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実は音痴な人気俳優?
しおりを挟む『お願いします。日隠さんの歌の先生を教えて下さい。お金は言い値で払います。』
この言葉で、師匠に相談し朝日奈なら何度か共演して知ってるから大丈夫と解答を貰ったので数日後、2人の休みが合う日に落ち合う事になった。
やっばいい!バイトのせいで遅れそう…!
当日急遽バイトが入った日隠は待ち合わせ時刻ギリギリに待ち合わせした駅に着いて辺りを見回すと朝日奈が何処にいるか分かった
変装はしていても、その華やかさは隠せないのか美人な女性と親しそうに話す朝日奈が居た。
まぁ、朝日奈くらい顔が良ければそれくらいの彼女はいるよな。僕は演技の為の恋人だしね。
日隠はその光景を見て、ズキりと胸が痛む感じがしたが何故か分からず収まるのを待った。
美女が離れていったのを見て声を掛けた
「ごめん、バイト押しちゃって」
「大丈夫。今来たところですし。こちらこそ無理させてないですか?」
「ううん。僕は見守るだけだし。それより先生は厳しいから覚悟してね」
冗談交じりで会話をするけど、さっきの美女が頭をチラついてしまう。美男美女でお似合いだと思った。
「悠希さん?どうしました?」
「んや、何でもない。」
考えていても仕方ない。朝日奈の彼女なんて僕には関係の無いことだしね。興味無い事は無いが無理に聞いて共演者としての枠を超えてしまう様な事はできないし。
師匠の家に行くと、師匠が出迎えてくれた。
「いらっしゃい。悠希と朝日奈くん。歌の練習だよね?聞いてるよ。じゃあ早速やろうか。」
そう言って連れていかれた松川宅のレッスン室は防音でスピーカーも最高級の豪華な部屋。
お金のない僕は、師匠の好意に甘えてよく使わせてもらっている。
「すげぇ……」
「作ったけど、あんまり使わないんだよね。最近は悠希しか弟子も居ないし。」
あれ?この前3人いたんじゃなかったっけ?
2年くらい教わってる子もいた気がするけど…
「ついこの前、声優辞めるって言ってたね。」
こういうことはよくある。
鬼神と言われるほど業界では厳しいと有名な松川は、何人もの中途半端な声優齧りを辞めさせていた。
それもそのはず、興味本位で有名な松川に弟子入り志願する奴らも多いから選りすぐりで選んでもそういう奴らは多いのだそうだ。
「今回は身がなかったね。皆悠希みたいに根性とやる気があれば良いんだけど…」
確かに、昔は子供だったしめっちゃ泣かされたけど今ではいい思い出だしそれがあるから今があると思える。
それに、師匠の言うことは的を得ている。
「まずは歌ってみて。歌は…問題の主題歌ね。」
問題の歌を朝日奈がワンフレーズ歌うと止められた
「はい、まず音程はしっかり取って。雑に考え過ぎ。丁寧にね。それに演技と一緒で気持ちを乗せないと意味が無い。君の演技はその程度?」
普段の優しい雰囲気からアドバイスと共に出てくる毒舌は弟子の心をへし折っていく事で有名だが、これを超えたものは声優業界でも大成している子も多い。
「んなわけねーだろ、もっかいだ」
ワンフレーズ歌う、止められるの繰り返しつつ師匠のアドバイスや声の出し方講座を聞くと懐かしく感じる。
それにしても朝日奈にも出来ないことがあったとはねぇ、何となく親近感。
普段だと完璧超人で近寄り難い感じするしねぇ
そんなことを考えながら、歌詞を見ていると師匠に
「悠希、先輩としてお手本見せてあげて。」
と言われてしまったので覚えたてだが一番を歌う
師匠の前で一番を歌いきるのはカラオケの歌いきりの採点より辛口だから大分成長したな、と思う。
「こんな感じですかね。まだまだ練習足りませんけど、気持ちは入れやすい気がします。」
「んー、まぁ、大丈夫だけどね、悠希好きな人でも出来た?」
好きな人?何故だろうか…?別に思い当たる人物もいないけれど。
「居ませんね。僕はそんなに器用じゃないですし。仕事一筋ですよ。」
「そっか。てっきり…その時は僕にも教えてね?」
わかりましたと答えたものの演技をやってる内は難しいだろう。と思ってしまう。
安定しない上に落ちこぼれの僕はそんな暇は無い。
一瞬冷たい目線を感じた気がするけど、師匠が声をかけた瞬間その感覚が消えた。
その日の朝日奈は仕事の時よりヘトヘトになるまで指導を受けたお陰か、朝日奈は妥協点を貰えたらしく似合わないくらいに喜んでいた。
「めっちゃ嬉しい。松川さん、俺も師匠って呼んでいいですか?」
「嫌です。君はまた来るでしょう?その時に師匠なんて呼ばれたら何言うか分かんないしね。せいぜい悠希の邪魔をしないでくれたら良いよ。」
2人はこちらを見たあとに朝日奈が何かを察したように分かりましたと答えた
「なに?」
「「何でもない」よ」
声を揃えてそういった2人は目を合わせて笑っていた
それを見た日隠は師匠が取られたみたいでモヤモヤする気持ちが溢れていたのか、何となく腹が立つので朝日奈の背中をバンバンと叩いていた。
朝日奈はそれを何故か嬉しそうにしていたからドン引きしながら、駅まで送り届けた。
応援ありがとうございます!
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