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第三章「レゼンタック」

第十二話「後始末」

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「……大丈夫、ノア?」

 俺が心配そうな目でノアを見ると、ノアは俺に笑顔を向けた。

 初めてノアが本気で焦っているところを見た。
 しかし、それも無理はない。

「大丈夫だ!」
「もう繋がった!!」
「血もすぐに止まる!!」

 ノアは血を拭いながら右腕を抑えていた左手を離す。

 血はまだ垂れているが、大丈夫そうだ。


「……おい!アレン!」
「もう一度、短剣を抜け!!」

 ノアはそう言うと、再び俺の前に右腕を差し出した。

「できないよ……」

「いいからやれ!!」

 ノアは右手で俺の腰に差さっている短剣を抜き取って俺に渡すと、右腕を元の位置に戻した。
 いつもと違って真剣な顔をしている。


「本気でやれよ」


 俺は唾を飲み込んで覚悟を決めると、薄目になりながら短剣をノアの右腕に振り下ろした。

 ピリーーン

 先程よりも弾力のある感触が手に伝わる。


 ノアはしばらく黙った後、腕を降ろした。

 先程と違い、表面の皮が少しめくれただけで血もあまり出ていない。


「安心しろアレン」
「怖がらなくていい」
「さっきは俺が油断していただけだ」

「……あぁ」

「よし、少し休憩だ!!」
「自分の武器にビビッてるようじゃまともに振り回せないぞ!」
「ガッハッハッハッハ!」

 ノアはそう言うと、俺の力む肩をそっと撫で下ろして建物の中に姿を消した。


「ふぅ……」

 俺は慎重に短剣を鞘に納め、ホルスターから外す。

 しばらくの間、身体から離しておきたい。



「よーし、再開するぞ!!」

 建物の壁に寄り掛かかっていると、ノアが右腕に血の滲んだ包帯を着けて戻ってきた。
 右手にはホースを持っている。


 ノアは運動場の端にある蛇口にホースを付けると、ちょろちょろと水を出してこちらに向かってきた。

「血で汚れてる所に水を掛けといてくれ!」

 ノアはホースの先を俺に渡すと武器庫の中に入っていた。


 言われた通り赤い地面に水を当てていると、ノアがスコップを持って武器庫から出てきた。

「もういいぞ!」
「水止めてきてくれ!!」


 俺はホースの先を持ちながら蛇口に近づき、水を止める。


 ザクッ……カシャ……、ザクッ……カシャ……、ザク……

 振り返ると、ノアが水で湿っている地面を掘り返していた。


 ある程度、掘り返すと、ノアは掘った土を元にに戻して表面をスコップで叩き始める。


「よし、これでいいだろう!」

 ノアはスコップを持って武器庫に入り、槍と持ち替えて戻ってきた。


「アレン!武器を抜け!」
「慣らしやるぞ!!。

 ノアは俺に槍を向ける。

 俺は短剣を鞘ごとホルスターから外し、短剣を右手、鞘を左手にして構えた。

「面白いな……」
「分かってると思うが、手を抜くなよ!」

「あたりまえだろ」

 俺が返事をするとノアは一瞬、驚いた顔をしたが、直ぐに口角を上げた。


 あの感覚……気持ちよかった。

 もう一度だけ……
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