25 / 28
依頼とお告げ
依頼とお告げ5
しおりを挟む
定刻10分前に約束の場所に着くと、2台の馬車が待っていた。
「お待たせしました」
声をかけると、おっちゃんは馬車から降りて来て頭下げた。
それからエミリを探すように周囲を見渡した。
「クラン・スイレン全員で行かせていただきます」
「分かりました。おや、あなたは……」
おっちゃんのの目は、ミキを見たところで止まった。
見ている方も、見られている方も驚いた顔を浮かべている。
「あなたはもしや、ガイア侯爵のご令嬢では?」
ガイアはミキが生まれた家の名だ。この依頼人、金持ちだとは思っていたが貴族だったとは。
それならば面識があっても不思議ではない。
エミリのことばかり気にしていて、少し考えれば分かる可能性を見落としていた。
今からでもミキを置いていくか?
悩んでいると、ミキは平然と答えた。
「私のことを知っているんですか?」
「ああ、以前パーティに招かれたことがあってね。娘が話したがっていたんだ」
「娘さんが?」
「ああ」
おっちゃんは頷くと、昔を懐かしむように目を細めた。
「『自分と似ている気がする』って言っていたかな。当時の娘は、内気で、いつも私の背中に隠れているような子だったんだよ」
それはまるで、今のエミリのようだな。エミリの場合は内気じゃなくて人見知りだけど。
同じことを思ったのか、リナとミキもエミリのことを見ていた。
「結局そのパーティでは、話しかけることは出来なかった。けれど言っていた。『次は話せるようになってまた来る』と」
ガイア家のパーティは年に一度行われる。以前俺たちが招かれたのもそれだった。
「一年後に呼ばれないと困るから、私は必死に頑張った。けれど娘はそれ以上に頑張った。誇らしかったよ、内気な彼女が屋敷内のみんなと打ち解け、領内でも存在感を高めていく姿は」
きっかけはどうあれ、それだけ成長できるのは凄いことだ。
そのきっかけがミキとなれば、俺も嬉しい。
思わずミキに目配せをしたが、気が付かれなかった。
「一年後のパーティーに私たちは呼ばれた。当然娘も一緒に行った。けれどそこに、彼女はいなかった。いたのはよく似ているけれど、雰囲気の違う少女だった」
あえて”ミキ”とは言わなかった。その気遣いはありがたい。
けれど、突っ込んでいったのはミキの方だった。
「私の妹ですね」
「ああ、そのようだった」
言葉を濁したはずなのに、ド直球に聞かれたおっちゃんは驚いたように答えた。
俺だって驚いた。驚きすぎて反応が出来ないぐらいに。
「私はその家から追放されました。最後は望んで出ましたけどね」
「そ、そうだったのか……」
『すまない』と言いかけて、おっちゃんは口を閉ざした。
違うと思ったのだろう。
だって今のミキは、全く気にしていなかったのだから。
強くなったな。娘の成長を見守る親とはこんな気分なのだろうか?
思わず涙が出そうになる。
「先輩、そろそろ定刻だ」
「そ、そうか。ありがとうリナ」
「いや、多分私も先輩と同じ気持ちだ」
用意してもらった馬車に乗り込むと、目的地を目指す。
ミキはおっちゃんとまだ話したかったようなので、同じ馬車に乗ってもらった。
以前のミキになら絶対に頼めなかったことで、流石に少し心配だったからリナにも同行してもらった。
後から感想を聞いたら、口をそろえて楽しかったと言っていてほっとした。
馬車は2日と半日みっちり走り続け、エミリの妹の誕生日当日にたどり着いた。
日は既に傾きかけていて、墓場には長い影が伸びていた。
「誕生日なのに遅くなってすまなかったね」
おっちゃんは墓標にケーキを置くと、手を合わせた。
「連れて来たよ、会いたがっていた相手を。これも遅くなってしまったけどね。待っていてくれ、今から代わるから」
おっちゃんは立ち上がると、ゆっくりと離れていった。気を遣ってくれたようで、木の陰に隠れている。
「行こうか、エミリ」
手を取ると、エミリは頷いた。その顔は緊張でこわばっている。
数年ぶりの、妹との再会だ。
ロマネ。墓標には、はっきりとそう書かれていた。
「まさか死んでいたなんて、それじゃあいくら探しても見つかるわけがないじゃない」
クラン・スイレン結成直後、俺はギルドにロマネの捜索依頼を出した。
けれど、手がかりは何も掴めなかった。
「そりゃあ、どう探しても見つからないわけよね。ねえ、あなたは幸せだったの?」
膝をつくと、お墓に向かって手を合わせた。その瞬間、エミリを取り巻く空気が変わった。
「お待たせしました」
声をかけると、おっちゃんは馬車から降りて来て頭下げた。
それからエミリを探すように周囲を見渡した。
「クラン・スイレン全員で行かせていただきます」
「分かりました。おや、あなたは……」
おっちゃんのの目は、ミキを見たところで止まった。
見ている方も、見られている方も驚いた顔を浮かべている。
「あなたはもしや、ガイア侯爵のご令嬢では?」
ガイアはミキが生まれた家の名だ。この依頼人、金持ちだとは思っていたが貴族だったとは。
それならば面識があっても不思議ではない。
エミリのことばかり気にしていて、少し考えれば分かる可能性を見落としていた。
今からでもミキを置いていくか?
悩んでいると、ミキは平然と答えた。
「私のことを知っているんですか?」
「ああ、以前パーティに招かれたことがあってね。娘が話したがっていたんだ」
「娘さんが?」
「ああ」
おっちゃんは頷くと、昔を懐かしむように目を細めた。
「『自分と似ている気がする』って言っていたかな。当時の娘は、内気で、いつも私の背中に隠れているような子だったんだよ」
それはまるで、今のエミリのようだな。エミリの場合は内気じゃなくて人見知りだけど。
同じことを思ったのか、リナとミキもエミリのことを見ていた。
「結局そのパーティでは、話しかけることは出来なかった。けれど言っていた。『次は話せるようになってまた来る』と」
ガイア家のパーティは年に一度行われる。以前俺たちが招かれたのもそれだった。
「一年後に呼ばれないと困るから、私は必死に頑張った。けれど娘はそれ以上に頑張った。誇らしかったよ、内気な彼女が屋敷内のみんなと打ち解け、領内でも存在感を高めていく姿は」
きっかけはどうあれ、それだけ成長できるのは凄いことだ。
そのきっかけがミキとなれば、俺も嬉しい。
思わずミキに目配せをしたが、気が付かれなかった。
「一年後のパーティーに私たちは呼ばれた。当然娘も一緒に行った。けれどそこに、彼女はいなかった。いたのはよく似ているけれど、雰囲気の違う少女だった」
あえて”ミキ”とは言わなかった。その気遣いはありがたい。
けれど、突っ込んでいったのはミキの方だった。
「私の妹ですね」
「ああ、そのようだった」
言葉を濁したはずなのに、ド直球に聞かれたおっちゃんは驚いたように答えた。
俺だって驚いた。驚きすぎて反応が出来ないぐらいに。
「私はその家から追放されました。最後は望んで出ましたけどね」
「そ、そうだったのか……」
『すまない』と言いかけて、おっちゃんは口を閉ざした。
違うと思ったのだろう。
だって今のミキは、全く気にしていなかったのだから。
強くなったな。娘の成長を見守る親とはこんな気分なのだろうか?
思わず涙が出そうになる。
「先輩、そろそろ定刻だ」
「そ、そうか。ありがとうリナ」
「いや、多分私も先輩と同じ気持ちだ」
用意してもらった馬車に乗り込むと、目的地を目指す。
ミキはおっちゃんとまだ話したかったようなので、同じ馬車に乗ってもらった。
以前のミキになら絶対に頼めなかったことで、流石に少し心配だったからリナにも同行してもらった。
後から感想を聞いたら、口をそろえて楽しかったと言っていてほっとした。
馬車は2日と半日みっちり走り続け、エミリの妹の誕生日当日にたどり着いた。
日は既に傾きかけていて、墓場には長い影が伸びていた。
「誕生日なのに遅くなってすまなかったね」
おっちゃんは墓標にケーキを置くと、手を合わせた。
「連れて来たよ、会いたがっていた相手を。これも遅くなってしまったけどね。待っていてくれ、今から代わるから」
おっちゃんは立ち上がると、ゆっくりと離れていった。気を遣ってくれたようで、木の陰に隠れている。
「行こうか、エミリ」
手を取ると、エミリは頷いた。その顔は緊張でこわばっている。
数年ぶりの、妹との再会だ。
ロマネ。墓標には、はっきりとそう書かれていた。
「まさか死んでいたなんて、それじゃあいくら探しても見つかるわけがないじゃない」
クラン・スイレン結成直後、俺はギルドにロマネの捜索依頼を出した。
けれど、手がかりは何も掴めなかった。
「そりゃあ、どう探しても見つからないわけよね。ねえ、あなたは幸せだったの?」
膝をつくと、お墓に向かって手を合わせた。その瞬間、エミリを取り巻く空気が変わった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。
猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。
もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。
すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。
主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。
――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました――
風景が目まぐるしく移り変わる。
天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。
移り変わる景色こそは、
第一天 ヴィロン。
第二天 ラキア。
第三天 シャハクィム。
第四天 ゼブル。
第五天 マオン。
第六天 マコン。
それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。
気付けば明星は、玉座に座っていた。
そこは天の最高位。
第七天 アラボト。
そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。
――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。
無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件
fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。
実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。
追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。
そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。
これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる