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5章 反社会政府編 〜差し伸べる手〜
47話 君の名前は夏の華
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「シンリン先生、大丈夫ですか?」
「問題ない」
「私の分のヨーグルトもどうぞ。…付き合わせちゃってすみません」
「俺が付き合わせたんだ。でもこれは遠慮なく頂こう」
テーブルの上にある料理達は全て俺とアサガイ委員長が平らげて空っぽの器になっていた。ただこれだけ食べると流石に舌も唇も炎を宿しているかのように熱くなってしまって、アサガイ委員長のアドバイス通り乳製品を食べる羽目になってしまう。
何でも辛い物を食べた後に乳製品を摂ると治るらしい。俺は自分の分として頼んだヨーグルトを平らげてアサガイ委員長の分のヨーグルトに口を付けた。
「それで?スッキリしたか?」
「はい。まさかアカデミーの激辛料理を1日で制覇出来る日が来るなんて思ってませんでした。シンリン先生ありがとうございます」
「良いんだ。俺も興味があったから」
あれだけ食べてもなお平然としているアサガイ委員長の舌の状態を疑ってしまうが、今は無視しておこう。また一口ヨーグルトを食べて辛みを抑える俺。そろそろ聞いても良いのだろうか。少し固めのヨーグルトが口の中で液状になり飲み込むと同時に俺はアサガイ委員長の目を見た。
「言いたくないのであれば言わなくても良い。でも俺はアサガイ委員長が深刻そうにしている理由の目星はある程度ついている。別に誰かにそれを話すことは一切ない。良ければ聞かせてくれないか?」
「………」
本題に移れば激辛料理によって温められた空気が冷え始める。簡単には口を開いてくれるはずなんてないのは最初からわかっていた。それでも俺は聞かなければならない。生徒の悩みを削るのであれば。
「私は、別に何も」
やっと小さな声で答えてくれたと思えば呆れてしまう返答。今は俺と2人なのに、それでも真面目面をするのか。
きっとアサガイ委員長の性格からして自分なんかの悩みに俺を付き合わせたくないなんて考えているのだ。普段は良い真面目さが現在は悪い面として出ている。俺は半分まで食べ進めたヨーグルトをテーブルに置いて自分の腕を組んだ。
「まぁ気持ちは分からなくない」
「え?」
「俺もカムイ王都に居た時、弱音なんて吐くことは出来なかった。涙や苦しみを見せるなんて皇子として恥ずかしい事だと教わったからだ。いずれカムイ王都の1番上の地位を継ぐ者として強くなくてはならなかった」
思い返せば甘えるなんてしたことなかったな。例え孤立したとしても上に立つ強さを求められ、常にカムイ王都の民に強い胸を貸してやれる威厳を求められ…。カムイ王都に居た頃の俺は無自覚に重い鎖を体に巻き付けていた。
「でも討伐アカデミーに来て、俺は初めてその鎖を手放したんだ。今思えばヒマワリの腕が千切れた瞬間が始まりではなかった。確かにその時に鎖が全て落ちたが……最初にアサガイ委員長に指導者になってほしいと言われた時、ゆっくりと鎖が剥がれていってくれたのだと思う」
きっとここに来なかったら、死ななかったら気付けなかった事実。カムイ王都に戻りたい気持ちが無いわけじゃない。
けれどもここに来て良かったという気持ちがあるのは偽りない本当の感情だ。それを聞いたアサガイ委員長は何とも言えない顔になって唇をキュッと強く結ぶ。
「何が言いたいのかって言うと、今は委員長としてのアサガイじゃなくてどこにでもいる普通のアサガイになれば良いんじゃないか?他の生徒達が居ないこの場では俺もアサガイ委員長とは呼ばないようにする」
「シンリン先生…」
「そういえばアサガイの下の名前は何だ?もしかして名がアサガイか?以前ヒマワリとレオンの姓名を聞いていて生徒達の姓名が気になっているところなんだ」
「私は、朝街夏華(あさがい なつか)です。夏の華と書きます」
「夏華。美しい名前だ」
「……不思議です。シンリン先生に自分の名前を呼ばれると心が温かくなります。あの人とは大違い」
「あの人…他のクラスの奴らか。3人のうち1人は妙にお前に対して突っかかっていたな」
カナトとハルサキが居た時、1人の男子生徒が呼んだ名前である夏華はアサガイの名前だったのか。
しかしAクラスでアサガイと姓で呼ばれているのにも関わらず下の名前で呼ぶと言うことは長い縁の持ち主と考えられる。それでも彼女は全く嬉しそうではない。寧ろそいつに名前を呼ばれるのが嫌なように見える。
「私はここに来る前にあの人に告白されたんです」
「ここに来る前と言ったらまだ子供の歳だろう。随分とませているのだな」
「まぁ、恋愛に興味を持ち始める年頃でもありますからね。私はそういうのに関心がなくてあの人からの告白を断ったんです」
「無理して恋人になる必要はないからな」
「はい。でも私が断ったことによってあの人から嫌がらせを受けるようになりました」
断られたからその腹いせなのか?全く理解できない思考だ。俺は生きている人生で1度も恋したことないからわからないけど、好きだからこそ大切にしたい気持ちが芽生えると思っている。
でもそいつは違ったらしい。悔しかったか、寂しかったかのどちらかだろう。
「付き纏いされたり、すれ違い様に体の一部を触られたり…。怖くてしょうがなかった」
「問題ない」
「私の分のヨーグルトもどうぞ。…付き合わせちゃってすみません」
「俺が付き合わせたんだ。でもこれは遠慮なく頂こう」
テーブルの上にある料理達は全て俺とアサガイ委員長が平らげて空っぽの器になっていた。ただこれだけ食べると流石に舌も唇も炎を宿しているかのように熱くなってしまって、アサガイ委員長のアドバイス通り乳製品を食べる羽目になってしまう。
何でも辛い物を食べた後に乳製品を摂ると治るらしい。俺は自分の分として頼んだヨーグルトを平らげてアサガイ委員長の分のヨーグルトに口を付けた。
「それで?スッキリしたか?」
「はい。まさかアカデミーの激辛料理を1日で制覇出来る日が来るなんて思ってませんでした。シンリン先生ありがとうございます」
「良いんだ。俺も興味があったから」
あれだけ食べてもなお平然としているアサガイ委員長の舌の状態を疑ってしまうが、今は無視しておこう。また一口ヨーグルトを食べて辛みを抑える俺。そろそろ聞いても良いのだろうか。少し固めのヨーグルトが口の中で液状になり飲み込むと同時に俺はアサガイ委員長の目を見た。
「言いたくないのであれば言わなくても良い。でも俺はアサガイ委員長が深刻そうにしている理由の目星はある程度ついている。別に誰かにそれを話すことは一切ない。良ければ聞かせてくれないか?」
「………」
本題に移れば激辛料理によって温められた空気が冷え始める。簡単には口を開いてくれるはずなんてないのは最初からわかっていた。それでも俺は聞かなければならない。生徒の悩みを削るのであれば。
「私は、別に何も」
やっと小さな声で答えてくれたと思えば呆れてしまう返答。今は俺と2人なのに、それでも真面目面をするのか。
きっとアサガイ委員長の性格からして自分なんかの悩みに俺を付き合わせたくないなんて考えているのだ。普段は良い真面目さが現在は悪い面として出ている。俺は半分まで食べ進めたヨーグルトをテーブルに置いて自分の腕を組んだ。
「まぁ気持ちは分からなくない」
「え?」
「俺もカムイ王都に居た時、弱音なんて吐くことは出来なかった。涙や苦しみを見せるなんて皇子として恥ずかしい事だと教わったからだ。いずれカムイ王都の1番上の地位を継ぐ者として強くなくてはならなかった」
思い返せば甘えるなんてしたことなかったな。例え孤立したとしても上に立つ強さを求められ、常にカムイ王都の民に強い胸を貸してやれる威厳を求められ…。カムイ王都に居た頃の俺は無自覚に重い鎖を体に巻き付けていた。
「でも討伐アカデミーに来て、俺は初めてその鎖を手放したんだ。今思えばヒマワリの腕が千切れた瞬間が始まりではなかった。確かにその時に鎖が全て落ちたが……最初にアサガイ委員長に指導者になってほしいと言われた時、ゆっくりと鎖が剥がれていってくれたのだと思う」
きっとここに来なかったら、死ななかったら気付けなかった事実。カムイ王都に戻りたい気持ちが無いわけじゃない。
けれどもここに来て良かったという気持ちがあるのは偽りない本当の感情だ。それを聞いたアサガイ委員長は何とも言えない顔になって唇をキュッと強く結ぶ。
「何が言いたいのかって言うと、今は委員長としてのアサガイじゃなくてどこにでもいる普通のアサガイになれば良いんじゃないか?他の生徒達が居ないこの場では俺もアサガイ委員長とは呼ばないようにする」
「シンリン先生…」
「そういえばアサガイの下の名前は何だ?もしかして名がアサガイか?以前ヒマワリとレオンの姓名を聞いていて生徒達の姓名が気になっているところなんだ」
「私は、朝街夏華(あさがい なつか)です。夏の華と書きます」
「夏華。美しい名前だ」
「……不思議です。シンリン先生に自分の名前を呼ばれると心が温かくなります。あの人とは大違い」
「あの人…他のクラスの奴らか。3人のうち1人は妙にお前に対して突っかかっていたな」
カナトとハルサキが居た時、1人の男子生徒が呼んだ名前である夏華はアサガイの名前だったのか。
しかしAクラスでアサガイと姓で呼ばれているのにも関わらず下の名前で呼ぶと言うことは長い縁の持ち主と考えられる。それでも彼女は全く嬉しそうではない。寧ろそいつに名前を呼ばれるのが嫌なように見える。
「私はここに来る前にあの人に告白されたんです」
「ここに来る前と言ったらまだ子供の歳だろう。随分とませているのだな」
「まぁ、恋愛に興味を持ち始める年頃でもありますからね。私はそういうのに関心がなくてあの人からの告白を断ったんです」
「無理して恋人になる必要はないからな」
「はい。でも私が断ったことによってあの人から嫌がらせを受けるようになりました」
断られたからその腹いせなのか?全く理解できない思考だ。俺は生きている人生で1度も恋したことないからわからないけど、好きだからこそ大切にしたい気持ちが芽生えると思っている。
でもそいつは違ったらしい。悔しかったか、寂しかったかのどちらかだろう。
「付き纏いされたり、すれ違い様に体の一部を触られたり…。怖くてしょうがなかった」
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