剣と魔法の世界を拳ひとつで生き残る！

2章 ラキエラ連邦

2話 鍵とジジイとプライドをかけた戦い

「だからジジイのやり方は古いのよっ！」

朝焼けの森に怒鳴り声が響いた。ラゼンの家の裏庭。空気が張り詰めている。

「古いのはお前の頭じゃ！突っ込んでくばっかで氣もまともに使えとらん！わしが何十年氣を鍛えとると思っとる！」

「だったらその氣とやらで、あたしより強い弟子でも育ててみなさいよっ！」

　少女が吐き捨てると、ラゼンは鼻息荒く反論した。

「いいだろう！だったら勝負じゃ！一週間後、コロシアムで弟子同士を戦わせて、どっちが上か決めようじゃないか！」

　その一言で、言い争いは一気に実践にまで発展した。

　ちょうどその頃、裏山での修行から戻った天音が家に帰ってくる。すでに氣の基礎操作を数日かけて学んでいたが、まだ風の氣のまとい方には苦戦していた。ライも少女に誘われて買い出しに付き合っていたところだったが、揉めて途中で別れたらしい。

「なんか怒鳴り声聞こえたけど……？」

　天音が小屋の戸を開けると、睨み合うラゼンと少女、そして戸惑って立ち尽くすライの姿があった。

「おお、帰ったか！ちょうどいいところじゃ。お主らに話がある」

　ラゼンが無理やり笑みを浮かべながら天音とライを手招きする。

「話って？」

　首をかしげる天音。ラゼンは手を組みながら得意げに言った。

「一週間後、ラキエラのコロシアムで武道大会がある。そいつで、どちらがより優れた弟子を育てられるか勝負をすることにした。で、天音、お主がわしの弟子じゃ！」

「は？」

　思わず声が裏返る。天音の目が細くなる。

「急に何言って……」

「いやいや、無理です！僕そんな戦えるほど強くないですから！」

　ライも同時に拒絶する。しかし、ラゼンはふふんと笑って言った。

「優勝者には、“どんな願いでもひとつだけ叶う”と言われる、ダンジョンの鍵が与えられるのじゃ」

　その言葉に、天音の眉がぴくりと跳ねた。

「ダンジョンの……鍵？」

　ライもごくりと唾を飲む。どこかで聞いたことがある。鍵。それは天音たちの旅の目的そのものだった。

「ラキエラの連邦政府が、古代遺跡の一つの封印を守っておる。そのダンジョンには、願いを叶える力の源が眠っているとされておってな。優勝者だけが入る資格を得られる」

　ラゼンが目を細める。

「お主、“やるべきこと”があるんじゃろ？」

　その言葉に、天音の中の何かが、ふっと熱を持つ。

　この世界に来た意味。鍵を集めて妹を救う。その目的が、今また目の前に現れた。

「……わかった、やるよ。その勝負、乗った！」

　天音が拳を握り、ラゼンを見据える。すると、さっきまで不安そうだったライも、はっとした表情で叫んだ。

「ぼ、僕も！や、やります！そのダンジョンってやつ……もしかしたら天音さんを元の世界に帰す手がかりがあるかもしれないし！」

　少女が思わずぷっと吹き出す。

「あんた、急に元気になったじゃん。ま、勝負よ。絶対負けないから」

　こうして、コロシアムを舞台にした一週間限定の修行勝負が幕を開けた。

　勝てば願いが叶う。
　そして、鍵に導かれて再び旅が動き出す。