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第二章「セントエクリーガ城下町」

第六十七話「熟思」

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「わたしお風呂入ってくる!」

 ケイはそう言い残してドタバタとダイニングから出ていく。

 時計を確認すると7時を指していた。


「ケイちゃんの両親って……」

 ヒナコはケイが居なくなったのを確認すると、ケイの事を俺に聞こうとしたが、言葉が詰まった。

「うん、もう亡くなってるよ」
「たしか両親ともケイが小さい頃に病気でって聞いた気がする」
「兄貴もいたけど……一昨日の夜、殺された」
「村の人たちは分からない」

 俺は近くにあった火ばさみで炭をいじり始める。

「そうなんだ……」
「アレンはいつからケイちゃんと一緒にいるの?」

 ヒナコは庭に出していた足を縁側にしまい、体育座りに体勢を変えた。

 俺たちの事は既にアメリアさんから説明されたのか、されていないのかは不明だが、大まかな事情は察したようだ。

「一週間前ぐらいかな……」
「この世界にきて山でフラフラしてたらたまたまケイに会って、そこから懐かれている」
「そこから……まぁ……今、なんやかんやで二人でいる」

 俺がそう言うとヒナコは少し驚いた表情を見せた。

「え、アレンは山の中で甦ったの?」
「普通はお城の中とか決められた場所で甦るんだよ?」
「なんか……アレンって色々と変だよね」

 ヒナコは体育座りの隙間から少し笑顔を覗かせた。

 言われるまで今まで疑問にも思わなかったが、俺が山の中で目を覚ましたことには意味があるのだろうか……
 もし俺をこの世界に呼んだのが優しい神様なら、最初からこんな試練は与えないはずだ。

 ということは恨むべきは神ではなく、やはり悪魔か……


 結局ヒナコとケイが帰った後にも甦人についての本も無理していくつか読んだが、何が要因なのかは不明のようだ。

 とはいえ本を読んで分かった事もいくつかある。

 まず、地球上で何らかの外的要因によって死んだ人間が年齢性別問わずにこの世界にやってきているということと、甦った人間は人に関する記憶を失っていることだ。
 つまり寿命で死んだり病気で死んだ人はこの世界に甦らない。

 それと、ほんの10年ほど前にモンスターと人間の大きな戦いがあり、その時期から甦人がこの世界に甦っていない事と、モンスターの数が極端に減ったことだ。

 なので、もしかしたら俺は10年ぶりの甦人なのかもしれない。

 この世界は甦人から得た知識を使って発展している面もあり、俺の存在は割と重要なのかもしれないが、多分、昨日の役所のおっさんはその重要さに気づいていない可能性がある。
 何もなければないで楽なのだが、生きている頃の知識をひけらかしたかった気持ちも心の奥底に少しある。

 まぁ、なにか聞かれるまでは黙っておこう……

 それに甦人とモンスターの数に相関がありそうな事も気になる。
 基本的にモンスターは繁殖しなくても自然発生するらしいので、なにか別の要因が……


「……アレン?」
「アレン、大丈夫?」
「もしかして怒った?」

 脇に目を逸らすと庭に足を放り出しているヒナコが俺の顔を覗き込んでいた。

 ヒナコとの会話を忘れ、炭をいじる手も止めて色々考えていたら心配されてしまった。

 図書館から急いで帰ってきたために、頭の整理がまだ出来ていない。

「ううん、大丈夫」
「別に怒ってないよ」
「ただ考え事してただけ」

 俺はそう言って再び炭を火ばさみでいじり始めた。
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