レベルってなんですか?

Nombre

文字の大きさ
232 / 244
第三章「レゼンタック」

第九十五話「最善策」

しおりを挟む
「んっぐ……」

 口の中に物凄い勢いで血が溜まっていく。
 衝撃で身体が動かせない。

 目まぐるしく動き回る視界の端で、ノアが破断したケーブルの先を持って海に飛び込んでいくのが見える。


 バシャ、チリッ

 海面に身体が沈む瞬間、身体に電気が走る。
 そのきっかけで身体の自由が利くようになった。


「アクティベイト」

「……ステイ」

 俺は海面に顔を出し、呼吸と整えながらグローブを外してスキルボードを出す。
 そして、<海士>にSPを10ポイント振り<海睛>を手に入れ再び海に潜った。
 これで海の中でもくっきりと目が見える。
 しかし武器は船の上に置いたままだ。


「こぽッ……、ごぽッ……」

 俺は海の中で咽ながらノアの姿を探す。
 すると、少し先で破断したケーブルの両端を手に取り、両腕を明一杯広げながら堪えているノアの姿が見えた。
 感電して気を失っているのかピクリとも動かないが、その両手からケーブルを離す素振りは見られない。

 海底ケーブルは適切に設置されていればその場から動くことはほとんどないが、破断したケーブルはそのままにしておけばこの辺りの強い海流によって流されてしまう。
 その分ケーブルの修理が遅れ通信も戻らない。
 ノアはそれを何としても防ぎたいのだろう。
 遠く離れたちから地からやってきたノアはこの長距離通信の重大さを俺以上によく分かっている。


 グリュリュリュリュリュ……

 水中にも関わらず、何かが水を掻き水流が乱れる大きな音が響き渡る。
 どうやらテリトリーに入った侵入者を感知したらしい。

 あのクジラは頭がいいからな……
 <懦弱>もあるし、狙うならばきっと俺からだ。


「ブクブクブクブク……」

 船上のモンスターは全て倒した。
 しばらくすれば安全が確認されエンジンも復旧し、あの息子が事態を説明してケーブルが巻き取られるだろう。

 俺の任務は討伐ではなく護衛だ。
 となれば武器は必要ないか……


 船体の向こう側からのっそりと2体のクジラが姿を現す。
 そして何も躊躇わずに胸ヒレをぶつけ合いながら俺に向かって直進してきた。

 俺は手足を大きくゆっくり動かして水を掻き、2体の直線軌道上から逸れる。

 俺の真横のギリギリを通っていった2体のクジラは二手に分かれて旋回を始めた。
 こいつの食事方法は丸呑みが基本のため鋭い歯などは生えていないが、冷静さを失う程度の恐怖感はある。

 俺は2体のクジラの旋回半径を予測し、その内側に向かって再び水を掻いた。
 その巨体ゆえに旋回半径はかなり大きいので胸ヒレと尾ヒレにさえ注意すれば近寄る事も容易である。


 今できる最善の策は、息を止め目を離さない事だ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

処理中です...