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2章 ここから始まる教師生活
17話 模擬戦
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俺が今日やる訓練のことを話せばリンガネの気が抜けた声が聞こえた。
「ちょ、ちょっと待て!先生話が違うじゃんかよ!」
「何が違う?」
「あたしは先生と手合わせして、実力を測ると…」
「俺が相手するなんて言ってない」
「でも昨日…!」
「それは公式がお前の中に染みついていると俺の中でわかった状態での話だ」
「嘘だろ………」
「さっきから言う公式とは?」
「気にするな、ハルサキ」
指導者嫌われ作戦その1。何気に俺のことを執着してくるリンガネに対して絶望感を植え付けることだった。
俺が授業について話す前は、絶対に手合わせ出来ると思い込んでいたリンガネ。そんな期待を裏切るという行為を含めたのが今の言動だ。
大きく膨らんだ楽しみが俺の一言によって爆発して縮まる。それが今のリンガネの状態。……ああ、我ながら恐ろしい作戦を実行してしまった。父上、母上、心を悪に少し染めてしまった俺をお許しください。
「リンガネさん?何でそんなブルーなオーラを?」
「アサガイ委員長。準備運動は終わったのか?」
「は、はい!」
「なら2人1組で模擬戦を行って………はっ!」
「2人1組だと1人余ってしまいますね」
準備運動が終わったアサガイ委員長は冷静にそう言った。俺は周りを見て生徒達の人数を改めて数える。Aクラスの生徒の人数は7人。2人1組で組んでしまえば確実に1人余る人数だ。
「しまった…」
「なら!あたし先生と組む!!」
さっきまで意気消沈していたリンガネは顔を勢いよく上げて笑顔を取り戻す。今度は俺が俯く番だった。素晴らしい嫌われ作戦を考えるのに夢中で、肝心の人数情報を忘れているなんて。
「それでしたら後は出席番号順で組みましょうか」
「レオン族よ。手合わせ頼むぞ」
「ええ、お手柔らかにですわ」
「ヒマワリはミロクニちゃんとだ!よろしくね!」
「………うん」
「早い順で始めるなら、俺とアサガイ委員長からになるのか?」
「そうですね。シンリン先生、他の組合わせの方達は見学で良いですか?」
「……ああ」
「っしゃあ!」
俺は大きなため息を出してしまった。こんなの幼い子供がする間違えと同じではないか。カムイ王都の皇子として情けない。落ち込む俺をよそにリンガネは熱くなり始めて、何だか頭痛を感じた。
「ルールはどうしましょう?」
「るーるとは?」
「時間制限を設けますか?それとも無制限で倒れた方が負けとか…」
「いつもお前達はどれくらいの速度で討伐を行う?」
「その時によってです。カゲルの数の多さや強さで変わりますから」
「俺達が貴方と初めて会った時は5分で終わらせたはずだ」
「なら5分の制限を付けよう。誰か時間を測ってくれ」
「……私、時計見る」
「ではミロクニに任せる。この模擬戦は勝敗関係なく、自分の戦いを見せるものと思え」
俺の目の前で刀を構えたアサガイ委員長とハルサキは頷く。こうなってしまってはもうどうにもならない。自分の過ちはこれからの作戦立てに活かせば良いのだ。
俺は深呼吸をして、戦闘体制に入った2人から少しだけ離れる。残りの生徒は邪魔にならない入り口付近で待機しているのでそちらには目を向けなくても良いだろう。
「始めろ」
「「はい」」
俺の合図で2人は一斉にお互いに向け飛び出した。刀を交えての戦いは竹刀でも手を抜いてはいけない。それをちゃんとわかっているようで、素早い動きを繰り出す。
竹刀がぶつかり合う音がうるさく感じてしまうほど訓練室に響き渡る。今の状況から分析すれば、力ではハルサキが勝っているな。しかしそれを回避する能力はアサガイ委員長が優れていた。
ほとんどその場から動かないで打ち合う戦い。もしこれがカゲル相手だったら、きっと同じ場所で戦うのは出来なそうだ。一体だけでも討伐した俺にはわかる。あの俊敏な動きは自分にとって武器になり、討伐する生徒達にとって厄介だ。
「……残り30秒」
入り口付近からミロクニの静かな声が時間を教えてくれる。俺には聞こえたけど、2人には聞こえているのだろうか。そう心配になるくらいに無我夢中で竹刀を振り回していた。
「……5分」
「終われ」
「「…………」」
「聞こえてないのか…?」
「「…………」」
「終わるんだ!!」
案の定聞こえてなかったらしい。声を張り上げた俺にやっと時間が経ったことに気付いて2人の竹刀は止まった。
「やはりあの2人は凄いですわね」
「ああ、強者族に属する」
「凄ーい!!」
後ろから褒め称える生徒がいるけど、俺は何も言わずに2人に近づいた。少し息切れをしているアサガイ委員長とハルサキ。近づく俺に気付いて竹刀の構えを解いた。
「お疲れ。5分は短かったか?」
「いえ、大丈夫です」
「それで貴方の目で俺達はどう見えた」
「2人は刀を握って何年になる?」
「刀を握って…?私は2年目です」
「俺は1年半だ」
「そうか。それなら上出来の部類だろう」
「ほ、本当ですか!」
「荒削りではあるがな。ただ指導がいらないと言っているわではない。その月日で今の実力と考えての意見だ」
ん?なんか俺今、嫌われる作戦と矛盾している言葉を言ってなかったか?
「ではこれからご指導よろしくお願いします!」
ふとそう思ったのは正解だったようでアサガイ委員長が綺麗なお辞儀をした。自分が言った言葉に顔を引き攣らせる俺。
もっと嫌われるような助言を言わなければならないのに、見たままの本心を伝えてしまった。ハルサキも俺の意見に満足そうな表情をしている。
「……次」
次こそは厳しい言葉をかけてやろう。模擬戦に気合いを入れる生徒達とは違い、俺は嫌われることに対しての気合いを何度も入れ直した。
「ちょ、ちょっと待て!先生話が違うじゃんかよ!」
「何が違う?」
「あたしは先生と手合わせして、実力を測ると…」
「俺が相手するなんて言ってない」
「でも昨日…!」
「それは公式がお前の中に染みついていると俺の中でわかった状態での話だ」
「嘘だろ………」
「さっきから言う公式とは?」
「気にするな、ハルサキ」
指導者嫌われ作戦その1。何気に俺のことを執着してくるリンガネに対して絶望感を植え付けることだった。
俺が授業について話す前は、絶対に手合わせ出来ると思い込んでいたリンガネ。そんな期待を裏切るという行為を含めたのが今の言動だ。
大きく膨らんだ楽しみが俺の一言によって爆発して縮まる。それが今のリンガネの状態。……ああ、我ながら恐ろしい作戦を実行してしまった。父上、母上、心を悪に少し染めてしまった俺をお許しください。
「リンガネさん?何でそんなブルーなオーラを?」
「アサガイ委員長。準備運動は終わったのか?」
「は、はい!」
「なら2人1組で模擬戦を行って………はっ!」
「2人1組だと1人余ってしまいますね」
準備運動が終わったアサガイ委員長は冷静にそう言った。俺は周りを見て生徒達の人数を改めて数える。Aクラスの生徒の人数は7人。2人1組で組んでしまえば確実に1人余る人数だ。
「しまった…」
「なら!あたし先生と組む!!」
さっきまで意気消沈していたリンガネは顔を勢いよく上げて笑顔を取り戻す。今度は俺が俯く番だった。素晴らしい嫌われ作戦を考えるのに夢中で、肝心の人数情報を忘れているなんて。
「それでしたら後は出席番号順で組みましょうか」
「レオン族よ。手合わせ頼むぞ」
「ええ、お手柔らかにですわ」
「ヒマワリはミロクニちゃんとだ!よろしくね!」
「………うん」
「早い順で始めるなら、俺とアサガイ委員長からになるのか?」
「そうですね。シンリン先生、他の組合わせの方達は見学で良いですか?」
「……ああ」
「っしゃあ!」
俺は大きなため息を出してしまった。こんなの幼い子供がする間違えと同じではないか。カムイ王都の皇子として情けない。落ち込む俺をよそにリンガネは熱くなり始めて、何だか頭痛を感じた。
「ルールはどうしましょう?」
「るーるとは?」
「時間制限を設けますか?それとも無制限で倒れた方が負けとか…」
「いつもお前達はどれくらいの速度で討伐を行う?」
「その時によってです。カゲルの数の多さや強さで変わりますから」
「俺達が貴方と初めて会った時は5分で終わらせたはずだ」
「なら5分の制限を付けよう。誰か時間を測ってくれ」
「……私、時計見る」
「ではミロクニに任せる。この模擬戦は勝敗関係なく、自分の戦いを見せるものと思え」
俺の目の前で刀を構えたアサガイ委員長とハルサキは頷く。こうなってしまってはもうどうにもならない。自分の過ちはこれからの作戦立てに活かせば良いのだ。
俺は深呼吸をして、戦闘体制に入った2人から少しだけ離れる。残りの生徒は邪魔にならない入り口付近で待機しているのでそちらには目を向けなくても良いだろう。
「始めろ」
「「はい」」
俺の合図で2人は一斉にお互いに向け飛び出した。刀を交えての戦いは竹刀でも手を抜いてはいけない。それをちゃんとわかっているようで、素早い動きを繰り出す。
竹刀がぶつかり合う音がうるさく感じてしまうほど訓練室に響き渡る。今の状況から分析すれば、力ではハルサキが勝っているな。しかしそれを回避する能力はアサガイ委員長が優れていた。
ほとんどその場から動かないで打ち合う戦い。もしこれがカゲル相手だったら、きっと同じ場所で戦うのは出来なそうだ。一体だけでも討伐した俺にはわかる。あの俊敏な動きは自分にとって武器になり、討伐する生徒達にとって厄介だ。
「……残り30秒」
入り口付近からミロクニの静かな声が時間を教えてくれる。俺には聞こえたけど、2人には聞こえているのだろうか。そう心配になるくらいに無我夢中で竹刀を振り回していた。
「……5分」
「終われ」
「「…………」」
「聞こえてないのか…?」
「「…………」」
「終わるんだ!!」
案の定聞こえてなかったらしい。声を張り上げた俺にやっと時間が経ったことに気付いて2人の竹刀は止まった。
「やはりあの2人は凄いですわね」
「ああ、強者族に属する」
「凄ーい!!」
後ろから褒め称える生徒がいるけど、俺は何も言わずに2人に近づいた。少し息切れをしているアサガイ委員長とハルサキ。近づく俺に気付いて竹刀の構えを解いた。
「お疲れ。5分は短かったか?」
「いえ、大丈夫です」
「それで貴方の目で俺達はどう見えた」
「2人は刀を握って何年になる?」
「刀を握って…?私は2年目です」
「俺は1年半だ」
「そうか。それなら上出来の部類だろう」
「ほ、本当ですか!」
「荒削りではあるがな。ただ指導がいらないと言っているわではない。その月日で今の実力と考えての意見だ」
ん?なんか俺今、嫌われる作戦と矛盾している言葉を言ってなかったか?
「ではこれからご指導よろしくお願いします!」
ふとそう思ったのは正解だったようでアサガイ委員長が綺麗なお辞儀をした。自分が言った言葉に顔を引き攣らせる俺。
もっと嫌われるような助言を言わなければならないのに、見たままの本心を伝えてしまった。ハルサキも俺の意見に満足そうな表情をしている。
「……次」
次こそは厳しい言葉をかけてやろう。模擬戦に気合いを入れる生徒達とは違い、俺は嫌われることに対しての気合いを何度も入れ直した。
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