伯爵家公子と侯爵家公女の恋

克全

文字の大きさ
上 下
26 / 40
第二章金貨一枚

25話

しおりを挟む
「ヨハン。
 高値で買ってくれと言われてもよぉ、鈍らの上にろくに手入れもされていないんじゃあ、買うに買えねぇぞ」

「パウルが研いで手入れすれば、それなりの値段がつくだろうが。
 手間賃と面倒代を引いても、少しは払えるだろ。
 それにこっちとこれはまずまずの剣だ。
 手入れも下手とは言えされている。
 まとめて値段をだせよ」

 今も値段交渉をしているのだろう。
 漫然と見ているだけでは何も学べない。
 真剣に見て聞いて、値段交渉とやらも学ばねばならん。

「しかたねぇなぁ。
 一番鈍らの剣が新品で金貨一枚だが、中古で手入れが悪く面倒つきだから、大銀貨一枚だな。
 程度が少しだけましな他の二本の剣が、一振り大銀貨三枚で大銀貨六枚。
 そこそこマシな剣二振りが、一振り小金貨一枚で小金貨二枚。
 ほとんど購入者がいな暗器が小銀貨五枚でどうだ」

「ふむ、合計で小金貨二枚、大銀貨六枚、小銀貨五枚だな。
 まあ妥当な値段だろうが、衣服を含めて小金貨三枚でどうだ」

 ヨハンが明らかに俺に教えるつもりで交渉している。
 師匠格として、この機会を利用して色々教えてくれるつもりのようだ。
 剣を高値で売るのなら、売る前に手入れをしておくべきなのだな。
 よい勉強になった。

「バカな事言うなよ!
 こんなゴロツキ丸出しの悪趣味な服が、そんな値段で売れるわけないだろうが。
 確かに一着はましな生地を使っている。
 若様に色々教えたいのは分かるが、盗賊ギルドでも色町の連中の服は、趣味が悪過ぎて転売できないんだよ。
 まあ、端切れには使えるし、全く無価値と言う訳じゃないが、五着合わせて大銀貨一枚以上はだせんよ」

「分かったそれでいい」

 交渉が終ったようだ。
 真剣に見ていたが、剣の良し悪しは分かっても、値付けは難しい。
 特に売れるか売れないかで考える事が、わしには不可能だ。
 それにしても、悪趣味な服は生地がよくても売れないのか。
 元のゴロツキなら、恥を雪ぐために大金を積んでも買い戻すかもしれんな。

「若様。
 財布の中身を確認してくださいよ」

 ヨハンは律儀だ。
 わしがゴロツキから奪った財布を、いちいち確認してから中身をだし、いくら入っていたかを二人で確認しようとする。

「若様。
 冒険者は一人じゃ生きて魔境から帰る事が不可能だ。
 必ずパーティーを組むんだが、一番のもめ事は獲物の分配方法だ。
 最初に何があっても公平に分けると決めていても、働きが違えば段々不平不満が出てくる。
 命を賭けているし、家で待つ家族の事もある。
 戦利品の分配は、あと腐れがないように、疑問の余地が入らないように、戦いと同じように真剣にしなきゃいかんのですよ!
 まあ今回は受け取るだけですが、それをごまかす奴も冒険者の中に入るんです。
 真剣に確認してください!」

「分かった。
 真剣に確認する」
しおりを挟む

処理中です...