レベルってなんですか?

Nombre

文字の大きさ
133 / 244
第二章「セントエクリーガ城下町」

第九十六話「取り調べ 2」

しおりを挟む
 コンコン……ガチャ

 俺が答えるのをためらっていると誰かがドアをノックした。

 助けかと安心したのもつかの間で、男の人が大きな紙を受け取ると、その扉はすぐに閉じられてしまった。

「すみません」
「えー、ちなみに具体的にどこに遺棄したのかは覚えていますか?」

 男の人はドアの外から受け取った地図を机の上で広げる。

 俺は期待を裏切られたのがショックで目を拭いながら息を漏らした。

「ふぅ……」
「この辺りの草陰です」
「血だまりが残っていると思います」

 俺は自然な流れで地図を指差して答えたが再びパニックになる。

 答えたってことは罪を認めた事になるのか?

「アレンさん、なにか隠していませんか?」
「もし逃亡を手助けしたのなら罪は重いですよ?」

 動揺しているのが伝わったのか男の人は俺に不審な目を向ける。

 俺は胸に手を当て、慌てて必死の冷静を装った。

 大丈夫、大丈夫……とにかく話を逸らそう。

「逃亡の手助けなんてしていません」
「それよりも、ウォロ村の裏門が作為的に塞がれていました」
「あれは普通のモンスターには出来ないはずです」

 俺はなんとかひねり出した渾身の反撃を見せる。

「なぜ素人であるあなたにアレが作為的だと分かるのですか?」
「そもそも、あそこは普段使われていないはずの非常用の門です」
「もし作為的に塞がれたのであるならば、ウォロ村に詳しい人物、つまりあなたが疑われるのは理解できますか?」

 俺の必死の抵抗は男の人にとっては陳腐な発想だったのか軽くいなされてしまう。

 しかし、ここで怯むわけにはいかない。

「……はい」
「けれど村の中には鬼の足跡が残っています」
「たとえこの事件がカイがやった事だったとしても、鬼がウォロ村の中に侵入したことは素人の僕でも分かりますよ」

 コンコン……

 俺は話をさらに逸らすために、耳の裏に熱を溜めながらもなんとか口を開く。
 しかし、話している途中に再び誰かがドアをノックした。

 男の人は俺が話しているのにも関わらず、ドアのノックに答えるように立ち上がる。

「わかりました……とりあえずコーヒーを出してください」

 扉の近くで誰かと会話をしているが、男の人の声は聞こえるが相手の声が聞こえない。

 いまさら俺にコーヒーを出すのか?

「ん゛っん゛ん……失礼しました」
「えー、先程あなたは自分の足跡を消したと仰っていましたが、足跡を消すことが可能ならば、鬼の足跡を作ることも可能なのではないですか?」
「それに足跡も普通の鬼とはかなり異なった特徴をしていましたし、黒い鬼という仮想の新種モンスターに見せかけて犯行を隠そうとしたのではないのですか?」

「違いま……」「それにですね!」

 俺が反論をする隙を作らず男の人は威圧的に言葉を被せる。

「あなたは知らないかもしれませんが、この世界では新種のモンスターに見せかけて犯罪を犯すケースは多いです」
「そもそも、あなたが森の中で甦ったというのも嘘なんじゃないんですか?」
「それこそ前例がありませんよ」
「私たちは、あなたが他国からの逃亡犯という可能性も危惧しています」
「甦った場所が森の中というのは本当なんですか?」
「……今は、未成年のケイさんにはお話しを伺っていませんが、あなたが信用できない場合は、お話をせざるを得ないのですがどうします?」

 男の人は手のひらを机の上にびったりと付けながら前のめりになって圧をかけてくる。

「それはっ……」

 俺はケイの名前を出されたことで身体が反応してしまい、椅子から身体を浮かして中腰になる。
 その瞬間、男の人は立ち上がり、右手を腰の後ろに回した。


 ……なんで熱くなってるんだ。


 俺はふと我に返り、おとなしく腰を下ろす。

 別にケイに話をさせればいいじゃないか。
 もうなにも答えることはない。
 ここからは黙秘だ。


 コンコン……ガチャ

 俺がズボンのポケットに手を入れると再び誰かがノックした。

 今度は何だよ……


「……入りますね」

 そう言いながら部屋の中に入ってきた人は、俺が今、この世で一番会いたかった人の姿をしていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...