義足の王様は姫になる?

柊 透司

文字の大きさ
14 / 15
【2022年年始記念!番外編】Japanese Tiger

『俊足の槍』上

しおりを挟む

JSWCの後、俺と桜沢はアドレス交換してよく連絡を取り合うようになった。

中学の時にもU15で集まったりしていたし全国大会では毎年顔を合わせていた。

チームとの連携も大事にする様になった俺は桜沢に勝ったり負けたり毎年違う結果だったけど決まって一緒に遊んだりとかもしていた。

中3の時、決断した。俺には夢が出来た。

「桜沢……俺、東京に…行きたい。」
「おお!そしたら何時でも戦えるね!楽しみ」

太陽みたいに笑うそいつは可愛かったけど、俺の願いはそうじゃない。

「違う。そうじゃない。俺は…お前と一緒に組んでみたい。一緒のユニ来て…走りたい。闘うのもいいけど…1度くらい…」

俺達は多分プロになるだろう。
高校生が終われば各地で闘う事になる。
そうするとまた一緒に過ごす日々も忙しない毎日になり、桜沢とは敵同士…もしくはどちらかがプロにならない…かもしれない。



この機会が最後になる。そんな気がした。

俺の事をもっと知ってもらえる。
そんなチャンスを逃したくなかった。

「俺、東京の東光学園行くんだ。」

東光…サッカーの有名な東京の強豪校でスカウトに力を入れていて在籍部員数も関東1。ウチにもスカウトが来てた筈だ。

「あそこはね、俺が最初に憧れた笠井選手が去年からコーチしてんの!絶対絶対受かるよ。俺。」

笠井選手。
つい最近までプロサッカー選手として活躍していたが、23歳という若さで辞めてしまった。

理由は伏せられていて、一部界隈では騒然としたが直ぐに東光学園にコーチとして在籍しているという事が話題になってもいた。


その美形な顔立ちからは女性ファンは絶えず、サッカーで鍛えた筋肉とともに写真集まで出している程だ。


なんで俺がここまで知っているのかと言うと…

「笠井選手に教えて貰えるなんて最高だよな…息出来ないかも…今から死にそう。」
「知ってるか?生きてないと、高校生にはなれないぞ。」

桜沢が好きだから。それも異常な迄に。

こういう話になると止まらず、嫉妬に燃やして俺は笠井選手の情報を調べあげた。
桜沢は多分男が好きだ。隠してるんだろうけど分かりやすい。しかも桜沢はかなりの面食いだ。

俺もそこそこイケてる方だと思うけど、流石に笠井のような段チのイケメンが好きだと思わず頭を抱えた。

俺のことは全くそう見られないのに、写真集やサッカーをしてる笠井を見る目が違う。


それは、高校になっても変わらなかった。

同じ学校で桜沢の相棒としての地位を確立し、入学一年目にしてスタメンを勝取った俺達はインハイ優勝を飾った。

そして俺は関東圏では『俊足の槍』という『神速』よりダサい渾名をつけられた。
……なんでランク下がってんだよ…ネーミングセンスも小学生かよ…

なんて思ったりしたけど、俺にとっての問題は他にあった。

「コーチ!今日もお疲れ様でした!!!!」
「今日も凄かったな。なんでも吸収してくれる桜沢達は特に教えがいあるよホント」

笠井に向かって無いはずの尾をはち切れんばかりにブンブンと振るように桜沢が居た。


いつもの光景がコレで桜沢には俺なんか眼中にない。お前を支えてるのは俺なのに…なんて黒い感情が渦巻いていく。


桜沢は多分笠井を好きだ。恋愛的な意味で。

他のやつとは扱いも喋り方も違う。少しでも好かれようと話してる。俺やチームメイトでは絶対有り得ないだろう。

最初は無謀な恋だな…と傍観していたのに。

高校3年になる頃に笠井の方も桜沢が好きだと気がついた。

笠井は自身のその気持ちに気付いていない様だが桜沢も桜沢で鈍感な所があるから。

狡い俺は、願わくばその気持ちに気付かないでほしいと心から思った。












しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

神父様に捧げるセレナーデ

石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」 「足を開くのですか?」 「股開かないと始められないだろうが」 「そ、そうですね、その通りです」 「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」 「…………」 ■俺様最強旅人×健気美人♂神父■

処理中です...