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第三章「レゼンタック」
第八十六話「ポートアーレ」
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「それじゃあ私たちこのホテルだから、昇級試験頑張ってね!」
「がんばてねー」
「あーうん……、二人も楽しんでね」
なつかしい塩の香りだ。
俺も一緒に遊びたかったな……
俺は薄着のヒナコとケイと別れ、貨物者用の案内標識を見ながらノアとの待ち合わせ場所に向かう。
この町はセントエクリーガ城下町から一週間ほど歩いた場所にある港町ポートアーレ。
名前の通りこの町には海を通じて世界中の物が集まってくる。
敷地の面積だけなら城下町よりも広いが、そのほとんどが道路か倉庫だ。
モンスターがいるこの世界では頻繁に物を運ぶことが出来ないので、この町のように物流拠点となっている町がいくつかあるらしい。
しばらく海風に逆らって歩いていると、見覚えのある黒いシルエットが目に入る。
うーん……、あまり近寄りたくないな。
知り合いだと思われたくない。
「おうアレン!」
「無事に着いたようだな!」
ゆっくりと黒光りに近づいていくと、急に馬鹿みたいな声量で名前を呼ばれた。
俺は恥ずかしいので足を速めて近づく。
「まぁ、少し遅れたけど国道を通ったほうが安全だからね」
「えーっと……、それより何で上裸なの?」
「男は海で日焼けするもんだろ!」
「それに暑いしな!!」
「お前はそんな恰好で暑くないのか?」
スーツの男と海パン男では傍から見れば奇妙な光景だろう。
「平気、それでいつ出発?」
「一時間後だ、ついてこい!」
俺はいつもより黒く引き締まった背中の後に続き、浜辺の脇を歩いていく。
この時期は観光客が多いようだ。
「ついたぞ!」
「これが今日から三日間のお前の家だ!」
「それにしてもデカい船だね……」
俺は顎を空に向けながら船の全体を見渡す。
「そうだな、お前ひとりで守るには少し広いかもしれんな!」
「武器はしっかりと持ってきたよな?」
「うん」
俺は武器のケースを胸元まで待ち上げてノアに見せる。
「それだけあれば十分だ!」
「さっそく乗り込むぞ、まずはボースンに挨拶だな」
ノアはそう言いながら桟橋と船の間にかかる木の板に足をかける。
バキンッ
乾いた破裂音がした瞬間、目の前の視界が開けた。
「アレン手を出すな!!」
桟橋と船の間に落ちていくノアに咄嗟に手を伸ばそうと思った瞬間、船体が桟橋にぶつかる。
ノアの呼びかけが無かったら腕が無くなっていた。
ざわざわざわ……
俺が特に心配もせずにノアが戻ってくるのを待っている一方、周りで見ていた人たちの様子が少しづつ慌ただしくなってくる。
大事になる前に大丈夫だということを伝えた方が良いかもしれない……
「すみません、僕のせいなんです!」
そう言いながら一人の少年が俺の傍に寄ってきて俺に頭を下げる。
「ああ、たぶん大丈夫ですよ」
「かなーり頑丈なんで」
「少しは心配したらどうだ?」
思った通り、ずぶ濡れのノアがどこからともなく姿を現した。
それと同時に周りで騒いでいた人たちも慣れた感じであっという間に解散した。
「まぁ、服着てなくて良かったね」
「確かにそうだな!」
「それにしても見ない顔だな、新入りか?」
「はい、今日からレゼンタック通信部技術科海上隊に転勤しましたマーレといいます」
「先程は申し訳ありませんでした!」
「心配するな、俺が重かっただけだ!!」
「お気遣いありがとうございます!」
「お父さ……、甲板長は操舵室にいるので乗船しましたらすぐ脇の階段を上ってください」
「それではまだ出航準備が残っているので失礼します」
そう言い残すと少年は新しく木の板を桟橋と船に架け、慌ただしい様子で姿を消した。
「……うん、アレン先行っていいぞ」
「……上司が先に行くものでしょ?」
「……ふむ」
ノアが新しく架けられた木の板を使わず船に飛び乗ると、俺も同じく軽くジャンプして船に乗船した。
「がんばてねー」
「あーうん……、二人も楽しんでね」
なつかしい塩の香りだ。
俺も一緒に遊びたかったな……
俺は薄着のヒナコとケイと別れ、貨物者用の案内標識を見ながらノアとの待ち合わせ場所に向かう。
この町はセントエクリーガ城下町から一週間ほど歩いた場所にある港町ポートアーレ。
名前の通りこの町には海を通じて世界中の物が集まってくる。
敷地の面積だけなら城下町よりも広いが、そのほとんどが道路か倉庫だ。
モンスターがいるこの世界では頻繁に物を運ぶことが出来ないので、この町のように物流拠点となっている町がいくつかあるらしい。
しばらく海風に逆らって歩いていると、見覚えのある黒いシルエットが目に入る。
うーん……、あまり近寄りたくないな。
知り合いだと思われたくない。
「おうアレン!」
「無事に着いたようだな!」
ゆっくりと黒光りに近づいていくと、急に馬鹿みたいな声量で名前を呼ばれた。
俺は恥ずかしいので足を速めて近づく。
「まぁ、少し遅れたけど国道を通ったほうが安全だからね」
「えーっと……、それより何で上裸なの?」
「男は海で日焼けするもんだろ!」
「それに暑いしな!!」
「お前はそんな恰好で暑くないのか?」
スーツの男と海パン男では傍から見れば奇妙な光景だろう。
「平気、それでいつ出発?」
「一時間後だ、ついてこい!」
俺はいつもより黒く引き締まった背中の後に続き、浜辺の脇を歩いていく。
この時期は観光客が多いようだ。
「ついたぞ!」
「これが今日から三日間のお前の家だ!」
「それにしてもデカい船だね……」
俺は顎を空に向けながら船の全体を見渡す。
「そうだな、お前ひとりで守るには少し広いかもしれんな!」
「武器はしっかりと持ってきたよな?」
「うん」
俺は武器のケースを胸元まで待ち上げてノアに見せる。
「それだけあれば十分だ!」
「さっそく乗り込むぞ、まずはボースンに挨拶だな」
ノアはそう言いながら桟橋と船の間にかかる木の板に足をかける。
バキンッ
乾いた破裂音がした瞬間、目の前の視界が開けた。
「アレン手を出すな!!」
桟橋と船の間に落ちていくノアに咄嗟に手を伸ばそうと思った瞬間、船体が桟橋にぶつかる。
ノアの呼びかけが無かったら腕が無くなっていた。
ざわざわざわ……
俺が特に心配もせずにノアが戻ってくるのを待っている一方、周りで見ていた人たちの様子が少しづつ慌ただしくなってくる。
大事になる前に大丈夫だということを伝えた方が良いかもしれない……
「すみません、僕のせいなんです!」
そう言いながら一人の少年が俺の傍に寄ってきて俺に頭を下げる。
「ああ、たぶん大丈夫ですよ」
「かなーり頑丈なんで」
「少しは心配したらどうだ?」
思った通り、ずぶ濡れのノアがどこからともなく姿を現した。
それと同時に周りで騒いでいた人たちも慣れた感じであっという間に解散した。
「まぁ、服着てなくて良かったね」
「確かにそうだな!」
「それにしても見ない顔だな、新入りか?」
「はい、今日からレゼンタック通信部技術科海上隊に転勤しましたマーレといいます」
「先程は申し訳ありませんでした!」
「心配するな、俺が重かっただけだ!!」
「お気遣いありがとうございます!」
「お父さ……、甲板長は操舵室にいるので乗船しましたらすぐ脇の階段を上ってください」
「それではまだ出航準備が残っているので失礼します」
そう言い残すと少年は新しく木の板を桟橋と船に架け、慌ただしい様子で姿を消した。
「……うん、アレン先行っていいぞ」
「……上司が先に行くものでしょ?」
「……ふむ」
ノアが新しく架けられた木の板を使わず船に飛び乗ると、俺も同じく軽くジャンプして船に乗船した。
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