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第三章「レゼンタック」

第八十九話「超電磁バリア」

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 監視塔に上がるとノアが俺が座る予定の小さな椅子に深く腰をかけていた。

「この船凄いね、海水が動いてるよ」

「レゼンタックが誇る最新技術だからな!」
「俺も初めて見た時は驚いたぞ!!」


 この船体を含めレゼンタックが保持する船には安全な航海が行える技術がある。
 超電磁バリアだ。
 この船はディーゼルエンジンで発電した電力を推進力と超電磁バリアに使っている。
 この世界のモンスターは身体を構成する物質として強磁性を持った成分が入っているらしい。
 なので、船体の周囲に磁場を生み出すことでモンスターは海水面から甲板に侵入することなく吹っ飛んでいく。
 一応、人体に影響は無いようだが、念のため海に落ちないように気を付けなければならない。
 そんな異世界というより近未来的な装置がこの船には搭載されているのだ。

 だが、全てのモンスターを防げるわけではない。
 船体の上空は磁場が内側に向いているので、上空を飛べるトビウオ型、マンタ型はある程度の割合で甲板上に侵入してきてしまう。
 それを退治するのが今回の俺の仕事だ。
 また、ケーブルの交換作業中は数分の間超電磁バリアが使えなくなるので、その間は全てのモンスターに対処しなければならない。

 質量が段違いなクジラ型も危険だが、生息域が離れているので今回の任務には関係ない。


「あっついな……」
「アレン、俺は中で涼んでるから何かあったら呼べ」
「潮目はモンスターが集まるから気を付けろ」

 ノアはそう言いながら手団扇をしながらゆったりと立ち上がる。
 ノアは相当な暑がりなようだ。

「潮目って?」

「暖かい海水と冷たい……、まぁ、あの白い筋だ」

 ノアは早く中に戻りたいのか、説明を諦めて海を指差す。

「わかった」

「それと今回の任務は討伐じゃなく護衛だからな」
「そこは忘れるなよ」

「イエッサァ」

 俺はノアが退いた椅子に座ると、脚を揺らしながら海を眺める。
 少し揺れが強いがなかなか快適だ。


 ピチュンッ

 視界の端で海水が跳ね上がるとの同時にトビウオ型のモンスターが視界に映る。
 思っていたよりも素早く、甲板の上にいる作業員はその姿に気づいていないようだ。

 だが、それは好都合だ。

「ルー、薙げ」

 俺がそう言うと、トビウオが鈍い音と同時に船外から弾き飛ばされる。

「<コール>」

 俺は膝の上に戻ってきたルーを撫でながら再び海を眺める。

 ルーの怪我は俺では完全に治すことが出来ず、左前脚はスムーズに動かすことができない。
 やはり生まれながらにして関節に異常があるのかもしれない。
 だが、戦闘に支障もなく当人も慣れてしまったようだ。
 <召喚士>にスキルポイントを使えば治すことが出来るかもしれないが、それはまだ先になりそうだ。


 それにしても……、楽な試験になりそうだな。
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