レベルってなんですか?

Nombre

文字の大きさ
161 / 244
第三章「レゼンタック」

第二十四話「10コード」

しおりを挟む
 うーん……

 今日は雲一つない快晴だが、黄色い空だと爽快さが半減している気がする。
 せっかくのお散歩だというのに気分が乗らないな。

「まず外に出てやることは指令室との連絡だ!」
「耳に着けた機械を軽く触ると、マイクが繋がる!」
「ちなみに、その通信機はクソ高いから絶対に壊すなよ!!」
「連絡はどっちがやる?」

「俺がやります」

 ハリソン君は勢いよく手を挙げた。

 耳に付けているイヤホンにはマイクが見えなかったのでマイクは通信機本体に付いていると思っていたのだが、どうやらマイクが内蔵されているタイプだったようだ。


「よし、そしたら通信機の裏を見てくれ!」

 俺とハリソン君はベルトから通信機を取り外し、後ろを見た。
 通信機の後ろには数字などが書かれた手作りの表が貼り付けてある。

 ノアの説明によると、壁の外での任務中は、言い間違えと聞き間違えを減らすために[10コード]というものを使うらしい。
 例えば『10-4(テンフォア)』で了解やOKというような10-0から10-10までコードは存在し、さらに『Code Red(コードレッド)』が負傷や緊急事態というような色のコードも存在する。

 一見ややこしいように感じるが、ノアが馬鹿なおかげですべての通信機の裏側に対応表がついているので安心だ。

 その他にも、数字の読み方を少し変える必要があるが、とりあえずカッコつけていれば問題ない。

 ちなみに壁の中では通信が出来ないそうなので、必ず壁の外に出てから通信をするようだ。


「10-8,10-8(テンエイト、テンエイト)」
「ハリソン、ノア、アレンより指令室へ」
「時刻12:41より西門から出発します」

 ハリソン君は時計を片手にノアに教えられた文言を喋っている。
 その声は俺のイヤホンからも聞こえてきた。

「……10-2」
「……地点A72(アルファセブンツー)へ移動せよ」
「初任務、頑張ってください」

「10-4」
「ふぅ……」

 初通信を終えたハリソン君は自慢げな顔をしている。

 カッコいい。
 俺も早く『椅子のお姉さん』とお話してみたい。


「二人とも、移動中にモンスターを探して見つけたらすぐに報告しろ!」
「それとこの仕事は基本的には15分刻みで動いているから、今回なら1時ちょうどにA72に到着するのがベストだ!」
「走る速度はそのうち慣れてくる!」
「よし、いくぞ!」

 ノアはそう言うと、壁に沿って北に走り始めた。

 走る速度は軽めのマラソン程度だったので体力的には大丈夫そうだ。
 壁の西側には初めて出たが、山が見えるだけで景色は特に変わらない。


 ……コンパスと地図だけで自分が地点A72にいるってどうやって判断するんだ?



「よし、ここだ!」
「アレン、時間は?」

「ふぅー」
「えーっと、1時ぴったり」

 俺は腰のポーチから時計を取り出して時間を確認する。

 時間ぴったりか……
 ノア、すごいな。


「二人とも、そこの地面を見てみろ!」

 ノアが指差した地面にオレンジ色の石の円盤が置いてある。
 そこには白い文字で[A72]と書いてあった。

 ということは地点ごとにこの円盤が置いてあるのか……
 意外と気づかないものだな。


「その石の下に発煙筒が入ってるからな!」
「開けるとレゼンタックで馬鹿でかい警報が鳴るから緊急事態以外に開けるなよ!」
「そしたらアレン、地点を確認したら指令室に報告だ!」

「わかった」

 俺は耳につけたイヤホンに軽く触れる。

 プンッ

 マイクが繋がったのか、ポップな音がイヤホンから鳴った。


「アレン、ノア、ハリソンより指令室へ」
「地点A72、到着しました」

「……10-4」
「……地点A72で待機せよ」

「10-4」

 ハリソン君の時みたいに『頑張って』的な言葉はないのか……
 少し寂しいな。


「よし、15分の休憩だ!」

 ノアはそう言うと、円盤状の石の上に腰を下ろした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

処理中です...