャドウボクシングを始めた。
 おっちゃんをぶん殴っているつもりなのだろう。

 そのお間抜けなその光景に、リナは「ふふっ」っと笑った。

「話を戻すぞ。単刀直入に言う。『お告げ』があったらしい。クエストを受けろと」

 少しばかり緩んでいた空気は、一瞬にして引き締まった。

 エミリの聞く『お告げ』は、天からの命令だ。それに背くと、彼女だけでなく、大規模の事件が起きる。
 俺としてはクラン・スイレンのメンバー以外がどうなろうと興味はないのだが、放置するとエミリが気にしてしまう。

 まったく、面倒なスキルを持ったもんだなエミリは。
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