237 / 244
第三章「レゼンタック」
第百話「帰港」
しおりを挟む
「あ”―、やっと着いたー!!」
俺は誰よりも早く船から降りると、桟橋の上で大きく深呼吸する。
あのクジラ騒動の翌日、予定通り帰りの船は出航し傷が癒えぬまま俺は護衛の任務に就いたが、ルーのおかげもあって特に問題なく帰ってこられることが出来た。
というより、そもそもこのくらい余裕の任務のはずだったのだ。
まぁ、何はともあれ無事に帰ってこれて良かった……
「おいアレン、まだ港に着いただけだぞ」
「……それでこの後はどうするつもりだ?」
ノアはゆっくりと船から降り、船のロープを繋いでおくビットに腰を下ろした。
まだ全身の包帯は外れておらず絶好調とは言い難い。
「この後はこのまま休暇に入る予定だったけど怪我の事もあるしレゼンタックに戻ろうか迷ってる」
本来ならば試験の結果が出るまでケイやヒナコと海で遊ぼうと思っていたのだが、この調子では海には入れないだろう。
せっかく水着をユバルさんの店で買ったのに……
「あれだけ治療を嫌がってたのに医者に診てもらうのか?」
「金に困ってるなら建て替えといてやるぞ?」
「いや、トレバーさんに診てもらおうと思って……」
「そうか、珍しいな!」
「あいつも医者のせがれだから安心して治療を受けて大丈夫だぞ!!」
「ノアよりは信頼してるよ」
「アレンさーん!」
「傷の調子はどうですかー!」
船の方を見上げると、作業中のマルセア君が大きく腕を振っているのが見えた。
「昨日よりはだいぶ良くなった―!」
「手当てありがとー!」
俺はそう言うと、右腕を庇いながら腕を振り返した。
包帯の下にある千切れかかった腕は既に繋がり始めている。
マルセア君は安心した表情を見せると。一礼して作業に戻った。
「その調子ならレゼンタックに戻らなくてもいいんじゃないか?」
「……やっぱり一日だけここで遊んでから帰ることにする」
「それじゃあさっさと仕事を終わらせるか!」
俺はノアと歩幅を合わせながら桟橋の近くにある小さな小屋に向かった。
「キャプテン!無事で何よりで!」
「今回の任務は散々だったな」
「私も引退前に良い経験をしたよ」
俺とノアは任務が無事に終了した事を証明する手続きを始める。
といってもボースンなどの責任者にサインを貰うだけだ。
これで本当に任務は終わりだ。
「おい若造、今回は助かったぞ」
「いい働きをしたな」
「ありがとうございます」
「……あ」
俺は気が抜けていたせいで思わず頭を下げてしまう。
「ふん、また頼むぞ」
ボースンは俺の頭を軽く撫でると、作業に戻るために小屋を後にした。
「アレン、後は俺がやっておくからもう終わっていいぞ」
「やった、じゃあお疲れ」
「またレゼンタックで」
俺はファイルにまとめた書類をノアに渡すと小屋を後にした。
「いい天気だな……」
俺は残りの痛み止めの数を確認すると空を見上げる。
黄色い空に蒼い海。
やっぱり地球の方が綺麗だな。
「とりあえず昼飯でも食べるか……」
俺は誰よりも早く船から降りると、桟橋の上で大きく深呼吸する。
あのクジラ騒動の翌日、予定通り帰りの船は出航し傷が癒えぬまま俺は護衛の任務に就いたが、ルーのおかげもあって特に問題なく帰ってこられることが出来た。
というより、そもそもこのくらい余裕の任務のはずだったのだ。
まぁ、何はともあれ無事に帰ってこれて良かった……
「おいアレン、まだ港に着いただけだぞ」
「……それでこの後はどうするつもりだ?」
ノアはゆっくりと船から降り、船のロープを繋いでおくビットに腰を下ろした。
まだ全身の包帯は外れておらず絶好調とは言い難い。
「この後はこのまま休暇に入る予定だったけど怪我の事もあるしレゼンタックに戻ろうか迷ってる」
本来ならば試験の結果が出るまでケイやヒナコと海で遊ぼうと思っていたのだが、この調子では海には入れないだろう。
せっかく水着をユバルさんの店で買ったのに……
「あれだけ治療を嫌がってたのに医者に診てもらうのか?」
「金に困ってるなら建て替えといてやるぞ?」
「いや、トレバーさんに診てもらおうと思って……」
「そうか、珍しいな!」
「あいつも医者のせがれだから安心して治療を受けて大丈夫だぞ!!」
「ノアよりは信頼してるよ」
「アレンさーん!」
「傷の調子はどうですかー!」
船の方を見上げると、作業中のマルセア君が大きく腕を振っているのが見えた。
「昨日よりはだいぶ良くなった―!」
「手当てありがとー!」
俺はそう言うと、右腕を庇いながら腕を振り返した。
包帯の下にある千切れかかった腕は既に繋がり始めている。
マルセア君は安心した表情を見せると。一礼して作業に戻った。
「その調子ならレゼンタックに戻らなくてもいいんじゃないか?」
「……やっぱり一日だけここで遊んでから帰ることにする」
「それじゃあさっさと仕事を終わらせるか!」
俺はノアと歩幅を合わせながら桟橋の近くにある小さな小屋に向かった。
「キャプテン!無事で何よりで!」
「今回の任務は散々だったな」
「私も引退前に良い経験をしたよ」
俺とノアは任務が無事に終了した事を証明する手続きを始める。
といってもボースンなどの責任者にサインを貰うだけだ。
これで本当に任務は終わりだ。
「おい若造、今回は助かったぞ」
「いい働きをしたな」
「ありがとうございます」
「……あ」
俺は気が抜けていたせいで思わず頭を下げてしまう。
「ふん、また頼むぞ」
ボースンは俺の頭を軽く撫でると、作業に戻るために小屋を後にした。
「アレン、後は俺がやっておくからもう終わっていいぞ」
「やった、じゃあお疲れ」
「またレゼンタックで」
俺はファイルにまとめた書類をノアに渡すと小屋を後にした。
「いい天気だな……」
俺は残りの痛み止めの数を確認すると空を見上げる。
黄色い空に蒼い海。
やっぱり地球の方が綺麗だな。
「とりあえず昼飯でも食べるか……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる