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【2022年年始記念!番外編】Japanese Tiger
『俊足の槍』上
しおりを挟むJSWCの後、俺と桜沢はアドレス交換してよく連絡を取り合うようになった。
中学の時にもU15で集まったりしていたし全国大会では毎年顔を合わせていた。
チームとの連携も大事にする様になった俺は桜沢に勝ったり負けたり毎年違う結果だったけど決まって一緒に遊んだりとかもしていた。
中3の時、決断した。俺には夢が出来た。
「桜沢……俺、東京に…行きたい。」
「おお!そしたら何時でも戦えるね!楽しみ」
太陽みたいに笑うそいつは可愛かったけど、俺の願いはそうじゃない。
「違う。そうじゃない。俺は…お前と一緒に組んでみたい。一緒のユニ来て…走りたい。闘うのもいいけど…1度くらい…」
俺達は多分プロになるだろう。
高校生が終われば各地で闘う事になる。
そうするとまた一緒に過ごす日々も忙しない毎日になり、桜沢とは敵同士…もしくはどちらかがプロにならない…かもしれない。
この機会が最後になる。そんな気がした。
俺の事をもっと知ってもらえる。
そんなチャンスを逃したくなかった。
「俺、東京の東光学園行くんだ。」
東光…サッカーの有名な東京の強豪校でスカウトに力を入れていて在籍部員数も関東1。ウチにもスカウトが来てた筈だ。
「あそこはね、俺が最初に憧れた笠井選手が去年からコーチしてんの!絶対絶対受かるよ。俺。」
笠井選手。
つい最近までプロサッカー選手として活躍していたが、23歳という若さで辞めてしまった。
理由は伏せられていて、一部界隈では騒然としたが直ぐに東光学園にコーチとして在籍しているという事が話題になってもいた。
その美形な顔立ちからは女性ファンは絶えず、サッカーで鍛えた筋肉とともに写真集まで出している程だ。
なんで俺がここまで知っているのかと言うと…
「笠井選手に教えて貰えるなんて最高だよな…息出来ないかも…今から死にそう。」
「知ってるか?生きてないと、高校生にはなれないぞ。」
桜沢が好きだから。それも異常な迄に。
こういう話になると止まらず、嫉妬に燃やして俺は笠井選手の情報を調べあげた。
桜沢は多分男が好きだ。隠してるんだろうけど分かりやすい。しかも桜沢はかなりの面食いだ。
俺もそこそこイケてる方だと思うけど、流石に笠井のような段チのイケメンが好きだと思わず頭を抱えた。
俺のことは全くそう見られないのに、写真集やサッカーをしてる笠井を見る目が違う。
それは、高校になっても変わらなかった。
同じ学校で桜沢の相棒としての地位を確立し、入学一年目にしてスタメンを勝取った俺達はインハイ優勝を飾った。
そして俺は関東圏では『俊足の槍』という『神速』よりダサい渾名をつけられた。
……なんでランク下がってんだよ…ネーミングセンスも小学生かよ…
なんて思ったりしたけど、俺にとっての問題は他にあった。
「コーチ!今日もお疲れ様でした!!!!」
「今日も凄かったな。なんでも吸収してくれる桜沢達は特に教えがいあるよホント」
笠井に向かって無いはずの尾をはち切れんばかりにブンブンと振るように桜沢が居た。
いつもの光景がコレで桜沢には俺なんか眼中にない。お前を支えてるのは俺なのに…なんて黒い感情が渦巻いていく。
桜沢は多分笠井を好きだ。恋愛的な意味で。
他のやつとは扱いも喋り方も違う。少しでも好かれようと話してる。俺やチームメイトでは絶対有り得ないだろう。
最初は無謀な恋だな…と傍観していたのに。
高校3年になる頃に笠井の方も桜沢が好きだと気がついた。
笠井は自身のその気持ちに気付いていない様だが桜沢も桜沢で鈍感な所があるから。
狡い俺は、願わくばその気持ちに気付かないでほしいと心から思った。
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