ワケアリな後輩達しかいないクランを押し付けられました

夜納木ナヤ

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依頼とお告げ

依頼とお告げ5

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 定刻10分前に約束の場所に着くと、2台の馬車が待っていた。

「お待たせしました」

 声をかけると、おっちゃんは馬車から降りて来て頭下げた。
 それからエミリを探すように周囲を見渡した。

「クラン・スイレン全員で行かせていただきます」
「分かりました。おや、あなたは……」
 
 おっちゃんのの目は、ミキを見たところで止まった。
 見ている方も、見られている方も驚いた顔を浮かべている。

「あなたはもしや、ガイア侯爵のご令嬢では?」

 ガイアはミキが生まれた家の名だ。この依頼人、金持ちだとは思っていたが貴族だったとは。
 それならば面識があっても不思議ではない。

 エミリのことばかり気にしていて、少し考えれば分かる可能性を見落としていた。
 今からでもミキを置いていくか?

 悩んでいると、ミキは平然と答えた。

「私のことを知っているんですか?」
「ああ、以前パーティに招かれたことがあってね。娘が話したがっていたんだ」
「娘さんが?」
「ああ」

 おっちゃんは頷くと、昔を懐かしむように目を細めた。

「『自分と似ている気がする』って言っていたかな。当時の娘は、内気で、いつも私の背中に隠れているような子だったんだよ」
 
 それはまるで、今のエミリのようだな。エミリの場合は内気じゃなくて人見知りだけど。

 同じことを思ったのか、リナとミキもエミリのことを見ていた。

「結局そのパーティでは、話しかけることは出来なかった。けれど言っていた。『次は話せるようになってまた来る』と」

 ガイア家のパーティは年に一度行われる。以前俺たちが招かれたのもそれだった。

「一年後に呼ばれないと困るから、私は必死に頑張った。けれど娘はそれ以上に頑張った。誇らしかったよ、内気な彼女が屋敷内のみんなと打ち解け、領内でも存在感を高めていく姿は」

 きっかけはどうあれ、それだけ成長できるのは凄いことだ。
 そのきっかけがミキとなれば、俺も嬉しい。

 思わずミキに目配せをしたが、気が付かれなかった。

「一年後のパーティーに私たちは呼ばれた。当然娘も一緒に行った。けれどそこに、彼女はいなかった。いたのはよく似ているけれど、雰囲気の違う少女だった」

 あえて”ミキ”とは言わなかった。その気遣いはありがたい。

 けれど、突っ込んでいったのはミキの方だった。

「私の妹ですね」
「ああ、そのようだった」

 言葉を濁したはずなのに、ド直球に聞かれたおっちゃんは驚いたように答えた。
 俺だって驚いた。驚きすぎて反応が出来ないぐらいに。

「私はその家から追放されました。最後は望んで出ましたけどね」
「そ、そうだったのか……」

『すまない』と言いかけて、おっちゃんは口を閉ざした。
 違うと思ったのだろう。

 だって今のミキは、全く気にしていなかったのだから。

 強くなったな。娘の成長を見守る親とはこんな気分なのだろうか?
 思わず涙が出そうになる。

「先輩、そろそろ定刻だ」
「そ、そうか。ありがとうリナ」
「いや、多分私も先輩と同じ気持ちだ」

 用意してもらった馬車に乗り込むと、目的地を目指す。

 ミキはおっちゃんとまだ話したかったようなので、同じ馬車に乗ってもらった。
 以前のミキになら絶対に頼めなかったことで、流石に少し心配だったからリナにも同行してもらった。

 後から感想を聞いたら、口をそろえて楽しかったと言っていてほっとした。

 馬車は2日と半日みっちり走り続け、エミリの妹ロマネの誕生日当日にたどり着いた。
 日は既に傾きかけていて、墓場には長い影が伸びていた。

「誕生日なのに遅くなってすまなかったね」

 おっちゃんは墓標にケーキを置くと、手を合わせた。

「連れて来たよ、会いたがっていた相手を。これも遅くなってしまったけどね。待っていてくれ、今から代わるから」

 おっちゃんは立ち上がると、ゆっくりと離れていった。気を遣ってくれたようで、木の陰に隠れている。

「行こうか、エミリ」

 手を取ると、エミリは頷いた。その顔は緊張でこわばっている。

 数年ぶりの、妹との再会だ。

 ロマネ。墓標には、はっきりとそう書かれていた。

「まさか死んでいたなんて、それじゃあいくら探しても見つかるわけがないじゃない」

 クラン・スイレン結成直後、俺はギルドにロマネの捜索依頼を出した。
 けれど、手がかりは何も掴めなかった。

「そりゃあ、どう探しても見つからないわけよね。ねえ、あなたは幸せだったの?」

 膝をつくと、お墓に向かって手を合わせた。その瞬間、エミリを取り巻く空気が変わった。
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